早稲田実業vs中京大中京
満員の刈谷球場。早稲田実業vs中京大中京の名門同士の一戦は両主砲の競演から始まった。
まず見せたのは中京大中京の4番鵜飼 航丞だ。二死からレフトスタンドへ飛び込む2ランホームランで2点を先制した。
だが早稲田実業の清宮 幸太郎もいきなり見せる。先発の香村 篤史が投じた外角よりのチェンジアップを泳ぎながらも、レフトスタンドへ飛び込む3ランで逆転に成功する。打たれた香村は「左打者に流し打たれたのは初めて」と驚愕の一発だった。この本塁打で勢いづいた早稲田実業は、打者14人の攻めで、一気に9得点を入れ、2回裏にも1点を入れ、10対3と大量リード。だが中京大中京も早稲田実業投手陣を捉え、5回表には中京大中京の4番鵜飼が高めのストレートを捉えて、レフトスタンドへ飛び込む2ランホームランなど、6回表まで10対8と2点差まで追い詰める。鵜飼はこの春23本目の本塁打と超ハイペースの本塁打。鵜飼の長所はヘッドスピードの速さとコンタクト能力が高いことだ。この2つの長所は、普段の打撃練習から、1球1球集中して打つ練習と、下半身を中心としたウエイトトレーニングで筋力をつけたこと。一冬超えて、体重5キロ増に成功した鵜飼は、軽く振っていてもヘッドスピードは速く、強い打球を打てるまでの選手に成長。一気に量産体制に入った。ボールを飛ばす能力は「清宮には負けたくない」と語った鵜飼。高校通算53号もなかなかのハイペースである。
そして中京大中京は2番手左腕の伊藤稜(3年)が好投。クイック気味に始動し、コンパクトなテークバックを取って、一気に腕を振りだすフォームをした変則的な投手だが、球速は常時135キロ〜141キロを計測。清宮から高めのストレートで三振を奪い、4番野村 大樹からもスライダーを織り交ぜた技ありの投球で、三振を奪うなど、5.2回を投げて、被安打4、自責点1、8奪三振の快投を見せた。伊藤稜は「変化球の精度が低かったので、これまで変化球を磨いてきたのですが、それが成果となって現れました。良かったのはスライダーですね」と手応えを実感していた。高卒プロというタイプではないが、変則ながら140キロを投げられる左腕なので、需要は高いタイプ。大学進学以降で、一気に頭角する可能性を持った投手であった。
高校通算98号本塁打を放った清宮幸太郎(早稲田実業)そして7回表、無死一塁から3番谷村優太(3年)の適時三塁打で、1点差に詰めると、一死一、三塁から6番小川原昌也(3年)の内野安打で同点。去らに7番伊賀功晟(1年)が適時打を打ち、勝ち越しに成功。二死一、二塁から代打・鈴村哲(3年)がライトへ本塁打を放ち、14対10とした。
だが、早稲田実業はこのままで終わらない。7回裏から中京大中京は3番手に最速143キロ左腕・磯村 峻平を投入。立ち上がりから130キロ後半の速球を連発。テークバックが大きいフォームから繰り出す速球には威力があり、1年前のエース・長谷部 銀次(現・慶応大)より強いボールを投げられる素質を持った投手である。だが、長谷部は「今日はいつもよりボールは来ていないですし、高めにボールが上ずっていた」と話すように、一死一、二塁の場面で、清宮の第5打席を迎えた。清宮は外角ストレートを捉えて右中間の最深部に飛び込む3ラン本塁打で、14対13となる。
そして8回裏、早稲田実業は1番雪山 幹太(2年)の適時打で同点に追いついた。
9回表、中京大中京は一死満塁から1番伊藤 康祐(3年)の犠飛、2番竹田健人(3年)の適時打で16対14で勝ち越した。しかしその裏、早稲田実業は一死二、三塁から敵失で1点差に追いつくと、そして7番小西 優喜が左越えの適時二塁打で二者生還し、逆転サヨナラ勝ちを決めた。
壮絶な打撃戦を制した早稲田実業。まだ投手陣の出来に不安を残すが、お得意の打撃戦を制し、愛知の高校野球ファンを沸かせた。
(取材・写真=河嶋 宗一)
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