この一連の動きに関しては、かつて名古屋でアーセン・ベンゲルの下で指導を受けた浅野哲也さんが、「とにかく言われたのは選手間の距離とポジション。鎖で繋がれたようにピッチでバランスを取ること。それは徹底して言われた」と話してくれた事を思い出させた。結果、その正しいポジション取りが、名古屋の躍進となって表れたように、清水でもアフシン・ゴトビ監督の徹底した指導が実を結び、現在リーグ屈指の堅守を構築することに成功しているのが判る。

■攻撃面での課題

しかし、指揮官の掲げる目標を達成するには、まだまだ課題が残されている。特に攻撃面だ。嬉しいことに今年は両翼の大前と高木俊幸のホットラインが好調で、ここまでチームを牽引してくれている。若いFWが苦しい試合でも奮闘しゴールを決めることで勝利を掴むことができているのは救いだ。

しかし、CFの不在に関しては開幕前から指揮官はずっと頭を悩ましている。「我々のターゲットを達成するためには、そのポジションで20点獲ることが必用」(アフシン・ゴトビ監督)と言い続けてきたにも係わらず、チーム作りの段階で希望に添うストライカーの獲得はできなかった。3月には急遽187cmのブラジル人FWジミー・フランサを獲得したが、現段階では9試合に出場し0得点と、指揮官の期待に応えているとは言い難い。

これまで終了した11試合で、3トップの頂点で先発起用された選手は3人(伊藤翔、アレックス、ジミー・フランサ)で、昨年チーム最多タイの8得点を記録した高原直泰が試合途中からCFを務めることもあったが今期は怪我の影響もあり出場時間は限られているのが現状だ。それけに、1年を通し軸となる20得点できるFW(「複数の選手で20得点でも良い」と最近の指揮官はもらしてもいるが)。この課題をどう克服するか。それが、今シーズン清水エスパルスが更なる躍進をできるかどうか、最大のテーマとなりそうだ。

■飯竹友彦
1973年生まれ。平塚市出身。出版社勤務を経てフリーの編集者・ライターに。同時に牛木素吉郎氏の下でサッカーライターとしての勉強を 始め、地元平塚でオラが街のクラブチームの取材を始める。以後、神奈川県サッカー協会の広報誌制作にかかわったのをきっかけに取材の幅を広げ、カテゴリー を超えた取材を行っている。「EL GOLAZO」で、湘南ベルマーレと清水エスパルスの担当ライターとして活動した。現在は思いつくまま、気の向くままに、さまざまな現場に出没している。