伝統の丸型4灯テールランプが復活した「GT-R PROTO」を披露する日産のカルロス・ゴーン社長=19日、千葉市の幕張メッセで(撮影:吉川忠行)

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6年にわたる再建プロセスを完了し、「復活」を宣言したばかりの日産自動車<7201>のカルロス・ゴーン社長は19日、千葉県千葉市の幕張メッセで行われた「第39回東京モーターショー」の記者発表で、かわいらしさを形にした小型の電気自動車「Pivo(ピボ)」から降り立ち、出展したコンセプトカーの機能性や快適性をアピール、「ご覧いただいた車すべてが、日産がシフトしていることを証明している」と自信を示した。2200平方メートルの円形劇場のような舞台の真ん中で熱弁するゴーン社長を多くの報道関係者が取り巻き、四方八方から一斉にシャッターを切った。

 日産は、今回のテーマを「SHIFT_」として、革新性、質の高いインテリア、運転する楽しさをもたらす商品開発など独自の価値観を演出。乗る人の様々なライフスタイルを想定したデザインに、安全性や環境に対する最新技術を搭載したコンセプトカー8車種と、市販乗用車12車種を出展した。

 「Pivo」(全長2.7メートル、全幅1.6メートル、全高1.66メートル、定員3人)は、都市で生活する若い女性をターゲットにした「自由な発想の代表例」(ゴーン社長)。人が乗るキャビンのある車体上部が360度回転するので、バックやUターンなしで駐車や方向転換が楽に。ステアリング、ブレーキの配線やシャフトをすべて電気信号に置き換える「Xバイ・ワイア」技術で、配線のよじれなどが起こらず、自由自在の回転が可能になった。大幅に小型化したリチウムイオンバッテリと本来4個分の動力を2個で取り出せるスーパーモーターの採用で、同社の電気車技術を結集、しかも、主力小型車「マーチ」よりさらに小さく、かわいい車体を実現した。

 “日産劇場”の中心に据えられたのは、「今回の主役」と目される2007年市販予定のスポーツカー「GT-R PROTO」。東京都の村山工場(01年に閉鎖)で1969年に誕生し、日産が誇る走行性能やデザインなど技術面の最高峰に長らく君臨してきた「スカイライン GT-R 」の第3世代にあたる試作車(プロトタイプ)。エンジンなどの性能は発表されていないが、伝統の丸型4灯テールランプや、空気抵抗に配慮した滑らかなボディラインなど、デザインは2年後の市販モデルに近いものになっている。ゴーン社長は「『GT-R』は日産の躍動する力の象徴」とし、「お待ちいただいたお客様をがっかりさせない」と宣言した。

 日産は、モーターショーの記者発表会で、北米で展開する中型セダン「アルティマ」にハイブリッド車を来年投入することを示唆した。9月に復活宣言した場で「ハイブリッド車はまだ全体需要の1%にも達しておらず、ニッチとしかいえない」と話したゴーン社長は、トヨタが推進するハイブリッドに限定せず、既存技術を含めた幅広い環境技術の可能性を模索する独自の姿勢を再提示。従来ガソリン車でも採用しているCVT(無断変速機)100万台が、ハイブリッド20万台の環境負荷低減に匹敵するという例を挙げて、「環境技術にはさまざまな種類があり、現在でも手ごろな価格で使える技術もある」と強調した。

 そのほか、同社が得意とする「モダン・リビング・デザイン」の発想を取り入れたコンセプトカーも発表。「エルグランド」を擁するLクラスミニバンタイプの「AMERIO(アメリオ)」(全長4.9メートル、全幅1.9メートル、全高1.83メートル、定員6人)は、座席の素材に本革を、インストパネルに日本の伝統建築技術の紫檀(したん)を採用するなど、家族との上質なひとときを提案した。一方、成熟した大人の男女には、観音開の4ドアクーペ「FORIA(フォーリア)」(全長4.35メートル、全幅1.695メートル、全高1.37メートル、定員4人)を用意。水平基調のレトロなボディラインで存在感を強調、室内の随所を手縫いの本革で覆(おお)い、豪華さを醸し出した。

 この企画では、21日に開幕した「第39回東京モーターショー」の開催中、出展する国内主要メーカーごとに、社長イチオシのコンセプトカーを紹介(土日を除く)。次回は本田技研工業を予定。【了】

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