豊川vs豊田工
3時間33分の大熱戦。2度までもリードされながらも、その都度に追いついて食い下がりを見せた豊川。最後の最後、延長15回に6番青山 裕二郎君が一死満塁から、初球を踏み込んで叩いて、中前へはじき返してサヨナラ打を放って決着をつけた。
この回で決着がつかなければ、試合は引分けとなるという15回、豊川は先頭の村田 真那斗君が左越二塁打する。続く山下 大輝君の右飛で三塁へ進むと、豊田工バッテリーは続く2者を敬遠して満塁策。守りやすくするためにも当然の策ともいえるものだったが、豊川は前打席では3球三振している青山君だ。そこで、豊川の今井 陽一監督は、外の球に手が出ていなかったということから、青山君を呼び寄せて動作を交えて、「こうやって踏み込んで打って行け」という指示を与えた。それに応えた青山君は思い切って初球を叩いて、これがサヨナラ打となった。
豊川は2003(平成15)年春以来の27大会ぶりの優勝となったのだが、今井監督も、「もちろん、チャンスにおいて打撃で、力んでしまって打てないだとか、ボール球に手を出してしまうというような課題もいくつかありました。それでも、こういう試合を勝てたということは、選手にはいい経験になったと思いますし、自信にはつながっていくと思います」と、課題を挙げつつも結果を出せたことは素直に評価していた。
豊川は背番号20をつけている清家 諒一君、豊田工は2年生で1番を貰っている左腕横田 龍也君が先発。ともに、自分の持てる力を出し合って、いい展開の投手戦となった。
4回に豊田工が前川 拓真君の、いささか出会い頭的な左翼へのソロアーチで、ついに均衡を破った。しかし、その裏に豊川も安打の山下君を一塁に置いて、4番竹内 義将君の三塁打で同点とした。打球は中前打かとも思われたのだが、中堅手手前をすり抜けていく打球で、フェンスにまで届いていった。
すぐに同点となったことで、試合の流れは、どちらへ傾くというのでもなく均衡がとれたまま、お互いに次の得点を得られず、両投手の投げ合いが続いた。お互いに、走者は出してはいるものの、もう一本が出せないまま、延長に突入していった。
豊川は、7回二死二塁から先発の清家君に代って1番をつけた安田 怜央君がマウンドに上った。その代わり端に、鳴川 慎也君の安打で二塁走者の和田 隼規君が一気に本塁を狙ったが、一塁手の竹内君が好判断で素早く本塁送球して刺すなど、細部に好プレーも見られた。
こうして、そのまま延長戦に突入していったのだが、以降は豊田工の横田君と豊川の安田君の投げ合いという展開となっていって、なかなか得点は奪えないだろうなと言う展開になっていった。
そんな中で14回、豊田工は四死球で二死満塁として5番福田 堯君が三塁手を襲う内野安打でついに均衡を破る。これで決着かと思われたのだが、その裏に豊川も粘り、一死一三塁から、安田君がスクイズを決めて同点として15回へつないだ。
最後は、力としては1枚上回る豊川がサヨナラを決めるのだが、どちらも守りで崩れることもなく、緊迫した好試合となった。
豊田工の平松 忠親監督は、「負けましたけれども、目茶苦茶収穫はありました。こういう戦いが出来たということは励みにもなりますし、自信にもなっていくと思います」と、ここまで戦えたことに対しては満足していた様子だった。この日、211球投げた横田君に関しては、「150球くらいまでは行くよということは、最初からの予定でした」と、むしろ緊張感を持って投げ続けられたことに対しても納得していたという様子だった。
夏へ向けて、この日の戦いが豊田工には大きな自信になっていくのではないかと…、そんな予感を漂わせる戦いぶりでもあった。
なお、この大会では個人賞も設けられているが、殊勲賞は豊川の安田 怜央君、敢闘賞は豊田工の横田 龍也君と両投手が選出された。打撃成績では、1位には豊田工の鳴川 慎也君で5割。2位が山下 大輝君(豊川)、3位は竹内 義将君となった。
(文・写真=手束 仁)
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