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空に浮かぶ雲が水滴や氷の粒でできていることを教わったことがある人は多いはずですが、その全体の重さを計算したことがある人はあまり多くはいないはず。実際に飛行船に乗って雲の中に入り、その重さを測ったことがある人が「なぜ数トンもの重さがある雲は空に浮かぶことができるのか?」を解説しています。

Curious Kids: how do the clouds stay up in the sky?

https://theconversation.com/curious-kids-how-do-the-clouds-stay-up-in-the-sky-99964

この疑問を解説するのは、イングランドのリーズ大学で大気組成の研究を行っているジム・マッケイド准教授です。イギリスの男の子、サムソン君から寄せられた「どうして雲は空に浮かぶの?」という疑問に答えています。

前述のように、マッケイド氏は雲の重さを計算したことがあるとのこと。他の研究者と一緒に飛行船に乗って雲の中に突入し、レーザー装置などさまざまな計測機器を使って雲の大きさや一定の空間の中に含まれる水滴の数を計測したところ、その際に調査した雲の重さは実に4トンにも達することがわかったそうです。



By Lonny Paul

いうなれば雲は「水蒸気のかたまり」なので、それなりの質量があることは何となくわかっていても実際に「雲の重さは4トンもある」といわれると驚いてしまいまうところ。そんなに重いものが空に浮かぶメカニズムについてマッケイド氏は、以下の3つのポイントで説明できると述べています。

◆1:重力と大気が生む力のバランス

地球上のありとあらゆる物質には引力が働きます。これは、空に浮かんでいる小さな水滴にも同様で、常に空から地表へ落ちようとする力がかかります。しかし、小滴は非常に小さいく軽いために、空気の層を通り抜けるだけの十分な「落ちる力」を得ることができません。また、上空で発生している上昇気流が水滴を上空へと持ち上げるように働きます。そのため、非常に小さな水滴は地面に向かって落ちることができず、いつまでも上空にとどまってしまうことになります。

◆2:水蒸気は大気よりも軽い

2つ目の理由は、分子レベルで比較すると一般的な地球の大気よりも、水の分子の方が軽いという事実であるとのこと。乾燥した地球の大気は、大部分が窒素と酸素で構成され、それにアルゴンや少量の他のガスが含まれます。計算を簡単にするために、ここでは「大気は窒素と酸素で構成される」と仮定します。

周期表によると、窒素原子(N)の重量は14、酸素原子(O)の重量はほぼ16です。しかし実際の大気中に存在する窒素と酸素はそれぞれの原子が合体した分子の状態で存在します。つまり窒素原子が2つくっついた窒素分子(N2)の重さは約28、酸素分子(O2)の重さは約32ということになります。



一方、水分子(H2O)を同じ方法で計算すると、その重さは水素原子2つ+酸素原子1つということで、1×2+16=約18となります。すると、水分子は窒素分子や酸素分子よりも軽い物質ということになります。そのため、水蒸気の状態にある水は「空気よりも軽い」とマッケイド氏は解説しています。

◆3:温度

3つ目の要因は「温度」です。大原則として、暖められた空気は上昇し、冷たく冷やされた空気は沈みます。空気中の水が暖かい状態にあるときは、ガス(気体)である可能性が高くなります。また、冷たい状態にある水は、水や氷など液体や固体の形をとることがより多くなります。

暖かくて湿った空気が上昇すると、上空で冷やされて冷たくなります。水分を含んだ空気が冷やされると、その中に含まれる水蒸気が集まって水滴がうまれます。このとき「水滴ができたら雨になって地表に落下するではないか」と思ってしまうものですが、実際にはそこまでにはいくつかのプロセスがあります。



By OiMax

暑い時に汗をかくと、皮膚に浮かんだ汗が蒸発して体が冷やされます。これは「気化熱」という作用により皮膚の表面の熱が奪われることで涼しさが感じられるようになるというメカニズムですが、その正反対の「気体が液体に変化する時」には、凝縮熱と呼ばれる熱が生まれます。

水蒸気が冷やされて水滴が生じ、その際に熱が生まれるということはどうなるのか、それは「水滴の周りに暖かい空気の膜のようなものが存在する」ということになります。この暖かい空気は、上昇しようとする力を持ちます。そして上昇すると再び冷やされて凝固します。このサイクルを幾度となく繰り返されることで、水滴を長い間上空にとどまらせようとする力がはたらきます。

マッケイド氏によると、「非常に重いはずの雲が落ちてこずに済む」という理由は、この3つにあるとのこと。なお、水滴が集まってできる「雨粒」は、実は数学的には説明がつかないとされています。それにもかかわらず、雨粒ができて雨が降る理由は、以下の記事で読むことができます。

数学的には存在しないはずの雨粒はどうやってできるのかを科学的に解説 - GIGAZINE