夫婦で会談(写真:ロイター)

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長にとって初めての外遊に、夫人である李雪主(リ・ソルチュ)氏が同行し、北朝鮮で初めての「ファーストレディ」外交が始まった。北朝鮮の朝鮮中央通信は3月28日、金委員長の訪中に李雪主「女史」が同行したと報道した。


当記事は「ソウル新聞」掲載記事の日本語訳です(一部、理解を助けるための加筆をしています)

北朝鮮メディアは2月8日の人民軍建軍記念日に行われた閲兵式を報道して以降、李雪主を「同志」ではなく「女史」と呼び、その地位を高めようとしている。

朝鮮中央通信は、金委員長の特別列車が中国の丹東に到着し、中国共産党の宋涛・対外連絡部長などの出迎えを受けた際や北京に到着して下車する際、また北京の人民大会堂に到着した際などを逐一報道しながら、数回にわたって金委員長とともに李雪主について言及した。

4人で並んで立って記念撮影

金委員長と李雪主は、中国の習近平国家主席夫妻が3月27日に迎賓館である釣魚台での午餐にもともに出席した。

特に中国CCTVが公開した映像からは、李雪主は金委員長、習国家主席、彭麗媛夫人ともに4人で並んで立って記念撮影を行った。李雪主が事実上、習主席の夫人のカウンターパートとなった。

朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は金委員長夫妻が中国科学院を訪問した写真を掲載したが、夫婦が海洋科学探査に関する展示場でVRハンドセットを実際に試している。北朝鮮メディアが最高指導者の海外訪問や外交行事での夫人の行動を報道したのは、これまでまったくなかった。

かつて、故・金正日総書記が4番目の夫人として知られる金玉(キム・オク)は、金総書記の中国やロシア訪問に同行はしたものの、北朝鮮メディアがこれに言及したことはなかった。また、対外的な行事に出席する際には、国防委員会課長などの肩書きを使っていた。

李雪主がこのように活発な外交活動を行っているのは、対外的に「正常な国家」であることを強調する金正恩体制の変化を反映したものだと専門家らは見ている。通常、国家首班の夫婦がともに外国を訪問したり、外国の代表団を迎える外交方式に北朝鮮がしたがっていることをアピールしているということだ。李雪主は3月5日、金委員長と韓国の文在寅大統領の特使団との晩餐会にも出席した。

韓国・慶南大学のキム・グンシク教授は「李雪主が同行したことや、崔竜海・党副委員長をはじめ随行員もメディアに登場させていることは、正常な国家として認められたいという北朝鮮外交の一環だ」と指摘する。今年4月の南北首脳会談と5月までの開催を推進している米朝首脳会談に、李雪主が同行するかどうかに関心が高まっている。


(写真:ロイター)

ファッションは「品がいい」との評価

一方、李雪主に対する人気が中国国民の間で広まっているようだ。

香港の英字紙「サウスチャイナモーニングポスト」は3月29日、北朝鮮のファーストレディが公開の場に出てくることが珍しいこともあり、李雪主への人気が広がっていることを伝えている。


(写真:ロイター)

人民大会堂訪問などで見せた李雪主のファッションについても、「品がいい」という評価を受けているという。中国のインターネット上では、李雪主と習近平主席夫人である彭麗媛とのファッションを比較する投稿が相次いだが、このような内容は当局によって削除された。

とはいえ「李雪主は美しく、好感が持てる。金正恩の妹である金与正よりも、ファーストレディ外交をうまくやれそうだ」、「彭麗媛は李雪主よりも派手な服装だったが、李雪主がより美しかった」とする投稿があった。さらに、両夫人の身長がそれぞれ164センチ(李)、165センチ(彭)とほぼ同じであることや、ともに歌手出身であることに共通点を見いだす投稿もあったようだ。