今から3年前に開催された東アジア選手権。
 欧州組のいない日本代表は中国に引き分け、韓国に惨敗し、3位という無残な成績に終わった。岡田武史監督が掲げた「接近・連続・展開」というキャッチフレーズに程遠い戦術は、真っ向勝負を挑んできた隣国にすら通用せず、「このまま岡田武史監督に日本代表を任せて良いのか?」という議論が起きた。

 逆風が吹き荒れる中、南アフリカW杯を直前にした岡田監督は、4ヶ月前に行われた東アジア選手権で通用しなかった攻撃を捨て、歩んできたプロセスとはまったく違う手法をとった。
 
 つまり、ある意味では、東アジア選手権で答えは出ていたのかもしれない。その戦術では勝てないと。
 
 先月行われたコンフェデレーションズカップを終え、ザッケローニ監督の手腕に懐疑的な声が出始めている。にもかかわらず、その格好のテストの場となる東アジアカップの位置付けが曖昧なことに違和感を覚える。日本サッカー協会が監督へのノルマを明確にしないことは毎度のこととして、メディアやサポーターもザッケローニ監督に何の要求もしていないように感じる。

 理由として、現代表は欧州組メインのチームというのもあるだろう。いわば、欧州組のいない東アジアカップは、1軍への昇格争いくらいに受け止められているのかもしれない。だが、ベストの選手が揃わないとはいえ、アジア相手に“勝たせられない”監督で、世界で勝てるとは到底思えない。

 東アジアカップは新戦力発掘の場という位置付けではなく、ザッケローニ監督のテストの場とするのが健全だと思う。そういった空気なく、大会に臨ませては意味がない。メディアや世論を気にするザッケローニ監督に、良い意味でのプレッシャーをかけ、真価を引き出す。そして、3年前同様に可能性が見えないのであれば、解任への是々非々を論じるべき。もちろん、結果だけでなく、内容や伸びしろなど多面的な議論が必要だ。

 たとえば、原博実技術委員長がザッケローニ監督に求めると言っていた、「相手コートに近づいた組織的な守備。そこから攻撃をいかに仕掛けていって点を取るか。プラス、グラウンドを広く使った大胆なサッカー」を世界相手に展開できるかを考察する。そして、その結論は「他に監督がいない」ではなく、ザッケローニ監督にブラジルW杯を任せたいかどうか。
 
 3年前のようなギャンブルをしては、失われた4年間になってしまう。日本サッカー界が世界と真剣勝負できる場は、4年に一度しか来ないのを忘れてはいけない。

◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
C級ライセンス・三級審判員の資格を持つ。自サイトFootBall Journal(fbrj.jp)にて審判批評、審判員インタビュー、さらに『Jリーグ紀行』と『夏嶋隆コラム』をメルマガ配信。審判員は丸山義行氏から若手まで取材。中学サッカー小僧で『夏嶋隆氏の理論』、SOCCER KOZOで『Laws of the game』の連載を行なっており、サッカー批評などにも寄稿している。著作にDVD『レフェリング』『久保竜彦の弾丸シュートを解析』。ツイッター:@FBRJ_JP