【第97回選手権大会】140キロ投手続々登場!好投手たちの初戦の投球を振り返る!
今年の甲子園は投打ともに高校生を代表する選手が集結しており、見応えある戦いを見せている。今回は3年生の注目投手の甲子園での投球を振り返っていきたい。今大会は140キロオーバーの投手が多く、改めて逸材が揃った甲子園だと感じる。
小笠原、高橋、平沼、原・・・大会注目投手の初戦の投球を振り返る小笠原 慎之介(東海大相模)
まず大会注目度ナンバーワンの小笠原 慎之介(東海大相模)は、聖光学院戦で1イニングだけ登板。最速151キロのストレートを披露し、たった1イニングで、今年のナンバーワン左腕と印象付ける投球をみせた。小笠原は神奈川大会の決勝戦(7月28日)から中14日で、今回1イニングだけ登板。余力十分の状態で3回戦に臨むことができる。多くの投手は連投でエネルギーロスが見られるが、それがないということは大きなアドバンテージとなる。まだ小笠原の全てを出してはいないので、ぜひ3回戦では小笠原の投球を堪能してほしい。
また小笠原とともに注目を浴びていたのが、高橋 樹也(花巻東)だ。その高橋だが、春季東北大会と比べると力みが抜けた投球となっている。球速は140キロ前後とあまり変わりがないが、ボールにスピンがかかっており、キレのあるボールを投げることができている。さらにスライダー、チェンジアップのコンビネーションもはまり、専大松戸戦(試合レポート)では10奪三振を記録した。この日の感覚をしっかりとつかんで、体を思い通りにコントロールすれば、安定してゲームメイクができる投手として、高い評価を受けそうだ。
敦賀気比の平沼 翔太(2015年インタビュー)は、選抜とそれほど球速は変わっていないが、試合序盤は重圧からか、ストライク、ボールがはっきりするなど、自分の投球ができていなかった。しかし後半は、140キロ前後の速球、スライダー、チェンジアップ、ツーシームをコーナー自在に投げ分ける投球が復活。平沼が目指しているという145キロ〜150キロを超えることができれば、進化した証ともいえるが、平沼の投球スタイルから考えると、次のステージでは150キロを出すことよりも、安定して試合を作ることが求められるだろう。春夏連覇の期待がかかるエースなので、スピードにこだわらず勝つ投球をして、次もプレッシャーに動じない投球をしてほしい。
また二段モーション騒動で物議をかもした原 嵩(専大松戸)。最速144キロを計測したものの、フォームを崩し、キレのあるスライダー、フォークも本来のキレを欠いてしまい、5回途中を投げて4失点と不本意な結果に終わった。
原の投球を見ると、足上げでテンポをずらしながら、打者のタイミングを崩すことを意識した投手だということが分かる。打者のタイミングをずらす方法は多種多様で、間合いを変えたり、ステップする位置を変えたり、踏み出す足のタイミングを遅らせたり、出所を見難くしたりと投手は打たれないように工夫している。ただその中で、反則投球になりやすいのは、足上げのタイミングを変えることだ。一瞬、静止している動作と判断されやすいからだ。
原 嵩は股関節が硬く、入学時は今よりもずっと上半身主導のフォームだった。そのためどうすれば打ち取れるのか、実戦的な投球を追求して今のフォームに到達した。しかしそれを二段モーションとみなされたとすれば、新たな形を見出さなければならないだろう。そして原は打者としても素晴らしい素質が備わっている。フルスイング、打球の速さ、脚力、常に全力疾走に徹する姿勢。次のステージはどちらを選択しても活躍できる可能性を秘めている。
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[page_break:多大な可能性を秘めた綾部 翔、パワーピッチに磨きがかかった佐藤 世那]多大な可能性を秘めた綾部 翔、パワーピッチに磨きがかかった佐藤 世那佐藤 世那(仙台育英)
ドラフト候補だと、綾部 翔(霞ヶ浦)は負け投手になったとはいえ、プロ側の評価は高い。その理由は188センチの長身にして、非常にバランスが取れた投球フォームをしているからだ。下半身主導で、開きが小さく、さらにしっかりと負担なく、上から振り下ろすことができるフォームはなかなかできるものではなく、角度ある速球は見応えがあった。土台となるものが素晴らしいので、3年後は驚くような投球を見せているかもしれない。そんな可能性を持った逸材であった。
そして佐藤 世那(仙台育英)(2015年インタビュー)は明豊戦(試合レポート)で最速146キロを計測。さらに130キロ前後のフォークも決まり、パワーピッチングを展開。やはりフォークを武器にする投手はストレートがグレードアップしてこそ見栄えする。まだ投球に詰めの甘さを残すところはあるが、2回戦以降の投球が楽しみになった。
甲子園のファンを熱狂させたのが最速143キロを誇る成田 翔(秋田商)。いきなり3者連続三振を奪う快投を見せ、最終的には16奪三振。前評判通りその実力を発揮した。石川 雅規(2015年インタビュー)二世と呼ばれるが、投球スタイルは松井 裕樹を彷彿とさせる。将来楽しみな小柄な速球派左腕が出てきた。
初戦敗退したが、白樺学園の2枚看板はワクワクする投手であった。192センチの長身から最速142キロのストレートと落差あるフォークが光った河村 説人や140キロ近い速球とキレ味鋭いスライダーで圧倒した中野 祐一郎も将来が楽しみな右腕である。
小孫 竜二(遊学館)は、九州学院戦(試合レポート)で最速144キロを計測。140キロ前後の速球、キレのあるスライダーをコントロール良く投げ分けゲームメイクする投球は、好投手として推すことができるものであった。また中京大中京の上野 翔太郎は、最速144キロのストレート、キレ味鋭いスライダー、チェンジアップを内外角に投げ分ける投球で実に完成度が高かった。
吉田 凌(東海大相模)は、140キロ前後の速球、キレのある変化球で聖光学院戦(試合レポート)で9回途中まで1失点とゲームメイク。さらに調子を上げていけるか。
その他にも140キロ台の速球と落差ある変化球を投げ分ける渡辺 幹理、常時140キロ台の速球で押す右腕・山本 樹の北海の2枚看板も将来性が高い好投手であった。140キロ前後の速球と緩いカーブで緩急自在の投球を見せた橋本 拓実(鹿児島実)、もともと強打者で注目されていた冨木 崚雅(天理)はこの夏、投手として登板。力みがなく、ゆったりとしたフォームから、常時135キロ〜140キロ台の速球、ツーシームを駆使する投球で、投手として将来性があり、変則でも速球で押せる投手になることに期待したい。
また、甲子園の面白さは開幕まで全く名前が挙がらなかった投手が出てくること。将来性が高いのは、最速143キロを計測した雪野 敏和(中越)。そして140キロの速球で智辯和歌山を封じた石川 雄基(津商)もまだ体が出来上がっていないので、大学・社会人レベルで145キロ以上の速球も期待出来そうな潜在能力の高さがあった。
3年生だけでこれほどの好投手がいる。そして投手だけではなく野手も多くの逸材がいるので、しっかりとピックアップをしていきたい。
(文・河嶋 宗一)
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