【安藤隆人コラム】高校サッカーとJユースの理想的な共存方法とは
■高校サッカーを取り巻く現状
全国高校サッカー選手権(以下選手権)が終わり、今シーズンのユース年代の大きな大会はすべて幕を閉じた。毎年この時期になると「選手権のレベルは下がった」とか、「やっぱり高校よりユースだ」などといった声が聞こえるが、そういった言葉で片付けてしまうのはあまりにも勝手であり、危険だ。
選手権のレベル自体は、確かに以前と比べると下がった部分はある。しかしそれは、Jユースに有力な選手が進む傾向がある現状を考えると、ありえることであるし、だからといってすべてにおいてJユースのほうが上かというとそうではない。
高校サッカーの現状が以前より厳しくなったのは事実だ。これまでは強豪校であれば、戦力がある程度集まってくるので、ある程度のチームはできた。しかし近年は、各地域で1番手クラスの選手が強豪Jユースに進む傾向と、少子化などの余波もあり、高校にまとまった戦力が集まりにくくなり、以前の帝京や国見、市立船橋のようなマンモスチームは現れなくなった。
ただ、これで高校サッカーのレベル低下という結論に持っていくのは強引過ぎるし、間違っている。
ユースに昇格できる選手はごく一部だ。つまり高校でサッカーをする選手のほうが多い。それだけに、育成を考えた場合、Jユースだけが強ければいいという理論は通用しない。
■高評価を受ける高卒選手たち
作陽高校を率いる野村雅之監督は、「ウチには2番手、3番手の選手が多く来る。中学時代はまったく無名だった選手ばかり。だからこそ、そういった選手たちをいかに全国で戦えるように仕上げていくか。ここが一番重要なんです」と語った。
今年の作陽の結果を見てみてどうだろうか。プリンスリーグ中国では広島ユースを抑えて2位、高円宮杯ではC大阪ユース、東京Vユースなどの強豪に勝利し、ベスト4まで進出。準決勝では優勝した浦和ユースを延長まで追い詰めるなど、Jユースにとって脅威の存在であり続けた。
さらに九州では鹿児島城西が大分ユース、福岡ユースを抑え、圧倒的な力でプリンスリーグ九州を制した。そのとき鹿児島城西が大分ユースから刻んだスコアは7−0。高円宮杯では準々決勝で浦和ユースに0−3で敗れたが、ラウンド16ではG大阪ユースとの4−3という乱打戦を制している。
そして、おもしろい現象も起きた。今シーズンのFC東京ユースは日本クラブユース選手権で優勝、高円宮杯、Jユースカップでベスト4と結果を残し、多くの有能な選手を抱えていた。しかし、来季のトップ昇格はゼロ。翻って高卒新入団選手はMF米本拓司と田邉草民の2人だ。米本は兵庫県立伊丹、田邉は國學院久我山の選手。自前のユースの選手よりも、高校でプレーする選手を獲得したのだ。
ほかにも高円宮杯準優勝の名古屋ユースは、ユースからの昇格者が1人なのに対し、高卒ルーキーを2人獲得している。
さらに選手権初戦で姿を消した鳥取県の境高校のエースストライカー住田貴彦も、筆者が今シーズンのユース年代を見渡してきた中でも逸材である。彼は中学時代までまったくの無名の存在だったが、鳥取の高校サッカーをリードする存在である池田洋二総監督と廣川雄一監督の2人で丹念に育て上げた結果、大分に入団が内定した。大分の今年の新入団選手が、ユース昇格1名を除いては、大卒、高卒すべてにおいて彼のみということを見ても、その能力への評価の高さが伺える。
このように、高校サッカーでも選手は育ち、日本のサッカー界において果たす役割は大きいのだ。
ユースとの間で力の差が出てしまうのは、チーム全体の選手の能力に差があるからだ。Jユースは平均値以上の選手が多く揃っているが、高校サッカーでは平均値以上とそれ以下の選手が混在している。しかし、月日をかけてチーム作りをしていくと、チームとしての差は徐々に埋まっていく。その過程で平均値以上の力を持つ選手が成長し、プロへと進んでいくことだってあるのだ。
全国高校サッカー選手権(以下選手権)が終わり、今シーズンのユース年代の大きな大会はすべて幕を閉じた。毎年この時期になると「選手権のレベルは下がった」とか、「やっぱり高校よりユースだ」などといった声が聞こえるが、そういった言葉で片付けてしまうのはあまりにも勝手であり、危険だ。
選手権のレベル自体は、確かに以前と比べると下がった部分はある。しかしそれは、Jユースに有力な選手が進む傾向がある現状を考えると、ありえることであるし、だからといってすべてにおいてJユースのほうが上かというとそうではない。
高校サッカーの現状が以前より厳しくなったのは事実だ。これまでは強豪校であれば、戦力がある程度集まってくるので、ある程度のチームはできた。しかし近年は、各地域で1番手クラスの選手が強豪Jユースに進む傾向と、少子化などの余波もあり、高校にまとまった戦力が集まりにくくなり、以前の帝京や国見、市立船橋のようなマンモスチームは現れなくなった。
ただ、これで高校サッカーのレベル低下という結論に持っていくのは強引過ぎるし、間違っている。
ユースに昇格できる選手はごく一部だ。つまり高校でサッカーをする選手のほうが多い。それだけに、育成を考えた場合、Jユースだけが強ければいいという理論は通用しない。
作陽高校を率いる野村雅之監督は、「ウチには2番手、3番手の選手が多く来る。中学時代はまったく無名だった選手ばかり。だからこそ、そういった選手たちをいかに全国で戦えるように仕上げていくか。ここが一番重要なんです」と語った。
今年の作陽の結果を見てみてどうだろうか。プリンスリーグ中国では広島ユースを抑えて2位、高円宮杯ではC大阪ユース、東京Vユースなどの強豪に勝利し、ベスト4まで進出。準決勝では優勝した浦和ユースを延長まで追い詰めるなど、Jユースにとって脅威の存在であり続けた。
さらに九州では鹿児島城西が大分ユース、福岡ユースを抑え、圧倒的な力でプリンスリーグ九州を制した。そのとき鹿児島城西が大分ユースから刻んだスコアは7−0。高円宮杯では準々決勝で浦和ユースに0−3で敗れたが、ラウンド16ではG大阪ユースとの4−3という乱打戦を制している。
そして、おもしろい現象も起きた。今シーズンのFC東京ユースは日本クラブユース選手権で優勝、高円宮杯、Jユースカップでベスト4と結果を残し、多くの有能な選手を抱えていた。しかし、来季のトップ昇格はゼロ。翻って高卒新入団選手はMF米本拓司と田邉草民の2人だ。米本は兵庫県立伊丹、田邉は國學院久我山の選手。自前のユースの選手よりも、高校でプレーする選手を獲得したのだ。
ほかにも高円宮杯準優勝の名古屋ユースは、ユースからの昇格者が1人なのに対し、高卒ルーキーを2人獲得している。
さらに選手権初戦で姿を消した鳥取県の境高校のエースストライカー住田貴彦も、筆者が今シーズンのユース年代を見渡してきた中でも逸材である。彼は中学時代までまったくの無名の存在だったが、鳥取の高校サッカーをリードする存在である池田洋二総監督と廣川雄一監督の2人で丹念に育て上げた結果、大分に入団が内定した。大分の今年の新入団選手が、ユース昇格1名を除いては、大卒、高卒すべてにおいて彼のみということを見ても、その能力への評価の高さが伺える。
このように、高校サッカーでも選手は育ち、日本のサッカー界において果たす役割は大きいのだ。
ユースとの間で力の差が出てしまうのは、チーム全体の選手の能力に差があるからだ。Jユースは平均値以上の選手が多く揃っているが、高校サッカーでは平均値以上とそれ以下の選手が混在している。しかし、月日をかけてチーム作りをしていくと、チームとしての差は徐々に埋まっていく。その過程で平均値以上の力を持つ選手が成長し、プロへと進んでいくことだってあるのだ。