都立小岩、いい感触での仕上がりで夏を見据えて期待も上がる合六 彪流(都立小岩)

 西武新宿線の終点、本川越の2つ手前にある新狭山駅から、徒歩で10分程度のところに狭山清陵がある。新宿駅から、急行に乗車すると30分足らずで到着するのだが、東京郊外とはいえ、所沢を越えてくると、さすがに田園地帯も多くなってくる。さらには、校名にも“清陵”とあるように、地域としては小高い丘になっているので、新緑を通って吹き抜けてくる風は、日差しをよけていれば心地よく感じられる。そんな、長閑な感じもする狭山清陵だ。

 南稜時代には、春季県大会で優勝を果たして、関東大会進出を果たしたという実績を残した遠山 巧監督が狭山清陵に異動して2年、昨秋からチームの指揮を執るということになって、まず、自分たちで考える姿勢を大事にしていく野球という遠山イズムを徐々に浸透させていきつつあるという。最初は、選手たちも戸惑いがあったというが、それでも遠山監督も、「こういう長閑なところで育ってきた子たちですから、頭ごなしに怒りつけても効果はないと思います。むしろ、どうしていったらいいのかということを常に考えさせていくところから、意識を変えていきたい」と、南稜や川口青陵でもそうだったように、選手の意識の向上から芽生えていく考えで判断する野球を伝えていこうという姿勢だ。

 チーム構成は、3年生は2人、2年生も6人と、そもそも1年生が加わらなくてはチームそのものが成立しないという状況でもあるのだ。もっとも、1年生はこの日の第1試合ではバッテリーも含めて6人の1年生がスタメン起用されていた。「やむを得ず」というところもあるようだが、試合を経験していくことで個々も成長していくことにもなるのも確かである。遠山監督も、その意識で集まってきてくれた選手たちに実績を積ませていこうという考え方のようだ。

 東東京の都立小岩の西 悠介監督は、遠山監督の早稲田大の後輩という縁もあって、試合が組まれるようになったという。永山から異動してきて、就任3年目となった西監督。当初は、東京郊外の閑静な住宅街の永山に比べて、東京下町気質の都立小岩はやはり生徒の体質なども違っていたということもあって、チーム作りのうえでも迷っていた時もあったという。しかし、地道に自分チーム作りへの方針や考え方を伝えていくことで、それが浸透してきた。そうして、今年のチームに関しては、ようやく自身の思い描いてきたチームのイメージに近づいてきたという感触を得てきているという。「親御さんを含めて、地域の人たちがこっちを向いてくれるようになってきたら、それは思っていた以上の力となっていけます」と、そうしたバックアップ体制を実感できてきたことも、今チームに対しての手ごたえを得ている要因の一つでもある。

 初回に1点を先取された都立小岩だったが、まったく慌てることなくその裏、四球の石川 幹太君が盗塁を決めると、バントで一死三塁を作る。ここで、塚本 一星君が中犠飛を放ってあっさりと同点。そして、3回にも連続四球とバントで一死二三塁とすると、2番眞島 尚樹君が中犠飛でリード。4回も4番角石 睦月君の一塁への内野安打と死球暴投などで一死二、三塁としたところで、7番稲葉君が犠飛を放って、ここまで残盆の犠飛というテク店の仕方は、チャンスメイクの仕方もさることながら、タイムリー安打なしでも得点は奪えるという巧者ぶりを示したともいえる。

 そして、とどめとしては8回に4番かと角石君が左翼へソロホーマー。結局、狭山清陵の巽 竜君、家城 暖大君の2人の投手に対して、3安打しか放てなかったものの、4点を奪っていった。また、合六 彪流君が初回こそ、二死走者なしから深田君、松戸君という1年生に連打されて1点を失ったものの、以降はしっかりと立ち直って3〜8回までは無安打で投げていったのは見事だった。

 こうして、しっかりと試合が作れることは西監督としても心強いはずである。また、下手投の鈴木 竜馬君と桐生 大地君も継投で完封して、これも安定感があることを示した。「思い切って振ってくる相手には、面白いと思う」という西監督の期待も大きい鈴木君は、ふわっと浮いてくる球も効果的だった。

 そして、打線は浜津君の2ランなどもあって、序盤で大きくリードしていった。少し甘いと、どんどんと点を奪っていく爆発力は、ベンチの盛り上げていこうというスタイルからも生まれてきているのではないだろうか。

 狭山清陵は、「何点取られても、そのことでは怒らない」ということにしているという遠山監督は、失点を重ねていく中からも、「何か見いだせるモノはないのか」という姿勢で見つめていた。

(取材・写真=手束 仁)

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