プラントハンター西畠清順、インタラクティヴな「秘密の花園」をオープン

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150年以上続く、花と植木の卸問屋花宇の五代目西畠清順。世界中を飛び回り、何百トンもの植物を仕入れるプラントハンター西畠がオンラインインタラクティヴ植物園「The Secret Garden」をローンチした。12月11日に行われた西畠清順と『WIRED』のトークイヴェントでは代々イノヴェイティヴなマインドを持ち時代を先取りしてきた植物卸問屋花宇のルーツから、プラントハンターという仕事、またオンラインインタラクティヴ植物園「The Secret Garden」の全容までを語りつくした。

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西畠清順|SEIJUN NISHIHATA
1980年生まれ。明治元年より150年続く、花と植木の卸問屋、株式会社花宇の5代目。日本全国・世界数十カ国を旅し、収集・生産している植物は数千種類。日々集める植物素材で、いけばな・フラワーデザイン・室内緑化・ランドスケープなど国内はもとより海外からのプロジェクトも含め、年間2,000件を超える案件に応えている。2012年1月、人の心に植物を植える活動である、“そら植物園”をスタート。さまざまな個人・企業・団体と植物を使ったプロジェクトを多数進行中。12月24日、オンラインインタラクティヴ植物園「The Secret Garden」をローンチ。

イノヴェイティヴな老舗の5代目

150年以上続く、花と植木の卸問屋「花宇」の5代目西畠清順。マダガスカル、ボルネオ島、チリ、アルゼンチンなど世界中を飛び回り、何百トンもの植物を仕入れるプラントハンターは自身のルーツである花宇を、代々イノヴェイティヴなマインドをもち、時代を先取りしてきた存在だと語る。

「花宇はもともと、初代が大阪でリアカーを引いて苗を仕入れ、地元で売る『植物の運び屋』として始めたものです。2代目の時代に、世間では百貨店が現れるようになり、花や木々を飾って客をもてなす文化がうまれました。ぼくの曽祖父にあたる2代目は、いち早く個人で温室を建て、開花調整を行い百貨店に卸しはじめました。曽祖父は事業を拡大させ、莫大な資産と、数えきれないほどの子どもたちを遺していきました。祖父にあたる3代目は、華道の世界で活躍し、勅使河原蒼風や中川幸夫などさまざまな流派の作家たちから信頼を得た、木を調達する達人です。父にあたる4代目は、ブラジルをはじめとるする世界各地から、いちはやく植物を収集し始めました」

西畠は5代目として、イノヴェイティヴであり続ける老舗の伝統を守りながら国内のみならず、世界中から植物の収集、生産を行っており、その取り扱う植物は数千種にもおよぶ。華道の家元や寺院への卸しのみならず、植物による空間プロデュースから、研究者やアーティストからの希少種の依頼まで引き受け、プラントハンターとして絶大な信頼を得ている。

ハイ・テクノロジーか、あるいは、土の匂いのするものか

プラントハンター西畠のもとにはいま、国内のみならず海外からのプロジェクトも含め、年間2,000件を超える案件が舞い込んでいる。国の内外を問わず、プラントハンターという存在が求められる状況をみて西畠は、「ハイ・テクノロジーか、あるいは、土の匂いのするものか。いま世の中は両極端を求めているのだと思う」と説明する。

最近では2020年の東京オリンピックに向けた東京の緑化整備に関する案件にも関わっているが、これまでの経験から自身のプランについても語った。

「以前160以上の国の人々が集まる大使館のパーティーでの空間プロデュースを任されたとき、そこを世界中から集めた植物でジャングルのようにしました。各国の大使は、それぞれ自分たちの国にある植物に日本で出合えたことをとても喜んでくれました。だから2020年へ向けても、東京の街を世界中の植物で緑化してもてなしたい」


The Secret Gardenの入り口。兵庫県川西市の植物園に足を踏み入れたかのように、植物を見たり、植物の種類や名前、特性について知ることができる。

観葉植物は石油商品、しかしそれでも人に届ける理由

植物を扱う職業ゆえ、人々は西畠とエコとを結びつけ、そこに意義を見出そうとするのだという。しかし西畠は「観葉植物は石油商品」だ、という。「石油で温度を保った温室で育て、石油で空を飛び海を行く輸送機関で運ぶ。観葉植物の消費は石油を消費であり、ある目線からすれば地球にとって決していいことばかりではない」

しかしそれであっても、西畠はプラントハンターとして植物を人に届けたいと語る。「植物好きを増やすことは、環境問題へ人々の目を向けることにもつながる。環境問題への取り組みも責任感からの行動ではなく、好きだからということを理由にした方が、絶対にいい」

インタラクティヴな植物図鑑

代々、時代を先取りしてきた植物の卸問屋の5代目として西畠は、4月、新たな取り組みを始めた。インタラクティヴクリエイティヴカンパニー・バスキュールのメンバーとの出会いをきっかけに生まれたオンラインインタラクティヴ植物園「Secret Garden」の開設だ。それはまさに「卸問屋花宇のイノヴェイティヴな伝統」と「植物好きを増やしたい」という西畠の想いから生まれた新たな試みだ。

The Secret Gardenを開くと、兵庫県川西市にて西畠が世界中から集めた植物を管理・生産している温室内を美しい映像で世界のどこからでも見ることができる。

「パッと見のインパクトでどこまで引き込まれるかにこだわっています。植物は見た目が大切で、ぼく個人も、どんな植物でも好きかというと、そうではない。美しい植物が好きなんです。ですので、このThe Secret Gardenでは、植物を格好よく撮っていくことを考えてつくりました」

The Secret Gardenではいくつかの植物を選択すると、より解像度の高い映像と共に、西畠が書いた1つひとつの解説を見ることが出来る。これはバスキュールのメンバーが温室を訪れた際に西畠からうけた解説が、どれもが面白かったという経験が反映されている。

現在のところ、37種類の植物について、この解説をみることができる。西畠は今後もっと増やしていき、The Secret Gardenを世界最大のオンライン動画植物図鑑にしたいと語った。

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