北朝鮮の韓国・延坪島への砲撃によって韓国兵士2人が死亡し、4人が重傷を負った。民間人3人も負傷している。突然の攻撃のようにもみえるが、今年に入ってから続く南北の緊張感と、北朝鮮の後継問題をめぐる国内の不安定さを垣間見ると、やはりいつ起こってもおかしくない「有事」だったのかもしれない。韓国や中国の専門家らの意見を総合すると、米国を対話の席に戻させるために、隠していた大規模濃縮ウラニウム施設を公開し焦らせてみようと思ったものの、米国が軽く無視したので、さらに暴れてみました、というところだろうか。しかし、北朝鮮の、チンピラまがいの恫喝外交に屈して米国政府が対話に動くことは、米国としては屈辱であり、極東の安定に真に貢献できるとはいいがたい。国連による対北朝鮮追加制裁というのがあるべき方向だろう。

 そこで、注目されるのは、中国政府の対応だ。ところが、中国人民大学国際関係学の時殷弘教授は英国BBC(中国語版)上で「中国と北朝鮮の関係は数年前よりよくなっており、中国が北朝鮮に強い圧力をかける可能性はすくない」「今回の砲撃事件で、中国の影響力には限界がある」との見方を示した。体制内学者として、慎重な言い回しだが、これは中国側が積極的に北朝鮮の暴力をいさめる気がない、ということだろう。それどころか、香港誌「動向」では、今回の事件は「北京がそそのかした」という、かなり過激な見出しの寄稿記事まである。香港雑誌特有のあおり記事という見方もあるが、中国と北朝鮮の関係が最近急に密接になってきている空気は確かに素人にも感じる。

 たとえば北朝鮮が延坪島を攻撃した当日、平壌では中朝政府経済貿易協定が調印された。10月25日の朝鮮戦争60周年記念座談会で、習近平・国家副主席は朝鮮戦争を「正義の戦争」と改めて位置づけている。北朝鮮が今回、このような暴挙に出た背景に、中国のこうした姿勢の影響もある、と言われればそうかもしれない。

 周知のように北朝鮮の指導者はまもなく世代交代という微妙な時期を迎える。中国としては、北朝鮮への影響力を維持し続け、南シナ海や尖閣問題、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞決定以降、急速に狭まる米国を中心とする対中国際包囲網に対する、切り札としてうまく使いたいのは当然だろう。ただその使いかたをあやまると対中包囲網はさらに狭まることになる。暴れるできの悪い弟を、真に矯正できるのは兄貴分の中国しかない。国際社会の期待にこたえる形で中国の影響力を行使し、「弟をそそのかした」などという陰口を打ち消す努力をしてほしいものだ。(編集担当:三河さつき)



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