トーレス

スペイン代表のエース、フェルナンド・トーレスの初めての自伝だ。
抜群のスピードにゴールへの鋭い嗅覚。多彩なシュートパターンと驚異的な決定力。対戦相手にとっては悪魔みたいなストライカーだが、美しい金髪に、甘いというかむしろかわいいマスクでにっこり微笑む様はさながらピッチに舞い降りたミカエルか。「エル・ニーニョ(=神の子)」というニックネームがつけられるのも納得の、特別な雰囲気を持った選手だ。

そんなトーレスの人間性が、よくわかるのが本書だ。デビューからヨーロッパ屈指のストライカーとなった現在までの歩み。あった出来事に対して何を思っていたかが彼自身の言葉で飾ることなく語られている。
たぶん純朴なんだろうなあと思って読み始めてみると、想像以上に純朴な選手だというのがわかった。世界のトップレベルの選手と肩を並べることを恐縮だと言い、広告の撮影は恥ずかしいと言う。本当にそう思っていそうなのが行間から伝わってくるから、かわいい。

サッカー選手としての基礎を作ったアトレティコ・マドリー、ヨーロッパレベルへ飛躍したリヴァプールと、それぞれのクラブへの愛の深さもよくわかる。クラブの歴史をしっかりと理解した上での忠誠心で、ファンと良好な関係を築けているのもうなずける。
レアルじゃなくてアトレティコ。チェルシーじゃなくてリヴァプール。強烈な個性を持つクラブで育まれたアイデンティティで、どんなにスターダムにのし上がっても決して金で移籍するような選手にはならない。

神に選ばれしストライカーであると同時に、クラブとファンを愛し、クラブとファンに愛されるスペシャルなプレーヤーだ。


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