■5月の連休で3連勝し、2位をキープ

清水エスパルスは、5月のGW中に行われた3連戦(FC東京、鹿島、仙台)で3連勝を記録。しかも、第10節では無敗で首位を走る仙台に土を付け、アフシン・ゴトビ監督が就任して以来、最上位となるリーグ2位となった。また、FC東京戦と仙台戦では退場者を出し数的不利という状況になりながらも、しっかり勝ち点3を掴み、応援に訪れたオレンジ・サポーターの心を鷲掴みにした。第11節ではC大阪に先制を許し苦しい立ち上がりとなったが、アレックスがロスタイムに劇的な同点弾を決め今期ホーム無敗記録を継続。勝ち点1を加え、順位も2位をキープしている。

こうなると、シーズン前に多くの専門家がJ2降格候補と名前をあげた清水エスパルスだったが、その評価は一変することになる。好調の原因は何か。謎を解明しようと取材に訪れるメディアは劇的に増える。実際、筆者も多くの人から「エスパルスが好調だけど、何があったのか?」といった質問を多く受けるようになった。

では、昨年と何かが変わったのか?

■細部にリニューアルが施された

結論を先に言えば、やろうとしているサッカーそのものは変わっていない。しっかりボールを保持して、ワイドに動かし、サイド攻撃からゴールに迫る。軸はぶれていない。しかし、細部でのリニューアルがされている。特に目立つのが守備面での改善だ。昨年は、リーグ戦34試合で51失点を記録(1試合平均で1.5失点)していた。しかし、今期は11試合を終えて失点は僅かに10(平均0.9失点/1試合)と激減している。中でも、相手を無失点に押さえた試合は約半分の5つもある(ナビスコ杯を含めれば、実に完封勝利は7つにもなる)。

しかも、その失点の内容を分析すると、「我々の失点はPKで2つ。5つがセットプレーで、流れの中で崩されたのは2つだけ(第10節の終了時点で9失点)」(アフシン・ゴトビ監督)という状況にある。そのため、指揮官はここまでの守備の組織作りに関しては大きな手応えを掴んでいることが判る。また実際にアンカー役を務める村松大輔も、「上手く守備がはまっていると思うし、前の選手もハードワークしてくれている。今はやっていて点を取られる気がしない」と発言していることからも、選手の間にも自信が芽生えていることが判る。

実際に試合を見ていても、守備に関しては上手く機能していることが判る。例えば、昨年との大きな違いは相手ボールになったときの対応だろう。今期の清水はボールをロストした瞬間から、高い位置でプレスに行く。右FWとして起用されている大前元紀も、「ボールを奪われた時の切り替えの速さはずっと言われている。ブロックを作っていた昨年と違い、今年は前から行くようになっている」と説明する。

そして、そのハイプレスが上手く機能しなかった場合であっても、選手たちが焦らないための良策がしっかり授けられている。ボールロスト後、高い位置で上手くボール奪取に成功しなかった場合は、2シャドウの選手が素早く落ちてきて[4-1-4-1]を形成する。そして、同時に最終ラインがグッと押し上げ全体をコンパクトに保つ。こうすることで、[4-3-3]の弱点とされていたアンカー(村松)の両サイドにあるスペースを相手に使われないように、しっかり埋めることができる。また、最終ラインと前線が高い位置でコンパクトに保たれているため、選手間のトライアングルの距離、相手ボールホルダーへの距離が近いため、選手が実際にプレスに走る距離がそれ程多くないことが判る。

■ハイプレスとコンパクトな陣形を可能にしているもの

また、このコンパクトな布陣とハイプレスの連動を可能にしているのが、昨年からアフシン・ゴトビ監督が口酸っぱく指導してきたポジション取りにあると推測できる。昨年は練習後に、「ミーティングでビデオを見ては、ポジション取りに関してうるさいほど細かく言われた」と選手が愚痴をこぼしていた。しかし、その自分が取るべき適正なポジションが、2年目を向かえた今期はしっかり体に染みついてきていることが判る。特に守備時だ。即座に自分の居るべき正しいエリアへ戻ることで、ボールの進入と相手の進入を阻止する。そして、ボールホルダーに対しても縦へのコースを切りながらプレスに行くことができるようになっていることが判る。