雨の戦いを示した至学館が、状況に応じた対応型チームの本領発揮力投を見せた川口龍一君(至学館)

 県大会の終盤になって、課題となっていて徹底して振り込みを重ねてきた打撃力がようやく開花した至学館。決勝では、17安打して9点を奪うなどして東邦を圧倒して優勝した。この大会には、愛知県1位校として、ある程度の自信を持って臨んできた。

 昨年夏の岐阜代表校の中京は、この春から大学名を冠して中京と改称した。春季大会では昨夏の岐阜大会と同じ顔合わせとなった大垣日大に、今回は競り負けたが、チームとしての力はしっかりと安定している。社会人野球(NTT東海→NTT西日本)などを経て、就任3年目となる橋本哲也監督も、この代のチームに賭ける意識は高い。

 この両校は、実は2年前のこの大会でも対戦しており、その時は中京が8対4で勝っている。

 昨夜来からの小雨が午前中は残っていて、試合開始は予定より20分遅れた。それでも、昼過ぎには何とか雨はやんだ。

 至学館は2回に死球と暴投、ボークなどで一死三塁として、内野ゴロの間に生還といういかにも至学館らしい形で先制。ここから三浦 信平君、川口 龍一君、木村 公紀君と下位の3連打でさらに1点を加えた。初回に、簡単に打ち上げてしまったということもあって、麻王義之監督は、「こういう天候(雨が降っていて、あまりグラウンドコンディションがよくない状態)での戦いは、こっちの得意とするところだろう。そういうバッティングじゃないんじゃないか」ということをペンチで指示。選手たちも、すぐにそれに対応した形だった。

 しかし、中京もすぐに反撃。3回に二死走者なしから西川 颯真君内野安打に始まって恒川文秀君の左中間二塁打に小鶴 純貴君、高野 信元君と4連打が出て同点とした。

 すぐに振り出しに戻った試合だったが、至学館は4回、川口君のブッシュバントが中前打になるという打球からチャンスを作り、一死二塁で定塚 智輝君が右前打して再びリード。さらに5回にも、二死三塁から川口君の左前打で追加点を入れた。

 6回に中京は、至学館が川口君から新美君にスイッチすると、そこに乗じて、四球とボーク、バントに犠飛と無安打で得点した。至学館のお株を奪うかのような攻撃でもあったが、、至学館としては、「中盤になって、もつれればもつれるほどウチのペースという試合となりますから、そんなに心配はしていませんでした」と、麻王監督の言うように、8回には定塚君の三塁打からチャンスを作って、一死二三塁で、4番鎌倉 裕人君がまさかセーフティスクイズで、これが中京の守りの乱れを誘って二者が帰った。9回に、中京が恒川君のこの日2本目の二塁打で追い上げてきたということもあって、結果的にはこの2点が効いたという形になった。

 いつしか、雨もやんで、日も刺してくることもあったが、至学館が、まさに「どんな状況でも普通に戦える、対応型のチーム」という持ち味を十分に示した戦いぶりで、中京を翻弄して、持ち味の相手を戸惑わせながら勝ちを奪っていったという、至学館の本領発揮とも言うべき試合だった。

 この日はクリーンアップが安打らしい安打は新美君一本のみだったが、8番の川口君が3安打、9番の木村 公紀君もタイムリー安打を放つなど、上位が撃てなければ下位がしっかりと打っているというあたりも、至学館らしい試合運びと言えた戦いだった。

(取材・写真=手束 仁)

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