知らないと損することもたくさんあります(写真:CORA/PIXTA)

2年前に営業から経理へ異動になった男性Hさん(32歳)。Hさんの所属する経理部は業務に繁閑の差があり、毎年4〜6月が決算のため1年でいちばん忙しく、残業時間も月80時間ほど。でも、Hさんが不満なのは、経理部に異動後、社会保険料がガツンと高くなったことです。そのおかげで、年収が異動前とあまり変わらないのに、毎月の手取りが約2万円も下がってしまったのです。

社会保険料を実態に合わせて見直すことが可能に!?

年収は変わらないのに社会保険料がだいぶ違う? でも、法律の仕組みだから仕方がないと諦めているあなた。もしかしたら、今年から社会保険料を実態に合わせて見直すことができるかもしれません。

会社員の多くが加入している社会保険。知らないと損することもたくさんあります。そこで、今回は、現在そして将来の「おカネ」に関する知って得する社会保険の3つの制度について、お話ししたいと思います。

1.年間給与の平均で「標月」が計算してもらえる

健康保険や厚生年金保険など社会保険の仕組みを理解するために、とっても重要になるのが、標準報酬月額(以下、「標月」ひょうげつ)です。

社会保険の事務処理を簡略するために考えられた仕組みで、給与をおよそ1万円から6万円の幅で区分した等級のこと。健康保険は、月額139万円、厚生年金は62万円が上限になっています。

社会保険のあらゆる場面で使われる重要なキーワードで、自分の「標月」がわかれば保険料はもちろん給付なども計算できるため、覚えておくと損はないです(なお、詳しくは過去の記事「給与が減ったと思ったら『この表』を見よ!」をご覧ください)。

この標月ですが、原則4〜6月の給与をベースに毎年見直されます。そのため、たまたまこの時期が忙しく、残業代によりこの時期だけたまたま給与が高いと、残念ながら原則として1年間は社会保険料が高くなる仕組みになっているのです。そのため、Hさんは、経理部に異動後年収はあまり変わっていないのに、4〜6月の給与が高いため、「標月」が上がり、社会保険料が高くなってしまったということです。

ところで、この標月の決定方法ですが、実は、業種や職種の特性により、毎年4〜6月が繁忙期で、他の時期と比べて著しく変動しているような場合は、例外的に「年間給与の平均」で標月を決定してもらうことができるのをご存じでしょうか。

具体的には、 崢名錣諒法(4月〜6月で決定)で算出した標月」と「年間平均(前年7月〜当年6月)で算出した標月」に2等級以上の差があること、△海2等級以上の差が業務の性質上、例年発生することが見込まれること、H鑛欷閏圓その方法に同意していることが要件になっています。つまり、毎年春(4〜6月)が業種や職種の性質上、他の時季に比べて忙しければ、例外的に認められる可能性があるということです。

したがって、たとえば、4〜6月以外の月は残業もほとんどなく月給30万円程なのに、4〜6月は決算で毎年繁忙のため、残業代を含めて月給50万円ほどもらっている(年収420万円)といったケースでは、原則通りに計算されると標月は50万となり、社会保険料は、健康保険料が2万4750円(協会けんぽ東京支部平成30年度)、厚生年金保険料が4万5750円(平成30年度)になります。

一方、年間平均で計算される場合は、(30万円×9カ月+50万円×3カ月)÷12=35万円となるため、標月は36万円となり、実態に合った金額で決定してもらえるのです。

なお、社会保険料は、健康保険料が1万7820円(協会けんぽ東京支部平成30年度)、厚生年金保険料が3万2940円(平成30年度)になるので、年間平均を用いない場合と比べると、月に約2万円も差がつくことになります。

ただし、注意が必要なのは、標月が下がるということは、ケガや病気で会社を休んだ際の傷病手当金や出産した際の所得保障である出産手当金等の給付額、また将来の年金等も少なくなるということです。この点を十分理解したうえで手続きをする必要があります。この手続きは通常7月上旬に会社経由で健康保険組合、年金事務所に手続きをすることになりますので、気になった方は自社の担当者に相談してみてはいかがでしょうか。

年金は時短勤務になる前の標月で計算してもらえる制度

2.3歳未満のお子様がいる方は必見

3歳未満の子を養育する会社員が、短時間勤務の措置等により、給与が減って標月が下がった場合は、本来はその標月を基に保険料も将来の年金も計算されることになります。しかし、あまり知られていませんが、被保険者が申し出ることによって、将来の年金は短時間勤務になる前の標月で計算してもらえる制度があるのです。

たとえば、子どもが生まれる前の標月が50万円だった方が、短時間勤務などで標月が30万円に下がった場合、申し出ることによって、保険料を計算する際は標月30万円、将来の年金を計算する際は、従前の標月50万円として計算してもらえるのです。

具体的には、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」に戸籍抄本と住民票等の書類を添付して、会社経由で年金事務所に届出することになります。この制度にはデメリットがないため、標月が下がった方はぜひ手続きしておくことをお勧めします。なお、申し出れば2年間はさかのぼってくれるので、該当しそうな方は今すぐ確認してください。ちなみに、1度届出されている方であっても、転職すると再度転職先で出し直しが必要となるのでご注意ください。

3.月をまたいで入院すると損する?高額療養費の計算のからくり

病気やケガで入院した場合など、医療費の自己負担が高額になったときは、原則手続きをすることによって、一定額が「高額療養費」として返金されます。具体的には、標月によって区分された下記の表で計算された「自己負担限度額」を超えた金額が戻ってきます。


出所)全国健康保険協会HPより

たとえば、標月30万円の方が、7月1日〜7月15日(15日間)まで入院し、医療費全額(10割)が100万円、窓口での自己負担額(3割)が30万円だった場合。8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円になるので、30万-8万7430円=21万2570円が返金されることになります。

注意点は

ただ、「高額療養費」のポイントは月単位で計算されるところです。そのため、このポイントをきちんと押さえていなければ大きく損をしてしまう場合があります。たとえば、入院期間、トータルの自己負担額は上記ケースとまったく同じ場合でも、入院時期が7月25日〜8月6日(15日間)のように月をまたいでしまうケースだと、仮に7月、8月分とも自己負担額が15万円の場合は、7月、8月ともに8万100円+(50万円-26万7000円)×1%=8万2430円になるので、15万円-8万2430円=6万7570円がそれぞれの月に返金されます。

つまり、高額療養費の合計額は6万7570円×2か月=13万5140円になるため、トータルの自己負担額は変わらないのに、月をまたがなかったケースに21万2570円返金されるのと比べて、実に7万7430円も返金額が少なくなってしまうのです。

もちろん、病気やケガとなれば、入院や手術の日程を調整するのは難しいのですが、とりあえず「高額療養費は月単位」ということを頭の片隅に入れておくと損はありません。

ちなみに、手術や入院などあらかじめ医療費が高額になることがわかっている場合は、事前に健康保険組合等に手続きをして「限度額適用認定証」を受けておけば、病院の窓口では自己負担限度額までの支払いで済むようになります。最終的な負担額は変わりませんが、一旦大きな金額を用意する必要がなくなり、負担がかなり軽減されるので、あわせて押さえておくとよいでしょう。