アメリカのTV界に驚きをもたらした長寿番組「WWE ロウ」の25年

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25年間、全米でほぼ毎週生中継されているプロレス番組「WWE ロウ」は、”スポーツ・エンターテインメント”を掲げる世界最大のプロレス団体、WWEの看板番組だ。現地時間22日(日本時間23日AM10時より)、記念すべきロウ25周年大会が開催されることになり、同団体を代表するWWEスーパースターの一人であり、経営陣の一人でもあるトリプルHがインタビューに応じた。

強烈なプロレス番組が25年続いた秘密

他のプロレスファンと同様、トリプルHことポール・マイケル・レヴェックも「RAW(ロウ)」の1993年1月11日の第1回放送を見ていた。「今までに味わったことのない興奮と、斬新な生中継のフォーマットはプロレス業界を変革するな、と思ったのは覚えている」とWWEの伝説にして同社タレント部門兼ライブ・イベント部門兼ストーリー部門最高執行役員(この肩書は彼も「いかにももっともらしいね」と認めた)は語る。

それから四半世紀、レヴェックは次の月曜に生中継される「ロウ」の25周年大会を統括している。ニューヨークのマンハッタン・センターとブルックリンのバークレイズ・センターから、いつものように全米に午後8時にオンエアされる。

―視聴者の立場で見ると、今回の25周年記念番組を取り巻く熱気は1000回記念番組のときより濃いように感じられます。あなた自身はどう感じてますか?

トリプルH 理由はどうであれ、一つのTVシリーズの中で目まぐるしいストーリー展開、さまざまなキャラクターの登場など、過去にいろいろあったわけだけど、今なおケーブルテレビのネットワークにおいてナンバーワンのドル箱であり続ける。この現実を見て「マジ?」と思わない方がおかしいよ。「ロウ」が始まった頃にはまだ物心もついてなかったような選手だっているんだからね。オフィスのスタッフや選手たちのエネルギーもバッチリみなぎってる。

―どんな準備をしましたか? 想像もつかないほど大変そうですが。

トリプルH 25年間の記憶に残る数々の瞬間、数々のキャラクターを取り上げて、それを3時間の二元生中継の「ロウ」の番組枠に落とし込んでいく。この前、みんなにインタビューをして、何があったのかを一覧表にしてみた。そして自分でも思い出そうとしてみたんだ。すると、さまざまな瞬間が数え切れないほど浮かび上がってきた。「こいつはかつてなくクールだったし、あのシーンは過去最高にヤバかったし、それらを上回るインパクトがあの試合にはあった」ってな具合にね。そのなかには自分が参加していたのも幾つかあったよ。すべてを紹介することはできないけど、番組はとてつもないことになるよ。

―あなたは選手たちの期待とファンの期待のバランスをどう取りますか?

トリプルH 選手たちはこれからのことに期待しているし、そこにこそWWEユニバースが望み求めているものがあるんだ。あと忘れてはいけないのは、これは選手のためのショーであるってこと。25年間続いた秘密はそこにある。ファンという基盤があるのも、すべては「ロウ」がきっかけだ。まずは選手自身が主体的になって楽しんでやらないと意味がない。

ショーン・マイケルズは「ロウ」の象徴の一人

―既に亡くなってしまった「ロウ」の仲間たちもいます。この場にあのみんなが揃わないのは、ちょっとほろ苦い感じがしませんか?

トリプルH そうだね。本当はこの場に参加してほしかったけど、残念ながら亡くなってしまった人物のリストを作ったとしたら、本当に長大なものになる。できれば、みんなで25周年を祝いたかったと思う。でも祝祭というものは、今生きている者のために行うものだ。今ここにいるみんなが成し遂げたことのためにエキサイトするんだよ。亡くなった人たちの分も背負ってね。

―「ロウ」が輩出した選手は、いずれも長く愛され続けますよね。

トリプルH ショーン・マイケルズはその筆頭だね。ザ・ミズもショーンが自分にとってどれだけのヒーローであったかを語っている。今ではザ・ミズはショーンと仕事をしていて、一緒に映画も作っているし、共にリングの上にも立っている。まったく信じられないよ。他の何かのキャラクターでここまでの長寿を保っているものがあったら教えてほしいくらいだ。

―「ロウ」が長期間続いていることに関して、最後に何か言っておきたいことはありますか?

トリプルH WWEはこれまで一つのカテゴリーに括られなかった。「これはスポーツなのか? 映画なのか? テレビショーなのか?」ってね。どう位置付けていいか分からないから、ずっと見過ごされてきた。誰かがWWEどう分析しようと構わない。25年間、毎週ほぼ生中継でTV放送されてきた。そこに登場したコンテンツやキャラクターが、ある意味でさまざまな人々の生き方を形作ってきたんだ。毎日、本当にたくさんの同世代のファンがこう言ってくるんだ。「やあ、僕の少年時代をクールにしてくれて本当にありがとう」とね。俺が少年だったときはリック・フレアーやダスティ・ローデスがいた。だからファンの言ってることはよく分かる。それにここまでの長寿番組になって、今さら突然終わってしまう可能性もない。「そうだ、これこそが『ロウ』だぜ!」っていうふうに、我々がこれを続けているんだ。こちらが自慢しようとしまいと、これがどれほど信じがたいような達成感かは、誰もが認めざるを得ないさ。

―では、祝祭の終わった翌朝には「大丈夫、今度はあと25年どうこれを続けるかをみんなで考えねば」となるんでしょうか?

トリプルH おいおい、それは毎週の話だよ。1年前、ビンス・マクマホンがレッスルマニアの現場にいたとき、全試合が終わると彼はヘッドセットを外した後、深い息をして「今回はよかった」となった。すると我々のライターが彼のところに歩み寄って翌日の月曜日の「ロウ」のためのスクリプトを手渡したんだ。彼はこう言ったね。「これが俺のオフなのか? まあいい、さあやろう!」って。つまりはそれが俺たちの仕事だ。火曜の朝に目が覚めたら、それが次の25年の始まりだ。