静岡vs近大高専
昨年の秋季東海地区大会を制した静岡。今春のセンバツ大会では、初戦で21世紀枠代表の不来方に快勝して、2回戦では優勝した大阪桐蔭に初回に6点を奪われながらも、その裏にすぐ6点を返し、一旦は逆転するなどして、力を示した静岡だった。
静岡は強力打線が看板となっているが、この試合もいきなり村松開人君が三塁打して始まったが、四球後、一死一、三塁から成瀬 和人君が右前打で先制し、さらに一死一三塁から森康太朗君の内野ゴロの間に三走が帰って、二点を先取した。
しかし、三重1位の近大高専も、静岡の先発・竹内 奎人君の立ち上がりを攻める。上西智輝君が安打で出ると盗塁も決めて、二死二塁から、田中敦士君が二塁打して1点差とし、さらには失策で同点とした。さらに近大高専は、2回に上西君の三塁打で逆転。ところが、静岡もすぐに3回、7番稲角 塁君の中越二塁打で同点とする。そして、その裏から、栗林俊輔監督は先発の竹内君を諦めて、センバツ後、初めての公式戦となったエースの池谷 蒼大君を投入した。これで、ここまで50分近くかかっていた試合が突如テンポ良くなった。
というのも、池谷君がポンポンと早い間合いでストライクを先行させていって、3人ずつで抑えて、しかも、毎回ほぼ10球前後での投球で抑えていた。それに引っ張られたかのように、近大高専の左腕中西元亜君も、すっかり立ち直ってきて、3回裏からは、それまでとは別の試合であるかのようでもあった。
池谷君は3回から8回までを3人ずつで退けていく、パーフェクトリリーフだった。そして、4回以降は0に抑えられていた打線も8回に、6番藤田誠也君の右前打からチャンスを作り、稲角君も続くと、そこからはバントで二、三塁とすると、内野ゴロ野選と併殺崩れなど、内野ゴロ2本で2点を勝ち越した。さらに、9回にも、失策を足場に好機を作ると、森康太朗君と藤田君の連打に、やや気落ちした中西君が制球も乱して四球もあって押し出しなどでさらに2点が追加された。
9回は、近大高専も一死一二塁、二死満塁まで攻めたものの、最後は池谷君のキレのいい投球に三振で万事休した。池谷君は、140キロ以上の球速表示を出してはいたが、あくまでもスピードよりは、切れの良さ、力でねじ伏せていくのではなく、きっちりと打たせて処理していくという投球で安定感を示した。
もっとも、栗林監督は「久しぶりの公式戦となった池谷は、今日はよかったと思います。ただ、夏を考えた場合は、池谷以外の投手をもっと試していきたいということもあります。今日は、竹内が相手の打線のハマってしまって、ちょっと不運だったかなというところもありました。次、どうしていくのかは、また考えたいですね」と、慎重だった。打線がしっかりしていて、投打のバランスという点でも、やはり県内でも最右翼と言える静岡である。その評価の高さを再確認させてくれる内容の試合だったとも言えよう。
序盤は食い下がった近大高専だったが、県大会での勢いを発揮しきれなかった、というよりも、池谷君にその勢いを止められてしまったという結果になった。
(取材・写真=手束 仁)
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