■清水に加わった二人の実力者

9月10日。エコパスタジアムで行われた磐田×清水の静岡ダービーで、フレデリック・ユングベリが後半20分に小野と交代してピッチに立った。かつて、イングランドのアーセナルで一時代を築き、スウェーデン代表として日韓W杯にも出場した経験を持つ、超ビックネームがJリーグのピッチに立った。ややブランクもあって、トップコンディションとはいかなかったため、本来の実力発揮とまではいかなかったが、続くナビスコ杯第2回戦の新潟戦でも交代出場を果たすと、アレックスの決勝点をアシストするなど早くも存在感を示している。

また、清水エスパルスは、この世界的ビックネームの獲得の前にも、8月にカルフィン・ヨンアピンをオランダより獲得している。夏の移籍期間ももう閉じようかという時だった。左利きで、元オランダ五輪代表として北京五輪にも出場をした実績を持っている。ヨンアピンも、選手登録が済むと、直後のC大阪戦でボランチとして先発。するといきなり90分間精力的なプレーでスタンドを湧かせた。周囲との連携では課題を残したものの、オランダを代表する格闘家、アーネスト・ホーストを思わせる屈強なフィジカルを活かしたプレーで相手選手を次々と吹き飛ばしボールを奪っていった。

僅かな期間で、清水は2人の新外国人選手を獲得した。しかも、共に名も実もあるかなりの実力者だ。では何故このような補強が行われたのか。そして何故、このような実力ある選手を獲得することができたのだろうか。その背景を探ってみたい。

■複数ポジションでプレー出来るヨンアピン

まず始めに、今シーズンより就任したアフシン・ゴトビ監督は、早い段階からチームに所属する選手全体のバランスを見て、「シンプルにボールを動かすことができるボランチ」(原強化部長)の補強をクラブ側にリクエストしていた。しかし、まだシーズン序盤だったことに加え、怪我で出遅れていた杉山浩太、小林大悟が復帰するまでの間、暫く様子を見ることになった。その間、指揮官は山本真希、枝村匠馬ら中盤の選手の他に、岩下敬輔、平岡康裕、村松大輔といったDF登録の選手を何人かテストした。しかし、指揮官が満足するまでには至らなかったようだ。

そのため、クラブは夏の移籍期間までに補強可能な選手をリストアップしていたが、その過程でアフシン・ゴトビ監督の幅広いコネクションから、数名の選手の名前が候補に挙がってきた。その1人がヨンアピンだった。この時点でポイントになったのは、「(シーズン途中の加入である以上)2〜3つの複数ポジションでプレーすることができること。左利きであること」(原強化部長)だった。

背景には左SBの太田のバックアップが手薄な事もあった。勿論、クラブとしては金額や年齢なども考慮しての人選である。ヨンアピンは昨シーズンまではヘーレーンフェーンでプレーしていたが、契約が切れ8月の段階では無所属になっていた。そのため、移籍金無しのフリーで獲得できるという点も獲得に至る大きなポイントになったのだった。

■ビッグネームの加入で日本サッカー界を盛り上げる

一方、ユングベリの場合は少し事情が違う。本来攻撃的なポジションでは、センターフォワード(CF)の補強が一番のポイントに挙がっていた。エースの高原直泰はシーズン序盤から十分にその実力を発揮していた。しかし、1年間を通したシーズンで考えると、出場停止や怪我、疲労で全試合フル回転できない場面が必ず出てくる。そのため、代わりとなるCFタイプの選手の獲得が急務だと考えていたが、国内を見回しても適当な人材が見あたらない。そこで、外国人選手にまで枠を拡大。

しかし、残り10試合程度となったシーズンを考えると、一度日本でプレーしたことのある選手でないとリーグに慣れるまで時間がかかると考えていたため、獲得可能な人材はほぼ居なくなったと思われた。そのため、この段階で、攻撃的なポジションの補強に関してはもう難しいだろうという結論に至った。しかし、そこにビックネームが候補に挙がった。