東京放送(TBS)ホールディングスによる横浜ベイスターズ売却問題が、混沌としてきた。19日に、携帯電話向けゲームサイト「Mobage(モバゲー)」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)社への売却が大筋で合意に達したと報じられたが、翌20日には日刊スポーツ紙が、横浜市内に路線を持つ京浜急行電鉄やエネルギー関連企業のミツウロコなど、横浜市に縁のある複数の企業が連合チームを作り、球団買収に乗り出すとしている。

 試合以上に二転三転している今回の問題だが、ファンの関心はただ一つ。来季以降も、ベイスターズが横浜に残留するか、否かだろう。

 DeNA社との交渉がニュースになった直後、横浜スタジアムにかけつけたファンが、チームの横浜残留のメッセージボードを掲げたことは、記憶に新しい。

 幸い、合意間近と言われているDeNA社も、新たに買収に名乗りをあげるとされる地元の企業連合も、球団の横浜残留を基本方針にしている。

 また、横浜市林文子市長も、球団が横浜をホームタウンにし続けることを期待している。球団売却の原因の一つである、横浜スタジアムの使用契約についても、「スタジアムの株主である市として、球団とスタジアム双方に球場使用料の見直しを含めた話し合いの場を設けるよう提言したい」と述べた。

 これでファンも一安心。後は、どの企業がオーナーになるのか見守るだけになったが、その前に、はたして横浜市の協力を信じていいのだろうか

 以前にも書いたように(http://blog.livedoor.jp/yuill/archives/51620215.html#more)、12球団が本拠地を構える自治体の中で、横浜市ほどプロ野球の球団運営に非協力的な自治体はない
 ベイスターズは、横浜市に高額の球場使用料を支払い、横浜スタジアムを使用している。いわば、オーナーと店子の関係だ。
 しかも、入場料収入の25%、球場での広告収入、グッズの販売収入などは、横浜スタジアムを管理運営する第3セクター、株式会社横浜スタジアム社を通じ横浜市に入る。

 ベイスターズにとっては、メリットが少ない契約だ。この契約が球団経営を圧迫、昨年から浮上した球団売却問題につながっている。

 ベイスターズはこれまでにも、契約の見直しを市に嘆願。これに対し林市長は昨年、市をあげた協力を約束したのだが、実態は何ら変わっていない。むしろ、悪化している。先日も、単年での契約見直しを提案した球団に対し、市は10年間にも及ぶ長期契約を突きつけた。

 そんな横浜市を、どうして信用できようか。DeNA社にしろ、地元企業連合にしろ、球団の横浜残留を基本方針にしているが、この球場使用の契約が今後も、球団売却問題の火種となるのは、火を見るより明らかだ。

 そんな口約束を続ける横浜市を変えられるのは、地元のファンだ。林市長に待ったをかけられるのは、横浜市の有権者しかいないのだ。

 たしかに、自治体に一民間企業を援助させるのは容易ではない。仮に球場の使用契約を、ベイスターズに有利に見直せば、市は収入減につながりかねない。横浜市の全市民が、それを歓迎するとは限らない。

 だが、メジャーリーグ球団の球場新設に公的資金を注入している米国では、自治体はレンタカーやホテル、レストランの使用に税金を課し、観光客から税金を徴収。その税収を、球場建設の支援にあてている。
 球場新設に住民税を引き上げるのは、地元住民の賛同を得られない。だが、観光客からも税金を徴収することで、住民感情を和らげることができる。観光客も、年に数度のことだから、税金を払っているという意識が薄くなる。

 このように、見方ややり方を変えれば、自治体による球団の援助は決して不可能ではない。それどころか、これまで市が第3セクターとして携わってきた横浜スタジアムの管理運営をベイスターズに委託すれば、コスト削減、サービスの質の向上につながるかもしれない。

 いずれにしろ、横浜市を動かせるのは、地元のファンしかいない。

 これまでにも、地元からプロ野球の球団を奪われたファンは少なくない。最近では、2004年に消滅した大阪近鉄バファローズが記憶に新しい。
 バファローズの選手は、オリックスバファローズ東北楽天ゴールデンイーグルスなどで活躍しているが、大阪近鉄バファローズはもはや、記録と、ファンの記憶の中にしかない。

 そうなってからでは、手遅れだ。横浜のベイスターズファンよ、立ち上がれ。球団を横浜に残留させられるのは、地元ファンしかいないのだ。