浦添商vs宜野座
好投を見せた1年生左腕・野原(浦添商)
「ホントは準決勝で投げさせてあげる予定でした」前日の興南との準決勝で敗れた浦添商。登板予定だった1年生サウスポーの野原 紅弥の初登板はお預けとなったが、浦添商・宮良監督の目には、投げたかったという野原の様子がありありと映った。
「そこまで悔しがる子もそういない。なら、今日投げさせてやるよと告げました」先発を告げられた野原は169cmと小柄だが体の使い方が上手く、綺麗なオーバースローからキレのあるストレートがミットに収まる。
「これまで投げたことが無い」(宮良監督)という高校野球の舞台で、野原はいきなりピンチに立たされる。先頭打者に四球を与えると、次打者の犠打はセカンドでのフォースアウトのタイミングだったが、カバーに入った野手がベースを離れてしまうエラーで無死一、二塁となり、犠打でそれぞれの進塁を許したのだ。普通の1年生ならここでつぶれてしまうかもしれないが、野原は良い意味でベンチの期待を裏切る。4番を空振り三振に斬ると後続も二ゴロと宜野座に得点を与えなかった。
3回には二死から死球とヒットで一、二塁も次打者を投ゴロに斬り、4回は無死からヒットと四球で一、二塁とされるも、後続二人から三振を奪い切り抜ける。得点を許した5回には、一死から四球とヒットで一・三塁とされてからの、相手のダブルスチールに対する送球ミスで同点を許したが三振、二ゴロで最少失点のみと試合を作り続けた。確かに全て背負ったピンチは自らの四死球が絡んではいたものの、その課題も実戦で学ぶことが出来たのは本人にとっても大きな経験となっただろう。
負けじとり切ろうを見せた内間(宜野座)
ベンチの収穫はそれだけではない。同じく準決勝の興南戦での9回表の攻撃で、一、二塁とするもツーアウトという状況で2点タイムリーを放った3番宮城 健が、この日も3回に先制となるタイムリーを放つなど勝負強さを見せれば、延長11回には4番砂川翔弥がヒットで出塁してチャンスを作り、内野ゴロの間に自ら決勝点のホームを奪うなど、中軸を担う二人が活躍を見せた。
そして最後の締めは背番号1の大嵩 博斗だ。「野原、宮城(遼)と二人の1年生が頑張って投げた姿を見てたら上級生は燃えるでしょう。」と、前日の興南戦で3失点(3イニング)を喫したエースに、指揮官は名誉挽回のチャンスを与えた。その大嵩は終盤の3回と2/3イニングを投げきり、打者12人に対し被安打2、奪三振4の無四球と素晴らしいピッチングを披露し、新人大会3位へとチームを導いた。3時間14分と長丁場の試合こそ苦しかったものの、秋の県大会へ向けて多くの収穫と手応えを得た浦添商であっただろう。
敗れた宜野座だが、代打を7人送るなどベンチ入りの20人中18人を使うなど、信条とする粘りと全員野球を貫き通した。二死二塁とされた10回、相手の打球はセンター前に抜けてもおかしくない当たり。それを飛びついてキャッチしたショートの大嶺二千翔(おおみね・にちか)が、間に合わない一塁への送球をするのではなく、間髪入れずにサードへ送球しオーバーランした三塁走者を挟殺する頭脳プレーなど、随所で観衆を唸らせる最高のパフォーマンスを見せてくれた。
最後まで投げきった内間拓馬も11回、浦添商に勝ち越し点を与えた直後の一死満塁の場面で10個目の三振を奪い、このイニングの失点を1のみに封じるなど203球の熱投は感動を呼んだ。準決勝で敗れた両者だが、その持っている技・力・体力・精神力は素晴らしく、シード校としてむかえる秋が非常に楽しみである。
(文=當山 雅通)
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