ドラえもんのひみつ道具として人気の「スモールライト」を使ってゾウを手のひらサイズにするとどうなるか?を科学的に考えると、答えは「即座に凍えて死んでしまう」です。反対に、「ビッグライト」でネズミを大きくすると、すぐに体内から大量の熱を発してやはり即座に死んでしまうとのこと。この謎を解く「動物の大きさと細胞の活動量」を解説するムービー「How to Make an Elephant Explode with Science」が公開されています。

How to Make an Elephant Explode with Science - The Size of Life 2 - YouTube

大きな動物の代表であるゾウを……



ネズミのサイズに小さくし……



ネズミをゾウのサイズに大きくするとどうなるでしょうか。



ゾウはすぐに冷くなって死に……



逆にネズミは熱くなって……



爆発して死にます。



動物は自然環境に適するような体の構造を持っています。



これは、別の環境では生きながらえられないということ。そこでは「体のサイズ」という要素が重要になってきます。



どんな動物も「細胞」からできています。



実は、細胞自体はどんな動物でも同じような構造をしています。



シロナガスクジラの細胞がハチドリの細胞よりもずっと大きい……ということはありません。



ただ、シロナガスクジラの方がはるかに多くの細胞でできているというだけ。



細胞内の各組織はすべてエネルギーを消費します。



エネルギーは食物と酸素が化学的に反応することで生み出されます。



エネルギーを作り出す上で重要な働きをするのが細胞内の「ミトコンドリア」



ミトコンドリアはATPと呼ばれる使いやすいエネルギーを生み出します。



ミトコンドリアは蒸気機関のようなもので、エネルギーを生み出すときに発熱します。



人間の細胞膜はセ氏50度まで高まるほどです。



細胞内に最大で2000個も含まれるミトコンドリアが発する熱をどのように処理するかというのは、動物が生きるために重要な問題です。



体の大きな動物は体の小さな動物よりもたくさんの細胞があるため、体内の細胞で発生する熱は、体の大きさに応じて大きくなります。



動物の大きさに関係する要素は、「体長(長さ)」と……



「表面積」と……



臓器や骨などの体内の「体積(容積)」の3つ。



それぞれの動物は、体内で発生する熱と体外へ放出する熱のバランスをうまくとっています。



もしも、ネズミの体が大きくなると、体内で発生する熱は放出できる熱をはるかに上回ることになってしまいます。



わかりやすいように、小さな1センチメートル四方の立方体で考えてみましょう。



もしも、長さが2倍になると……



表面積は2倍ではなく4倍になります。



体積は8倍になります。



表面積が長さの2乗に比例し、体積が長さの3乗に比例することが、動物の大きさを決めるのに問題となってきます。



つまり、体が大きな動物は、多くの細胞で発生する熱を排熱することが難しくなるということ。



小さな動物であるネズミの大きさを60倍にすると……



表面積は3600倍になり……



体積は21万6000倍になります。



体積アップほど表面積が大きくならないため、排熱が追いつきません。



そのため、体内で発生した熱がたまり……



爆発する、というわけです。



では、巨大なサイズのゾウはどやって体内で発生する熱を処理しているのでしょうか?



人間よりもはるかに表面積の大きな耳で排熱しているのは確かです。しかし、これは、それほど排熱に有効ではありません。



ゾウの細胞は、ネズミの細胞に比べると、活動の速度を大きく落として熱問題に対応しています。



細胞の活動量は、体の大きさに反比例します。



グラフの縮尺は正確ではありませんが、体のサイズが大きくなると劇的に代謝量は減ります。



つまり、ゾウは代謝の少ない、活動量の小さい「冷たい細胞」で構成されているというわけです。



ゾウの細胞ではミトコンドリアもゆっくり活動しています。



ゾウとは違い、ミーアキャットのような体の小さな動物は、まったく逆で活動的な細胞を持ちます。



体が小さいため、熱の排出・発生の割合で言えば、表面積は体積に比べて相対的に大きい状態。



熱はすぐに奪われて、体が冷えやすい状態です。



極端な例として、世界最小のネズミであるコビトジャコウネズミを考えてみましょう。



コビトジャコウネズミはミッキーマウスというよりは、ソニックに近い生き物かもしれません。



体長4センチメートルのコビトジャコウネズミ。



体重は1.8グラムで、クリップほどの重さしかありません。



コビトジャコウネズミは小さな体長ゆえに、すぐに冷たくなってしまいます。



そこで、体内の細胞は熱を活発に生み出すことで、体の冷えを補います。



心拍数は1分間に1200回、呼吸数は1分間に800回に及びます。



細胞を活発に動かすために、食事を大量に採り続けます。



食事間隔が4時間あくと死んでしまうレベル。



アフリカゾウが1日に体重の4%のエサを食べるのに対して……



コビトジャコウネズミはなんと体重の2倍のエサを食べます。



人間が1日に2000個のビッグマックを食べることを想像すれば、コビトジャコウネズミの食事量のすさまじさがわかるはず。



小さなコビトジャコウネズミと大きなアフリカゾウの食事量を比較すれば、細胞の活動量の差がよくわかります。



そのため、もしもゾウの細胞をネズミのような速さで代謝させると……



爆発して死にます。



より正確には、爆発する前に細胞が分解を始め熱を出すこともできなくなり溶けてしまいます。



大きな動物と小さな動物の代謝速度は異なるわけですが、活動量が変化する場合もあります。それは、お腹の中にいる赤ちゃん。



体内にいる赤ちゃんは、お母さんの一部。細胞の活動ペースもお母さんと一緒。



しかし、赤ちゃんは生まれるとすぐに……



独自の細胞活動を開始します。



生後36時間で代謝のペースは、似たような大きさのほ乳類と同じ速さに達します。



赤ちゃんは体の大きさに応じて代謝の速度を変えて成長します。



大きな動物と小さな動物では、代謝の速度という点でまったく異なりますが、共通することもあります。



それは「心臓を打つ回数」



大きな動物と小さな動物で長生きの差はありますが、長さに反比例するように心拍数は下がります。



そして、ほ乳類はみな生涯に約10億回、心臓を打つことがわかっています。



巨大なゾウはゆっくりと心臓が鼓動し、小さなコビトジャコウネズミはハイテンポで心臓が鼓動します。



大きさのまったく違う動物でも、生涯に心臓を打つ回数だけは同じという点では共通しています。