世界保健機構(WHO)の発表によると、世界全体で毎年80万人が自殺で亡くなっており、15〜29歳の死因第2位にも挙げられています。そんな中、わざと犯罪に手を染めて、銃を構える警官の前でわざと激しく抵抗し、射殺されることで自らの命を絶つことを願う「Suicide by Cop(警官による自殺)/Suicide by Police(警察による自殺)」が近年増加しているといわれています。

Police Assisted Suicide Law and Legal Definition | USLegal, Inc.

https://definitions.uslegal.com/p/police-assisted-suicide/

The Untold Motives behind Suicide-by-Cop

https://www.officer.com/training-careers/article/12062592/the-untold-motives-behind-suicidebycop

2015年1月、アメリカ・サンフランシスコの駅の駐車場で、32歳の男性が2人の警官に射殺されるというできごとがありました。警官は男性が銃を構えたため発砲したのですが、その後の調査で、男性が事件直前に「あなたは何も間違っていません。あなたは臆病者の人生を終わらせました」という警官宛てのメッセージを携帯電話に残していたことがわかりました。

2018年9月18日、アメリカの元国境警備官が女性に暴行を働こうとしたところ、女性が逃亡。たまたまガソリンスタンドにいた州兵に保護を求めました。ホテルへ逃げた元国境警備官の男性は駆けつけた警察に対して、携帯電話を銃であるかのように構えて見せつけましたが、そのまま身柄を拘束されました。男性はこれまで4人の女性を殺害していたことを自白し、さらに携帯電話を銃のように構えたのは「警察に射殺されるためだった」と語りました。

警察・警備情報サイト「officer.com」によると、アメリカの警察が容疑者を射殺したケースの12〜15%が「警察による自殺」に当てはまるとみられています。

警察による自殺」という概念は、1980年代には心理学や法学の専門誌で言及されていましたが、2000年代初頭まで一般的にはほとんど知られていませんでした。。しかし、2003年にイギリスの裁判で、世界で初めて「警察による自殺」を認める判決が下され、「警察による自殺」という言葉がメディアでも用いられるようになりました。

アメリカの法律相談サイト「uslegal.com」では「警察による自殺」の法的定義として以下の3点を挙げています。

・その人が自殺の意図を示していること

・その人がその行為によってどういう結果がもたらされるかを理解していること」

・警官が致命的な武力行使をとらざるを得ないような極端な行動で抵抗する

警察による自殺」の動機には大きく分けて二つのパターンが存在します。1つは「犯罪を犯して警察に追われている時に、逮捕されるよりもむしろ死んでしまおうと決意する」というものです。この場合の自殺志願者は、もともと自殺志願の気持ちがあるというわけではなく、刑務所で過ごす人生は無価値だと決め込み警察が自分を射殺するように精いっぱい抵抗を続けます。



もう1つのパターンは、明確に自殺の意志を持つ人が、その手段として警察による射殺を選ぶものです。警察に射殺されるために、自殺志願者は犯罪に手を染めたり、武器を持って過度に警察を挑発するなどの行動に出ます。

警察による自殺」は、銃器という「人を簡単に死に至らしめる力」を警官が持っていることに起因します。特に、銃社会であるアメリカでは、他の国に比べて拳銃を比較的簡単に使うこともあって、近年「警察による自殺」とみられる件数は増加しているといわれています。



by matthrono

office.comは、「警察による自殺」で容疑者を射殺した警官が事件後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える場合もあると指摘しています。「もし『警察による自殺』の事件で警官の立場に立たされたならば、自分のせいではないと心にとどめることが重要です。警官は殺すか殺されるかという状況を強いられ、自殺志願者は選択の余地を与えません。あなたはなすべき事を、訓練通りになしとげただけです」とoffice.comは呼びかけています。