お寺には、正式名称ではなく別名で呼ばれているお寺がたくさんあります。東京の西日暮里にある通称「月見寺」や「花見寺」、京都には「らくがき寺」や「猫寺」など。なんとなく、そのお寺の由来がわかりますし、通称のあるお寺には行ってみたくなります。そんなわけで、今回は「かっぱ寺」のお話です。


※写真はイメージです



しとしと雨の続く、梅雨。
こんな季節には、池や沼の中からひょっこり「かっぱ」でも現れそうですよね。
日本の代表的な妖怪「かっぱ」ですが、そんな彼らが活躍した伝説を持つお寺が東京にはあります。
台東区にある曹源寺（そうげんじ）、通称「かっぱ寺」です。

曹源寺に入ると、中はかっぱのオブジェだらけ。
あらゆる場所にかっぱの石像があり、その前にはキュウリが備えられています。
お賽銭箱の上に積まれているのも、キュウリ。
ここでは、お金よりキュウリのほうが価値があるようです。

昔、この辺りの土地は低いうえに水はけも悪かったため、大雨が降るたびに住民は大変困っていました。
水に苦しむ人々のため、私財を投げ打って水はけ工事を行ったのが、雨合羽商の喜八。
しかし、工事はことのほか難航してしまいます。

これを見ていたのが、隅田川のかっぱたち。
実は過去、彼らは喜八に命を救われたことがあったのです。
これは恩返しのタイミングだと、夜な夜な工事を手伝い始めます。
かっぱたちのおかげで、工事は無事完了したのだそうです。

この噂が広まり、かっぱはこの街で神様のように祀られることになりました。
そして曹源寺には「かっぱの手のミイラ」も保管されています。
このかっぱの手が見たい方は、事前にお寺に連絡をしておくと見せてくれるそうですよ。
かっぱとともに工事を完成させた喜八のお墓もあり、「水商売の神様」となっているそうなので、飲食店を経営される方が多く訪れるそう。

しっとりとしたこの季節、かっぱに会いに、お出かけしてみてはいかがでしょうか。

文／岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「賽銭箱にキュウリ？」として、6月28日に放送しました。

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＜番組概要＞
番組名：「シンクロのシティ」
放送日時 ：毎週月〜木曜15：00〜16：50
パーソナリティ：堀内貴之、MIO
番組Webサイト：http://www.tfm.co.jp/city/