外為どっとコム総研のシニアテクニカルアナリスト川畑琢也氏は、ドル/円の110円を巡る攻防に注目している。「トランプ政権の政策実行力に対する失望によって下落したドルの上値は重く、1ドル=110円を割り込むことがあれば、108.20円程度まで一段安になる可能性がある」と語った。

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 外為どっとコム総研のシニアテクニカルアナリスト川畑琢也氏は、ドル/円の110円を巡る攻防に注目している。「トランプ政権の政策実行力に対する失望によって下落したドルの上値は重く、1ドル=110円を割り込むことがあれば、108.20円程度まで一段安になる可能性がある」と語った。また、「トルコリラ/円は一目均衡表の三役逆転が点灯し、一段の下押しが予想される。4月16日のトルコ国民投票でエルドアン大統領の権限強化に賛成票が多ければ、大統領による利下げ圧力が高まり、トルコリラの一段安もある」と注目していた。

――一時110円台まで円高が進んだドル/円の当面の見通しは?

 ドル/円は1ドル=110円を維持できるかどうかによって、今後の展開が大きく変わってくる節目を迎えている。

 3月最終週の110円台への下げによって、ドル/円の週足は一目均衡表の雲の中に沈み、しかも、下値は一時的に基準線(109.92円)付近まで下落した。今後、基準線を割り込まなければ、雲の上にある転換線(112.81円)をめざす反発も期待できる。

 ただ、今回の下落の背景が、一時は年4回利上げまで高まった米国の金利引き上げ期待の後退、また、オバマケア代替案の採決を見送ったことで表面化したトランプ政権の政策実行能力への失望があるため、ドルが上昇する力には限界がある。当面の上値メドは、一目均衡表の基準線が位置する1ドル=112.80円近辺だと考える。

 一方、2月以降の下値支持ラインであった111.50円を割り込んで下げているだけに、目先的には下値を試しやすい局面だ。ここから110円を割り込んで一段と下げた場合は、下値が深くなると考えられる。

 下値のメドは、昨年6月のBrexit(英国のEU離脱)時につけた安値98.798円から、トランプラリーで付けた12月の高値118.661円の上げの半値押しの水準が108.730円。また、日足の200日移動平均線が位置する108.20円近辺が一つの目安になると考える。

――ユーロ/円は、2月末の1ユーロ=118円台の安値から、3月には122円の高値を付け、再び120円割れになるなど、値動きが大きくなっている。今後の見通しは?

 ユーロ/円は現在、週足でみると一目均衡表の厚い雲の中に入り込んでいる。下値は1ユーロ=118.34円近辺の基準線が支え、昨年12月高値124.08円から3月高値の122.88円を結ぶ抵抗線の存在が意識されている。当面は雲の中で方向感が定まらない動きになりそうだ。

 ユーロについては、ECBの次の一手に注目が高まってきている。3月23日に実施されたECBによる最後のTLTRO(テルトロ、貸出条件付き長期資金供給オペレーション)は、予想された応札額の2倍の需要があり、金融機関が利上げを見越して動いていることが確認できた。金利先物市場での今後1年間のECBの利上げ確率は50%台と、先月末時点(20%弱)より上昇している。

 ここからは、ドラギ総裁やECB理事会メンバーの発言のニュアンスの違いなどによって、今後のECBの動きを読み取ろうとする動きが強まると思う。4月27日の理事会後のドラギ総裁の会見などに注目したい。当面は、1ユーロ=122円前半〜118円台前半でもみ合うとみている。

 ちなみに、シカゴIMM通貨先物ポジションは、ユーロ/ドルでユーロをショートするポジションが大幅に縮小し、2014年4月以来のネットロングも視野に入ってきている。ユーロに対する見方が変化してきていることに注目したい。

――その他、注目の通貨ペアは?

 トルコリラ/円が一段と下押し局面に入ってきたようだ。2015年1月に週足が一目均衡表の基準線を下抜けて以来、基準線が戻りのメドとして頭を抑えた長期の下落が続いている。移動平均線を見ても、週足で26週線が戻りのメドとなって、これが上値を抑える役割を果たしてきた。

 3月になって9日に付けた安値(30.283円)を28日に下抜け、日足で一目均衡表の雲の下限を突き抜けたことで三役逆転が点灯した。2年以上の下落によって1トルコリラ=50円から、30円割れの水準まで下落して、値ごろ感が出てくる水準だが、一段の下押しが予想される。

 また、昨年の6月や12月などで見られたように、前日終値から一日で9%程度の急落を演じたことのあるクセのある通貨なので気を付けたい。1月12日の安値28.991円を抜けるような局面では、思わぬ下値が出る可能性もある。

 トルコでは、4月16日に大統領の権限を強化することを問う国民投票が予定されている。この国民投票で大統領権限が強化されると、トルコ中銀に対するエルドアン大統領の利下げ圧力が強まるものと考えられる。トルコの2月のインフレ率は10%の水準にあり、トルコ中銀が目標とする5%を上回っていることから、中銀が利下げを選択するような状況にはない。ここでの利下げは、インフレを加速させ、トルコリラ安の引き金になりかねないため、国民投票の結果とトルコリラの動向に注目したい。