大阪の読売テレビが制作する情報バラエティ「秘密のケンミンSHOW」がスタートしたのは2007年10月のこと。
放送開始当初は「いつかネタ切れになるんじゃないか」と思っていた視聴者も多かっただろうが、7年6カ月も続いているということは、日本の国土が多様性に満ちていることの証しだろう。
2015年1月22日放送の「大阪スペシャル」は関西地方で25%に迫る視聴率を記録した。

そんな人気番組に地方自治体関係者の視線も熱い。番組で県産品が取り上げられることを、自治体や観光連盟等の公式サイトで予告する県や市もあるほどだ。
群馬県議会で2013年10月3日に開催された「観光振興対策特別委員会」では、ぐんま総合情報センター所長が次のように報告している。

「テレビ番組の誘致であるが、『秘密のケンミンショー』で2週間転勤ドラマで扱ってもらうことが決まった」

わざわざ議会で報告がされるぐらいなのだから、放送される内容に間違いはなさそうに思える。

ところが、放送中から「強調しすぎ」「自県民だけどそんなの知らない」「県全域の風習ではない」といった声がツイッターなどに投稿されることは珍しくない。

2ちゃんねるのスレッド「ケンミンショーでねーわと思った自分の地元の情報」には次の書き込みがある。

「大阪民はバーンってやったら撃たれるマネをするという風潮」

投稿主は「カメラがあるからやってあげるだけで、何もない素人にやられたら無視に決まってるやろ。これはどこの地方もいっしょちゃうか?」と結んでいる。

大阪県民にバーンって言うと全員「うっ」ってリアクションをする?(JGSDFさん撮影の「9mm拳銃」、Flickrより)

これに対する怒りのツイートを紹介しよう。

一方でこんなご意見も。

次のコメントは滋賀県民のご意見。

「サラダパンが滋賀で大人気という風潮。一回も食ったことないわ」

番組で紹介されたのは、長浜市にあるパン屋「つるやパン」の名物パン。たくあんをマヨネーズであえた「たくあん漬け」がコッペパンに使われている。
発売されたのは1957年だが、2000年代にマスコミで取り上げられるようになってから、多くの県民が知るところとなった。

ある意味当たっていて、ある意味マッチポンプといえる。

「長野県民は全員虫を喰っている」

長野出身以外の日本人はみんなそう思っている節がある。しかしツイッターをチェックするとそれに対する反論が大量にヒットする。流通網が整備された現在、生理的に受けつけないのに「貴重な動物性タンパク源だから」と無理して食べる人はそういない。
「イナゴとか食えるわけねーだろ」と同意する書き込みもあった。

ちなみに東京都中央区にあるアンテナショップ「銀座NAGANO」では昆虫の缶詰が堂々売られている。店が出しているフリーマガジン「つなぐ」VOL.6に掲載されているのは、ハチミツ専門店が発売している「おらん家の蜂の子」。この件についてはやっぱり......。


フリーマガジン「つなぐ」VOL.6に掲載されている「まつもとのおみやげ」(編集部撮影)

埼玉「だうどんとか言ったことねえよ。普通に山田うどんって言うわ」

所沢市に本社のある外食チェーン山田うどんは、埼玉県内に80店舗以上を展開する。埼玉出身の筆者にとってもなじみ深い存在だが、だうどんは初耳だ。

埼玉出身の筆者の印象では、この番組で「だうどん」が紹介されるまで、ほとんどの県民が知らなかったのではないか。

「愛知県民は何にでも味噌かけるっていうのが一番クソ情報やな」

無邪気な視聴者が見れば「愛知だけにあり得る!」と受け入れてしまいそうだが、地域と人による。

それでもみんな見ている人気番組

「ネタ切れ感が酷い。県じゃなくて1地域のネタに走ってる」「ゲストの芸能人もさも県民全体が知ってるかのように便乗するからな」と、番組の構成や演出に対する批判は少なくない。それでも見てしまう魔力がこの番組にはある。
次のコメントは大多数の視聴者も同意するに違いない。

「他県見てるときのワイ『へぇ〜』」
「出身県見てるときのワイ『は?ねーわなんやこのクソ番組』」