ウルグアイ代表GKムスレラは、フランス戦でグリーズマンのシュートをセーブミスしてしまった【写真:Getty Images】

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J2山口のGKコーチ・土肥洋一氏が“守護神目線”で語る、「ロシアW杯とGKの痛恨ミス」

 6月14日の開幕から熱戦が続くロシア・ワールドカップ(W杯)だが、守護神の信じられないようなミスも今大会を象徴する出来事の一つとなっている。

 スペイン代表GKダビド・デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)は、グループリーグ第1戦のポルトガル戦でクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)の真正面に飛んできたシュートをセーブミスし、失点を喫した。また、準々決勝のフランス戦では、ウルグアイ代表GKフェルナンド・ムスレラ(ガラタサライ)が、FWアントワーヌ・グリーズマン(アトレチコ・マドリード)の真正面のシュートをセーブミスし、決定的な2失点目を献上してしまった。

 名門クラブで活躍する名手が、なぜ真正面のシュートを止められなかったのか――。 2006年ドイツW杯の日本代表で、現在はJ2レノファ山口のGKコーチを務める土肥洋一氏が解説してくれた。

「グリーズマンのブレ球シュートに関して、ムスレラはシュートの瞬間に先にボールの軌道を読んでいた。そこから急にボールが軌道を変えた。そこで、ああいうミスが生まれてしまった。ムスレラほどのレベルのGKなら、弾けないボールではなかった。代表戦で100試合に出ているベテランでも技術的なミスは出る。(2失点目が)入ってしまえば試合が終わる、というプレッシャーもあったと思う」

 土肥氏は現地時間6日に行われたウルグアイ対フランス戦の、後半16分に生まれたグリーズマンの得点シーンについて、このように分析した。日本代表DF長友佑都とトルコ王者で同僚のムスレラは、クラブでも好セーブを連発する名手だが、英メディアからは「W杯史上最大のエラーの一つ」と酷評されるほどの失態となった。

「ボールの正面に入るのがGKとしてはセオリーですが、それ以上にシュートが速かった。そして(ウルグアイの)DFにも問題があった。あのタイミングで、グリーズマンにフリーで打たせてしまったのが敗着だったと思う」

無回転が生まれやすいと同時に、「しっかり曲げて落としている」ゴールも…

 今大会の公式試合球「テルスター18」のブレやすい特性も影響しているという。6枚のプレートが縫い目もなく接着された設計で、無回転のシュートが生まれやすくなっている。それと同時に土肥氏は、「この公式球になって、シュートレンジは広がっていると思う」と指摘している。

「今回のボールはGK泣かせと言えます。ちゃんとシュートが当たればブレる。ただ、これまでもブレる公式球はありましたし、これまでのW杯でもシュートはブレていた。GKのミスもありましたが、今回は重要なポイントでミスが失点につながっている印象が強い。その一方で、グループリーグ第1戦のスペイン戦でクリスティアーノ・ロナウドがFKから直接決めたゴールでは、しっかりと曲げて落としている」

 10年南アフリカW杯の公式試合球ジャブラニは、ボールの芯を捉えると無回転シュートが生まれた。逆にカーブをかけるようなシュートは難しかったが、今回のテルスター18はスピンをかけたスーパーゴールも生まれている。

 ベスト4進出を決めたフランス代表にはGKウーゴ・ロリス(トットナム)、ベルギー代表にはGKティボー・クルトワ(チェルシー)という名手を擁し、イングランド代表には今大会で一気に評価を高めた24歳GKジョーダン・ピックフォード(エバートン)、クロアチア代表には2試合連続のPK戦で好セーブを連発したダニエル・スバシッチ(モナコ)が輝きを放っている。

 優勝へ向けて守護神の活躍が不可欠となる一方、テルスター18の新たな犠牲者は生まれるのだろうか。(Football ZONE web編集部)