福岡ソフトバンクホークス・千賀 滉大投手「腕は勝手に振れるもの」【Vol.2】
WBC2次ラウンドのオランダ戦や、好投に至った要因であるストレートと変化球との腕振りを変えない「意識」について、千賀投手が自らの言葉で語った前回に続き、第2回では高校球児へ向け、ストレートと変化球で腕振りを変えない「練習方法」を伝授します!
■福岡ソフトバンクホークス・千賀 滉大投手「世界のSENGA」を支える「腕振りの統一性」【Vol.1】から読む
「腕が勝手に振れる」位置をキャッチボールで探す千賀 滉大投手(福岡ソフトバンクホークス)
――前編で千賀投手にはストレートと変化球を同じ腕振りで行う大切さと、力の配分について話して頂きましたが、これを実際に身に付けるポイントはありますか?
千賀 滉大投手(以下、千賀):「腕が勝手に振れる」ポイントを探すことですね。腕を「振る」ではないんです。腕を「振れる」です。僕もプロに入ってこの「腕を振れる」位置を探したことでスムーズに腕が振れていると思います。
自分で腕を振ることは誰でもできますが、「腕が勝手に振れる」フォームを考えることは難しい。高校球児の皆さんが2年半で身に付けるのはなかなか難しいですが、その位置を探し続けてほしいですね。
――ちなみに千賀投手は「腕の振れる位置」をどれくらいかけて見つけたのですか?
千賀:今でも繰り返し探し続けています。完璧はありません。一日一日、体調は違うと思いますから。
たとえば昨日(5月9日・8回1失点13奪三振で5勝目)はいいピッチングができましたが、「一週間後に同じことができるか?」と聞かれた場合、一週間後の身体は絶対にその時と違うわけです。身体のハリも筋肉のハリも違うので、同じ動きはできない。常に試行錯誤しながら「今日はこうだった。昨日はこうだった」というのを確認していくことが大事だと思います。
――そうやって「腕が振れる位置を確認する」ために、千賀投手はどのような方法を取っていますか?
千賀:基本はキャッチボールです。キャッチボールで常に「腕が振れる位置を探す」意識を持って投げています。マウンドで傾斜がついても、そこを意識さえしていれば自分でどうにか工夫できますので。まずはキャッチボールをきちんと行うことだと思います。
千賀 滉大投手が伝授する「投手のキャッチボールポイント」千賀 滉大投手(福岡ソフトバンクホークス)
――その中で高校球児の皆さん向けに「キャッチボールをする時に、これがポイントだよ」というものを教えてください。
千賀:1つは「どれだけ横の時間を長く」すなわち「胸を打者に見せない時間を長くとれるか」ということだと思います。
――まずはボールを打者に見せない時間を長くとって……
千賀:それは投手としての常識。勝負はプレートからホームまでの18.44メートルをいかに縮められるかが一番大事です。 かつ「力を入れずに、一番いいボールが行く」。「あれ?腕を振っていないのに、勢いのあるボールが行くんだ」と思えるところを見つけてもらればいい。
キャッチボールで試行錯誤していろいろなポイントを探っていけば、自分の思うボールが投げられるポイントが見つかってくる。高校生には難しいところかもしれませんが、僕にはそのポイントがありますし、そこを1個1個はめこんでいく中で、自分に適したフォームになると思います。
たとえば120キロでキャッチボールをした場合でも、「今は100キロくらいの腕振りしかしていないのに、120キロくらい行ってるな」という感覚がありますよね?
――「今日はボールが伸びているな」という感覚ですよね?
千賀:そうです。「120キロの腕振りで120キロ出ている」とは違う感覚。その感覚を常に探究していくことが大事です。「今、軽く投げたけど、思ったよりボールが伸びているな」という感じ。遠投でも同様です。そこを追い求めてほしいですね。
最終回ではお化けフォークについてどんなポイントで投げているのか?そして故障しないための考え方を紹介しつつ、最後に高校球児へメッセージを残してくれました。
(インタビュー/文・寺下 友徳)
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