霧から発癌性物質を検出…専門家「炒め料理よりマシ」＝上海
復旦大学の陳建民教授はこのほど、同市内で発生した霧の微粒子を分析したところ、発癌性（はつがんせい）がある多環芳香族炭化水素（PAH）を検出したと発表した。国内外の他の地域の霧よりも含有量が多かったという。当局・環境観測部門の専門家は「炒め物を調理する際に出る油煙に含まれる量より少ない」と、ただちに深刻な健康被害に結びつく心配はないとの考えを示した。中国新聞社が報じた
問題にされている霧は、地表近くで大気が冷却されて水蒸気が液化する自然現象によるもので、本来ならば無害のはずだ。しかし、空気中にある汚染物質が水の粒子の溶け込むことで、人や動物が吸い込んだ場合に健康への影響が大きくなるとの見方がある。
陳教授によると、上海市市街地で発生した霧を分析したところ、発癌性があるPAHを多種類含んでいたという。霧の正体は「空気中を漂っている水の微粒子」だが、集めて通常の液状にしたところ、多くはかなり濃い色がついていた。PAHの濃度はおおむね、1リットル当たり0．03−6．67マイクログラムだったという。
同調査に加わった李想博士は「濃い霧だと思った場合、できるだけ外出しないようにして、屋外にいる時間を短縮すべきだ。早朝の運動も、できたら取りやめた方がよい」と述べた。
上海市環境観測センターの技術責任者である伏晴艶総工程師は、「たばこの煙や炒め物を調理する際に出る油煙にもPAHは含まれている。霧に含まれるPAHは、比較すればかなり少ない」と、ただちに深刻な健康被害に結びつく心配はないとの考えを示した。
伏総工程師によると、大気中の芳香族化合物は主に工場から排出されているもので、上海市は産業構造の調整と、排出規制を進めているところだ。
現状では、自動車の排出ガスに含まれる形で大気中に放出されるPAHは少ないが、上海市では1世帯あたりの自動車保有量が1台を超え、さらに増えつつあるので、当局は環境問題への対策として、交通部門との連携などの努力がより一層求められるという。
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◆解説◆ 多環芳香族炭化水素とは、炭素原子6個が六角形の形に結合して周囲に水素原子を配する「ベンゼン環」が複数組み合わさってできた分子からなる物質を指す。多環芳香族炭化水素に分類される物質の多くは発癌性や催奇性（胎児に奇形を生じさせる性質）を持つことが確認されている。（編集担当：如月隼人）
