PB「ゾゾ」のデニムパンツ。「ゾゾ」のロゴマークに添えた「Be unique, Be equal.」の言葉には「世界中にはいろいろな人がいて個性があるが、実はみんなイコール(平等)だ」という思いを込めたという。

 ゾゾタウンを手掛けるスタートトゥデイが新たな成長戦略を打ち出した。ファッションEC(電子商取引)モールのゾゾタウン事業を引き続き拡大する一方で、採寸用ボディースーツであるゾゾスーツを活用したプライベートブランド(PB)「ゾゾ」を世界に向けて販売し「ユニクロ」や「ザラ」を超えるブランドへと育成したいという。10月からZOZOに社名変更する新生ゾゾが描く青写真を追う。

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体形データを活用、服が人に合わせる時代へ

ゾゾスーツで計測された体形データを基に注文を受けてからパターンを引いて生産するというPB「ゾゾ」のビジネススーツ。

 7月3日、東京ミッドタウンのイベントホールで「新生ZOZOビジョン発表会」が開かれた。創業20周年と社名変更、さらにはPB「ゾゾ」による海外拡販と完全オーダーメードのスーツとドレスシャツの発売に合わせたものだ。

 ところでスタートトゥデイは昨年11月に着るだけで採寸できるとしたゾゾスーツを無料配布すると発表したが、その大量生産に失敗。8カ月たっても届かない人がいるなど出荷の遅れが問題となっていた。

 そこで同社は最初のストレッチセンサー型からスーツに水玉模様に印刷されたマーカーを自身で回転しながらスマホのカメラで360度撮影するタイプに変更。予約注文は5月1日の段階で100万件を突破していたが、この日は7月3日現在で55万3179枚が配布されたと前澤友作社長は説明した。

都内で開かれた「新生ZOZOビジョン発表会」で話す前澤友作社長。

 そして前澤社長はこの日のメインテーマであるPB「ゾゾ」について話し始めた。「自分は背も低く手も足も短い。体形に合う服を探すのに苦労していた。ゾゾタウンが展開する65万点の商品からもなかなか見つからない。それがコンプレックスだった」。

「だったら自分で作ってしまえばいいと考えた。世界中に同じ悩みを抱えている人はきっとたくさんいる。S、M、Lという既製のサイズでなく一人一人の体形に合わせたブランドを作ってもいいだろうと。7、8年前のことだ」。

 PB「ゾゾ」がスローガンに掲げるのは「人が服に合わせる時代から、服が人に合わせる時代へ。」だ。

 ゾゾスーツと連動したIoT(モノのインターネット)やスマートファクトリーによる新しい生産の仕組みをつくり上げることで「S、M、Lという既製のサイズから、Y(ユアサイズ)へ」と転換しようというのだ。

 商品調達面で鍵になるのが生産プラットフォームの確立だ。「体形データとオンデマンドで(需要に応じて)生産機械を組み合わせることで、今までなかったものを信じられないスピードで生産しようとしている」という。

 その一例として島精機製作所のホールガーメント横編み機(縫い目のないニットウエアの立体編み上げ機)を挙げた。前澤社長は「3Dプリンターの洋服版」と表現し「1着40分で無縫製のニットができる。縫い代がないので肌にも優しい。このニットを秋口に発売したい」と明らかにした。

 これはIT系メディアには斬新に映ったようで、大きく取り上げる記事もあった。だがホールガーメントは世界で多くの企業に採用されており、決して新しい技術ではない。

 ちなみに「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは2016年10月に島精機製作所と合弁会社イノベーションファクトリーを設立し、ホールガーメント商品を製造し量産技術を蓄積。今年7月には両社は戦略的パートナーシップを結んでいる。

 この他にも自動裁断した生地を自動で縫製するなど、世界中から新しい機械を積極的に取り入れ「頂いた貴重な体形データを基に、今までにない商品を今までにないスピードで提供する」と前澤社長は言う。

「ゾゾ」のデニムやTシャツはパターンオーダーで、これまで蓄積した膨大なサイズから2Dパターンでデザインしておき、顧客から届いたデータに一番近いパターンを使って生産する、あるいはよく出るサイズは在庫を持ち、そこから提供する形になっている。

 一方、今回発表したメンズスーツは「完全カスタムスーツ」であり、ゾゾスーツで計測された体形データを基に「オーダーが入ってからパターンを引いて一から生産する」という。

サイズ問題を世界で解決し、新ビジネスを開拓

 日本以上に多様な体形を持つ海外市場にもPB「ゾゾ」を持って打って出る。まずは72カ国・地域で販売を開始する。スタートキャンペーンとして無償でジーンズとTシャツの10万セットを提供する。

「ファッションは人が笑顔になり外に出て人と会うきっかけになり、人と人とをつなぐ大事な役割を担うことが多い」と前澤社長。ECモールのゾゾタウンは「多くのブランドの洋服を販売することを通じて『どこのブランド?』『かわいいね』『かっこいいね』と知らないところでつながっていく」。

 一方のPBの「ゾゾ」では「コンプレックスがあって選ぶ選択肢もなかった人、服が嫌いと思ってしまった人にも持っていたいと思われるブランドになりたい」と言う。

「当社の企業理念は『世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。』だ。72の国と地域でもこの思いを伝えたい。20年たってやっとここまで来られたが、ここからが本当のスタートになる」とかぶとの緒を締める。

 Tシャツ(1200円)とジーンズ(3800円)から始まったPB「ゾゾ」は、ボタンダウンシャツ(3900円)に続き、7月3日からビジネススーツ(通常販売予定価格3万9900円)とドレスシャツ(同4900円)のセットで2万4800円で発売された。PBは今期中に10〜20型に拡充する予定だ。

「ゾゾ」の売上げ目標は初年度200億円(うち海外20億円)、2年目に800億円(同200億円)、3年目には2000億円(同800億円)と意欲的な数字を掲げる。これはアダストリアの企業売上高と同等で、ユナイテッドアローズやパルなどをはるかに上回る。

 年間購入者696万人というゾゾタウンでの顧客基盤もあるため、他のブランドよりも早いスピードで成長できる可能はある。だがあの全身タイツを喜々として着用し、オーダーしているのは男性客が多い。男性は一度気に入ると浮気をしないといわれるのでリピーター化することも考えられるが、逆にゾゾタウンの利用者の半数以上は女性客であることを考えると、早期に伸び悩む懸念もありそうだ。

グローバルでトップ10に、新規事業も続々

 同社は21年3月期を最終年度とした3カ年の中期経営計画で、商品取扱高7150億円、売上高3930億円、営業利益900億円を達成目標に掲げている。

 長期ビジョンとしては10年後(28年)にPBを展開するオンラインSPA(製造小売業)で世界ナンバーワン、グローバルアパレル企業トップ10入り、10年以内に株式の時価総額5兆円を目標に掲げる。

 もちろんゾゾタウンや古着の買い取りによる中古品ビジネス「ゾゾユーズド」、コーディネートサービス「ウエア」などの流通事業は今後も強化していく。

 だが今後はPBと並び、これまで蓄積したデータやプラットフォームを活用した新たなサービスやソリューションを提供する事業を一気に拡大する。新たなビジネスモデル・収益モデルを複数投入していくことになる。

 そのため研究開発にも力を入れている。子会社のスタートトゥデイテクノロジーズではグループに所属するエンジニア、デザイナー、アナリストなど制作に携わる全ての技術者を集め、サービス運用や技術開発を推進。その研究部門の一つである「スタートトゥデイリサーチ」ではイノベーション領域を専門に「ファッションを数値化」することにも取り組んでいる。

 また「ファッションを科学的に解明する」ことを目的に今年1月末にプロジェクトチームとしてスタートトゥデイ研究所を発足。グループが持つ大量のビッグデータとゾゾスーツで得られる体形データなどを活用して「服作り」や「サイズ」「似合う」をテーマに研究を行っている。

 そんな中から生まれた新事業の一つが、今年2月にスタートしたサブスクリプション型(商品が定期的に届く)の「おまかせ定期便」だ。初期登録された好みや体形に合わせて同社が洋服を選び、5〜10点の試着セットを配送。顧客は気に入った商品は残し、要らない商品を届いた段ボールに入れて返送する。配送料・返送料は無料で、定期便のサイクル(1カ月、2カ月、3カ月)も自由に選べる。「買物に行く時間がない」「店舗での買物が面倒」「自宅の手持ちのアイテムと合わせたい」「いつもの自分と違うものを試してみたい」といったニーズに応える。

 2つ目が今期からスタートした広告事業だ。広告事業は利益率が高く、しかも一度軌道に乗れば右肩上がりに伸びていくため、収益貢献度が高くなる。かつて買収したヴァリシーの元社長で当時「アイコン」で広告メディア事業も手掛けた経験のある金山裕樹スタートトゥデイテクノロジーズ代表取締役CIO(最高情報責任者)・スタートトゥデイ研究所プロジェクトリーダーが事業化を進めている。

 またBtoB(企業間取引)事業も本格化しており、初年度である今期は100億円、3年目で300億円を目指す。将来的にはゾゾタウンに匹敵するビジネス規模へと拡大したい考えだ。

 さらにこれまで蓄積してきたデータの開放・活用などについても研究している。図表にあるように同社には約1億件の購買データ、約3000万件のブランド公式商品データ、約1000万枚のコーディネートデータ、約2300万人のユーザー情報、約5万件の店舗情報、各種ランキング情報、年間約3000万件の物流関連データ、カスタマーサポート関連データなどがある。

 ファッションEC企業からファッションテック企業へ。新生ゾゾは従来のビジネスモデルの衣を脱ぎ捨て、大きく変わり始めた。

私たちが持つ情報資産(スタートトゥデイテクノロジーズHPより)

 

 

※本記事は『販売革新』2018年8月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

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