岡田 悠希(龍谷大平安)「京都のホームランアーチスト!覚醒のカギは『頭脳と肉体の同化』」

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 今年は高校通算96本塁打の清宮 幸太郎を中心にスラッガーが揃うスラッガー世代となっている。その中で、近畿を代表するスラッガーとして注目されるのが岡田 悠希だ。ここまで高校通算30本塁打を放つ長打力、俊足、遠投110メートルで、投手をやれば、130キロを超える肩の強さを誇り、身体能力も抜群の逸材である。名門校を担うスラッガーとして飛躍を誓うべく岡田の野球人生を振り返りつつ、最後の夏へ向けての意気込みを伺ってみた。

入学直後の練習試合の本塁打で1年春からスタメンの座を獲得

岡田 悠希(龍谷大平安)

 岡田の野球選手としての始まりは小学校1年生。野球をやっていた父と兄の影響で始めた岡田は、八本松中時代、ヤングリーグの府中広島2000に所属し、全国大会3回にも出場。打球を遠くへ飛ばすことに自信を持ち始めたのは、中学校2年生の時だ。

「ロングティーを練習として取り入れていたのですが、体の成長とともに、打球も遠くへ飛ばせるようになっていました。そこで遠くへ飛ばせることに自信を持てるようになっていたと思います」と振り返る。

 そして監督に直訴して中学2年から投手も始め、肩を強くするために内野手から外野手へ転向。遠投も100メートルを越え、130キロのストレートを投げられるまでになっていた。

 中学校3年生の時、岡田は選抜優勝した龍谷大平安の選手たちの姿に憧れ、名門の門を叩くこととなった。龍谷大平安の環境は180度変わった。まず寮生活。今までは洗濯、身の回りの整理をやってもらっていたが、今度は自分1人。そのことに「親のありがたみがわかりました」とコメント。

 また練習スタイルも大きく異なっていた。龍谷大平安はアップに1時間、シーズンオフならば1時間半〜2時間もやる。「中学はこんなにアップに時間をかけなかったですし、ついていくのに精いっぱいだった」と振り返る。それでも中学時代にはないトレーニングに、自分自身の体つきがアスリートとしての身体に進化していることに気づいた。

「球場の前にある坂ダッシュ、アップでも手押し車、ほふく前進、また水泳トレーニングもやって、可動域や体の柔軟性も高まってきました」と手応えを実感する。

 そんな中、岡田は対外試合で本塁打を打つなど、しっかりとアピール。1年春、春季京都府大会準決勝の福知山成美戦で、初のベンチ入りを果たす。そして2対2の7回表、岡田は外角直球を打ち返し、勝ち越し左前適時打。勝利に大きく貢献する。岡田は「とにかくヒット1本打ちたい思いで打席に立っていて、打つことができて良かったです」と振り返る。岡田は1年夏まで対外試合で8本塁打を打ち、1年夏でもベンチ入りを果たした。

選抜ではバックスクリーン弾も、2年生シーズンは悔しい結果に...

岡田 悠希(龍谷大平安)

 そして1年秋から主力打者としてチームを引っ張る存在となった。ここから原田英彦監督からタイミングの取り方を学んだ。「投手にしっかりと合わせてシンクロすることですね」

 このタイミングの取り方を学んだ岡田は、公式戦打率.263に終わったものの、近畿大会の阪南大高戦(試合記事)で、本塁打を打つなど、3本塁打を放ち、アピールを見せる。そして一冬超えて、臨んだ選抜。いきなり強豪・明徳義塾との対決(試合記事)。第1打席は三振に終わったが、第2打席。右腕の中野 恭聖だった。外寄りの直球を捉えた打球はバックスクリーン横へ飛び込む本塁打となった。

「4番の橋本 和樹さんがホームランを打っていたので、自分も続こうという思いで打席に入りました。バックスクリーンを打ったのは初めてでしたので、気持ちよかったですね」と笑顔で振り返る。

 しかし、甲子園での本塁打は1本のみ。この本塁打で他校から厳しいマークをされた岡田は、甲子園4試合で、11打数3安打1打点に終わった。対戦していてレベルが高いと実感したのは準決勝で対戦した智辯学園のエース・村上 頌樹(現・東洋大)だ。「村上さんは、速球も、変化球も、低めにしっかりと集められる投手でした。そしてストレートも低めにぐっと伸びてくる。これが一流投手なんだ思いました」

 2回戦以降は思うような打撃はできなかったが、一流投手が集まる甲子園で学んだことは大きかった。岡田は夏へ向けて「どんな球でも打てて、そして走れて、レフトへ打球が飛べば安心だと思わせるぐらい守備がうまくなりたい」と走攻守全てにおいてレベルアップを誓った。

 順調に成長を見せていたが、ここからは苦悩の日々を味わう。2年夏、福知山成美戦(試合記事)で、自身の失策をきっかけに失点を許し、チームも敗れた。「期待していただく中で、自分は落ちていく一方で、本当に申し訳なかった」

ホームランアーチストになるための課題岡田 悠希(龍谷大平安)

 そして2年秋も満足いく成績を残すことができなかった。近畿大会まで勝ち進んだものの、初戦でいきなり大阪桐蔭と対戦。無安打に終わり、チームもコールド負け。岡田の2年生のシーズンは選抜を除くと、悔しさだけが残る大会となった。

 岡田も、龍谷大平安スタッフも課題だと考えているのが「考える力」だ。原田監督は岡田の課題についてこう語る。「岡田の場合、体と頭が一致していない。それががちっとはまった時はものすごい打球を飛ばすんです。だけど、まだまだそれが一致していないんですよね。それがしっかりと同化させることができれば、もっと打てる」と期待を込める。

 そのため原田監督は生活面や、プレーの1つ1つから厳しい指摘を続けてきた。走塁、守備、打撃。根拠がないプレーをしたときは即座に注意をしてきた。「なかなか変わらないんですわ」と原田監督は頭をかきながらも、岡田の素質開花のため、心を鬼にして育ててきた。

 そして3年春。岡田は近畿大会出場がかかった決勝戦で特大の本塁打を放つ、これが高校通算30本塁打目となった。復調の兆しが見えたかに思えたが...。先日の近畿大会の彦根東戦は、2年生左腕の増居 翔太に3打数0安打に抑え込まれた。

 トータルで見ると、岡田は苦しい時期が続いている。高校3年春の時点で、高校通算30本塁打。本人からすれば到底満足できる数字ではない。原田監督がいう「頭と体の同化」。これが常に発揮できる状態となれば、岡田の本塁打量産はさらに期待できるだろう。

 現状を乗り越えるのは自身の心がけ次第。最後の夏へ向けて意気込みとして岡田はこう答えた。「去年の夏、先輩たちと一緒に行きたかったのに、自分のミスで行けなかったことに責任を感じています。甲子園に行けなかった先輩たちにもこの夏は絶対に甲子園に行きたいです!」

 悔しい負けはもういらない。岡田 悠希の本領発揮はこの夏からだ。

(取材・文=河嶋 宗一)

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