トルコ、10億ドルの「植毛ビジネス」の舞台裏

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世界で拡大しているヘアケア市場と言われるが、そのなかでも1番の注目は「植毛」だ。写真家エマニュエル・サトリは「植毛大国」トルコで、その手術現場へ飛び込み、毛髪に悩みを抱える男性たちの「ありのままの姿」を追った。

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毛髪移植は、トルコにおいて10億ドルのビッグビジネスだ。イスタンブールだけで約350カ所のクリニックがあり、約5,000人がより自然に近い髪を手にいれるために、毎月この国を訪れる。

写真家エマニュエル・サトリは、自身のフォトシリーズ「トルコの植毛師」のなかで、その奇妙な世界を描き出している。

サトリが手術室に覗き入れば、そこでは明るいライトが患者の頭皮を照らしている。また一歩トルコの市内の通りに出れば、手術を終えた患者が家族を観光案内している。

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1/14医師(右)とアラビア語ートルコ語の通訳(左)が患者エーサン・アルバラシ(中央)の頭部をチェックしているところ。 この患者はバーレーンから来た。

2/14医師と看護師は、手術前に患者の頭の毛を剃る。

3/142人の看護師が(後頭部や側頭部といった)薄毛になりにくい部位から、患者の毛包を約4,000個取得する。

4/14毛根を取得している写真をチェックするイラクから来たアリ・アドナン・カシムさん。頭上に書かれた線は、それぞれの位置に移植される毛根の数が書かれている。

5/14患者の頭に多血小板血漿(PRP)を注入する医師。PRPは、毛包の成長を刺激することができる濃縮血漿である。

6/14看護師が患者の薄毛の部位に毛包を移植している。移植先の穴は前もってくり抜く処置がされており、そこに1つひとつ移植される。手術時間は約8-10時間。

7/14手術後のエーサン・アルバラシさん。1年前にイスタンブールで毛髪移植手術を受けたが、そのときはうまくいかなかったという。

8/14看護師が患者の頭皮から取得した毛包を患者自身へ自家移植する。

9/14患者から採取した約4,000個の移植片を並べているところ。

10/14通訳は術後のシャンプーする様子を動画撮影し、患者は帰宅後このヴィデオを見て「自宅でのケア」を学ぶという。

11/14保湿ローションを塗っているところ。術後2日で初めてクリニックでシャンプーを行う。

12/14手術後、医師の診察を待つ患者たち。

13/14イスタンブール市内中心部を歩く、最近移植手術を受けたと思われる男性。

14/14イスタンブールのボスポラス海峡の夜景を楽しむ患者2人を撮影。

「包帯を頭に巻いた男性たちが博物館を訪れていたり、通りを歩いていたり、レストランで食事をする姿は、よく目にする普通の光景ですよ」とサトリは言う。「彼らはひとりだったり、奥さんや子どもたちと一緒だったり、あるいは手術を受けた友達と一緒だったりしますね。とても不思議で興味深い光景なんです」

FUE(Follicular Unit Extraction)法と呼ばれる後頭部などから毛根をくり抜いて移植する手術費用は、トルコで1,700〜2,000ドルだ 。アメリカでの15,000〜25,000ドルと比べれば格段にお買い得、だ。

FOE法は比較的容易な手法で、外科医が毛髪がより太い後頭部から約4,000個の毛包を採取し、(植毛したい)部分につくった小さな切り口にそれらを移植するのだ。

2015年初め、サトリはイスタンブールを訪れこの植毛手術について知り、そして学んだ。頭の周りにガーゼを巻いた男性たちを頻繁に目にしたサトリは、彼らに何が起ったのか不思議に思ったからだ。ある友人が、彼らはただ単に毛髪をお得に購入しているだけ、と話してくれた。トルコのクリニックは、家賃や給料などの間接費が非常に安いので、安価に手術を提供することができる、と説明してくれた。

クリニックには毎月数千人の患者が訪れるが、その多くは湾岸地域からやって来る。「トルコが毛髪移植で世界トップを走り、その患者の多くがアラブ諸国からやって来ると知ったとき、どうしてそんなに多くの人が外見、特に自分の薄毛を気にするのかと思ったのです。その理由を知るために、この人たちに会って、それを理解したかったんです」と、サトリは言う。

サトリは、医者たちにも数人会った。医師のほとんどはサトリのプロジェクトをクリニックのいい宣伝チャンスと捉え、患者に写真を撮られても構わないか訊ねてくれる医師さえいた。

もちろん、多くの患者は撮影を拒否した。「自分の外見に不満があって植毛手術でそれを変えたいと思っている人にとっては、それを見せるのは簡単なことではないからね。特に知り合いに対しては」と、サトリは語る。

15年初夏、4カ所のクリニックを歩き回ったサトリ。彼はニコンの35mmレンズ付きD800カメラを使用し、よりワイドな撮影には24mmレンズを使用した。

医者の診察を待っている姿や看護師に頭髪を洗髪してもらったり、手術台の上で落ち着いて寝そべっている患者たち…。彼の写真は驚くほど「現場に密着した」ストーリーだ。サトリが撮影したボスポラス海峡をフェリーで周遊したりする友達のような2人(上記ギャラリー、14番目の写真)のように、このチャンスを生かしてトルコの街の観光さえする人も多いのだ。

この植毛ビジネスは、うまく軌道に乗ってきているようだ。薄毛の面積が大きく頭部の状態によって、1度に植毛することができない場合は、多くの男性たちが2度ならず、3度、4度とここトルコに舞い戻ってくるためだ。

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