本当だろうか?と思ったのだが、どうやらシアトル・マリナーズ=SEAはソフトバンクの川崎宗則に、マイナー契約のオファーをするようだ。11年かけて積み上げた2億4000万円の年俸は、おそらく六分の一以下になることだろう。
成田空港でおしゃれな帽子をかぶって、報道陣に手を振り、シアトルへと向かう川崎は、いまどきの野球選手という感じだ。しかし、彼の心中には「イチロー兄さん、命預けますぅー!」というど演歌が流れているのではないか。 



川崎はマイナー契約するような選手ではない。今年、横浜の真田裕貴にはオファーがなかったが、それは選手として芳しい実績がなく、全く未知数だったからだ。川崎は、ここ9年間、パリーグの強豪チームソフトバンク(ダイエー)で不動の遊撃手であり、実績は十分だ。その上に、NPBでも屈指の人気者だ。彼を獲得することで、経済効果も多少は期待できる。 
 
西岡剛の失敗で、MLBでのNPB内野手の評価は下落しているとはいえ、普通にFA宣言していれば今の年俸より少し下がる程度の提示はあったはずだ。 
 
SEAのザエンシックGMにとっては、これほどおいしい逆オファーはない。選手獲得のリスクなしで、戦力になる可能性が高い選手を手に入れることができるのだ。日本人的には、「そうはいっても実績のある選手だから、軽い評価は失礼だ」となりそうなものだが、あっさりとマイナー契約を結ぶのか。川崎は大見得を切ってしまっているのだから、どんな提示であれ、承諾せざるを得ない。 
 
SEAの実質的なオーナーは、任天堂の山内溥さんだといわれているが、「ちゃんと契約してやれ」という「天の声」はないのだろうか(イチローはその性格からして、口添えをしたりはしないだろうが)?ここはアメリカ流のビジネスでいくのだろうか? 
 
SEAの遊撃手は、強豪セントルイス・カージナルス=STLで正遊撃手を務めたこともあるブレンダン・ライアンだ。しかし、打撃はいまいち。また、二塁手のダスティン・アックリー(一昨年のドラフト全米2位)とは違い、どうしてもレギュラーで使わないといけないような大物でもない。川崎が付け入るすきは十分にある。 
 
高額の複数年契約でミネソタ・ツインズ=MINに入った西岡は、減点主義で評価された。期待感が高かったため、「できて当たり前」のことができないと、球団もファンも失望したのだ。それが西岡のハートもしぼませたのではないか。 
 
マイナー契約の川崎の場合は、少しいいところを見せれば「意外にやるじゃん!」となる。加点主義なのだ。年俸のことを考えなければ、気楽に挑戦できるし、悪くないかもしれない。 
 
何といっても打撃である。大きいのは打てなくても打率を残せば、シーズン終盤には人気者になっている可能性もあるだろう。怪我が心配だが。来年1年間、応援するぞ!