「牛乳を飲むと『たん』ができてしまう」という説はウソだと専門家が指摘
by EyupPors38
「牛乳を飲むと体の中で粘液が生成されやすくなる」という考えは12世紀から存在し、現代でも、風邪や呼吸器疾患を患っている時には牛乳や乳製品を避けるべき、と考える人が多くいます。しかし、専門家はこのような考え方には証拠がないばかりか、子どもにとっての重要な栄養源の1つである牛乳を遠ざけることで、健康上の問題につながる可能性を指摘しています。
https://www.scimex.org/newsfeed/mythbusting-milk-boosts-phlegm-production
Milk, mucus and myths | Archives of Disease in Childhood
https://adc.bmj.com/content/early/2018/08/03/archdischild-2018-314896
It's a Myth That Drinking Milk Makes You Produce More Phlegm, Expert Claims
https://www.sciencealert.com/experts-bust-myth-that-drinking-milk-produces-more-phlegm-mucus
イギリスのブロンプトン王立病院に勤める小児呼吸器医学の専門家・Ian Balfour氏は、1948年から発表された膨大な数の論文をチェックし、「牛乳と粘液の関係を示す証拠はない」と結論づけました。
「牛乳がたんを生み出す」という考えは、12世紀に活躍した哲学者であり医学・天文学・神学にも精通していたモーシェ・ベン=マイモーン氏が提唱したことで広まりました。その後、小児科の医師であるベンジャミン・スポック氏がこの考えを支持したことで爆発的に信じられるようになったといいます。2003年の研究で、オーストラリアでは牛乳を飲む人のおよそ半数が「牛乳は粘液を生み出す」と考えており、中には「牛乳がぜんそくを引き起こす」と考えている人もいたそうです。
by Engin_Akyurt
しかし、Balfour氏は、「牛乳が粘液を生み出す」という主張の科学的証拠は少なく、過去に発表された研究の中にはまったく証拠がないものまで存在するとしています。
「牛乳が粘液を生み出す」とする仮説の1つは、特定の牛乳に含まれる「β-カソモルフィン 7」というタンパク質が粘液の過度な生成を促すとするもの。しかし、Balfour氏は、β-カソモルフィン 7によって粘液が生成されるのは腸の中でのことだと指摘。感染症によって腸が弱った人々は呼吸器に粘液がたまるという症状を抱えることがあるかもしれませんが、腸から呼吸器へと粘液が移動するのはまれです。
Balfour氏は、唾液と牛乳はいずれも口の中をコーティングすること、また牛乳の成分は牛乳を飲み込んでも口の中に残ることから、多くの人が「粘液が作り出された」という印象を持つのではないかと考えています。牛乳を飲んだ後に口の中に残るものは「生成された粘液」ではなく、牛乳の成分であるわけです。
by Alexandr33
エネルギー、カルシウム、ビタミンなどが豊富に含まれる牛乳は、子どもたちの重要な栄養源の1つです。これまでの研究で、十分に牛乳を飲まない子どもたちは骨密度が低かったり、思春期を迎える前の骨折が多かったりすることが報告されています。Balfour氏は「子どもたちは、十分な科学的証明がされていない考え方に基づいて牛乳を避けるべきではない」という考えを明らかにしました。