GoogleがFacebookに負ける(かもしれない)理由

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Ryan Singel


1993年、New Yorker誌は、コンピューターの前にいる犬がもう1匹の犬に、「インターネットでは、誰も君を犬だとは思わないんだよ」と教える有名なマンガを掲載した。

その後、事態は変わった。Facebook時代のインターネットでは、誰もが君を、どんな種類の犬であるかを正確に知っている。

Facebookは世界中の人々に、自分のアイデンティティをオンラインで明らかにすべきだと考えさせている。Facebookはネットユーザーたちに、写真を掲載し、近況を報告できる場所を提供しているが、その本当の目的は、人々のアイデンティティをウェブ上の情報とすることだ。

一方、検索大手の米Google社にとって、長年の敵はMicrosoft社やYahoo社だった。しかしGoogle社は、検索市場でこれらの敵に勝利したものの、真の闘いではゆっくりと勢いを失いつつある。真の闘いとは、ディスプレイ広告という市場であり、そこでの敵は、大学の学生寮で生まれたFacebookだ。

Facebookは15日(米国時間)、Google社にとって最も成功したソーシャル製品である『Gmail』に対抗する「総合コミュニケーション・システム」を発表した(日本語版記事)。それも重要なバトルだが、真の闘いは、ネット上のどこででも、[ユーザー個人を対象とした]非常に精密なターゲット広告を掲載するというところにある。それはこれまで、Google社にしか夢見ることができなかった市場だ。だからこそGoogle社は、Microsoft社の『Bing』でなく、Facebookを最大のライバルとして見ているのだ。

Facebookでは、プロフィールに詳細な内容を書けば書くほど、広告が、時には不気味なほど自分に焦点が合っていることに気がつくだろう。Facebookには、オンラインメディアの広告市場を独占しうる可能性があるのだ。

Google社は、『Facebook』の利用者がFacebookサイトでたくさんの時間を過ごしていることや、膨大なページビューを集めていることについては、それほど気にしていない(米comScore社が行なった最近の調査によると、米国におけるインターネット・ディスプレイ広告[インプレッション]の約23%が米Facebook社だ。この数字は米Yahoo!社の2倍以上、Google社サイトの約9倍にあたる――もっとも、Facebook社の広告料金はまだ低いままだが)。

Google社が、ウェブのテクノロジー企業トップとしての自社の地位が危うくなるかもしれないと神経をとがらせているのは、次の2点だ。

1つは、Facebookの内部で共有されるやり取りや情報が増えて、ワールド・ワイド・ウェブによく似たものが、ウェブの中にそれなりのサイズで誕生したことだ。そこで起きていることの多くは、Google社からはクロールも分析もできない。

もう1つは、Facebook社が、利用者がひとりひとりがどういう人間なのかを知っており、またその情報を使う権利を持っていることだ。利用者は明示的に同意し、自分の個人情報を同社に提供している。

Google社も、利用者の人となりや関心について多くのことが分かる別の種類のデータを持っているし、そこには非常にプライベートな情報も含まれている。しかし、Google社が利用者から他と共有しても良いという明示的な許可を得ている情報はそのほんの一部であるし、利用者のプロフィールを得るために検索履歴や電子メールのデータを利用することはないと、Google社は約束してきている。

こうしたことはGoogle社にとって、今までは問題ではなかった。同社は2010年第3四半期の売り上げ72億9000万ドルのうち大部分を、検索結果の上や横に表示される小さなテキスト広告で稼いでいる。Google社の『AdWords』システムでは、ユーザーが誰であって、以前に何を検索し、他のGoogleサービスで何をしたかについてはどうでも良かった。(現在AdWordsで本当にターゲット広告が行なわれているのは場所によるものだけだ)

一方で同社は2007年に、新しい収入源を求めて、米DoubleClick社を31億ドル以上で買収した。DoubleClick社は、インターネット上のディスプレイ広告の大手で、1990年代の初めから、ネット中のさまざまなサイトにバナー広告を配信してきた。同社は広告掲載スポットを使って読まれている内容を追跡し、利用者の興味の推定や、ブラウザーにあるクッキーとひも付けられた、本名を使わないプロフィールの構築を行なっている。

しかし、『AdSense』とDoubleclickが合体した広告は、(広告を掲載しているサイトは膨大な数に上るものの、)Google社の売り上げ全体の約30%にしかならない。また意外にも、ターゲティングはそれほどうまく行なわれていない。同社サイトのページを見ると、閲覧から利用者について推定してよいとGoogle社が考えている内容がわかる。

問題はGoogle社が、検索利用のデータと広告との間に壁を設けたことにある。当時は、AdWordsが巨大な金銭的成功を収め、分離があってもうまく行くことが証明されていた。検索クエリは大半が意図を反映していたし、製品を売る広告主からすると、検索者がどんな人かは問題ではなかった。

しかしGoogle社は2009年、ディスプレイ広告を改善するために、この壁に穴を空けた。ディスプレイ広告のターゲティングの材料に、視聴されている『YouTube』のビデオを使い始めたのだ。この種の広告がどのくらいうまく行っているかを同社は明らかにしていないが、今夏のWall Street Journalの記事によると、Google社はGoogleにログインしている間の行動をターゲット広告につなげるべく、非常な努力をしているという。履歴データと広告を結びつけないという同社のこれまでの方針とは自己矛盾する動きだ。

一方、Facebook社はそのような約束はしていない。そしてFacebookは、「いいね」ボタンをネット中に掲示することにより、ウェブ閲覧を通してずっとFacebookにログインし続けることに人々を慣らして来ている。人々はネットにいる間中ずっと、Facebookのアイデンティティを使うのであり、どのサイトに対しても、自分の人となりについての情報――どんな犬でどんな遊びが好きで他のどんな犬と遊ぶかについて――を提供することになる。

(2)へ続く

WIRED NEWS 原文(English)

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  • ユーザー5億人:個人情報の中枢になるFacebookの「野望」2010年5月11日
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