日本文理vs東海大諏訪
第136回北信越地区高等学校野球県大会2回戦は、昨秋に続き、春の新潟県王者でシード校の日本文理が登場。日曜日、しかも開催都市・新潟の強豪の登場とあって、多くの観客が詰め掛けた。
日本文理の先発は2年生左腕の新谷 晴(2年)。新谷は初回、先頭の勝股 裕太佳(3年)にライト前ヒットを許すも後続を落ち着いて打ち取る上々の立ち上がり。2回表には二死から7番・加藤 蒼生(3年)にスリーベースを打たれるが、8番・早川 龍吾(3年)を三振に切ってとり、得点を許さない。一方、東海大諏訪先発のエース・早川も初回、2回とそれぞれヒット1本を許すものの無得点に抑える。
試合が動いたのは3回表。東海大諏訪は、この回先頭の9番・池田 竜太朗(3年)が内野安打で出塁すると、四球、2番・川渕 大輔(3年)のヒットで無死満塁のチャンスが到来。この場面で、3番・清水 亮介(3年)への初球がバックネットまで届く暴投となり、思わぬ形で先取点が入る。
なおもチャンスが続いたが、清水のショートゴロでサードランナーが本塁にツッコみ憤死。4番・宮尾 将貴(3年)がショートゴロ併殺で倒れ、追加点を奪えない。するとその裏、日本文理が動く。先頭の新谷に代えて代打・永田 翔也(3年)。カウント2対0から強振した打球はレフトスタンドへ到達し、一発で振り出しに戻す。さらに、2番・堀内 真森(3年)の四球を選ぶと、今度は3番・川村 啓真(3年)が打った瞬間フェンスオーバーと分かる強烈な打球をライトスタンドへ運び、3対1と試合をひっくり返す。
だが粘る東海大諏訪も、日本文理2番手・西村 勇輝(3年)を攻め、5番・藤森 優太朗(3年)のツーベースを皮切りに、3連打で無死満塁のチャンスをつかむ。ここで9番池田が犠飛を放ち1点差。さらにサードのエラーで同点に追いつく。直後の4回裏、日本文理は圧巻の集中打を見せる。先頭、6番・寺杣 直泰(3年)のスリーベースでチャンスを作ると、一死から3連続四球の押し出しで1点を勝ち越し。続く2番・堀内、4番・松木一真(3年)のタイムリーでこの回一挙4得点。7対3とリードを広げる。援護をもらった日本文理2番手・西村はランナーを出しながらも要所を締めるピッチング。
一方、早川からマウンドを託された東海大諏訪の2番手・井原 愛弥(2年)も毎回ピンチを招きながらも、後一本を許さず、スコアボードに0を刻む。膠着状態のまま迎えた7回から、日本文理はエース・稲垣 豪人(3年)を投入。稲垣は7回、8回で計5三振を奪う好投を見せる。するとその裏、力投を続けて来た井原を日本文理打線がとらえ、4番・松木のタイムリースリーベースで1点を追加。稲垣は最終回も三者凡退で締め試合終了。8対3で日本文理が準決勝に進出した。
エキサイティングプレイヤー 稲垣豪人(3年)中盤以降お互いにチャンスを作り、ものにできないという“焦れる”イニングが続き、点差は4点あるものの、ワンチャンスで試合の流れはかわってしまう、そんな状況でその男はマウンドに上がった。エコスタの人工芝のせいか、真っ白なユニフォームがより映えて見える背番号1。マウンドで躍動した。
マウンドに上がって最初の打者(9番)こそボールが先行し3対1というカウントになったものの落ち着いてファーストゴロに切ってとると、1番、2番の上位打線からは伸びのあるストレートで連続空振り三振。8回もヒットを1本許したものの、アウトは全て空振り三振に切ってとった。日本文理は完全に“流れ”を掌握した。
新潟県大会では、調子の良かった2年生左腕・新谷が先発して中盤までゲームを作り、終盤はエース・稲垣が登板して締めるという必勝リレーで勝ち進んできた日本文理。これまで長いイニングを投げる際、稲垣はスタミナを考えながら、130km/h台中盤の直球を制球することが多かったが、今春は短いイニングを全力で投げることが多かったこともあってか、140km/h台を連発。西村、期待の2年生右腕・鈴木 裕太(2年)をケガで欠く苦しいブルペン陣ながら、新潟県予選の頂点にたどり付いた。
今日のように主導権を相手に渡さず勝利をたぐり寄せた稲垣。新谷に加え、この日ケガから復帰登板を果たした西村、夏へ向けて復活を期する鈴木を加えると、県内随一と言える投手陣。稲垣は、この中でもやはり特筆すべき存在と言えるだろう。
大井監督最後の夏の前に、まずは北信越制覇へ、守護神・稲垣が導く。
(文・写真=町井 敬史)(写真img026〜=佐藤純一)
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