巨人が″ダメ″な外国人選手ばかりを獲得してしまう理由

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ここ2年間の巨人の外国人選手を振り返ってみると、ポレダ、マイコラス、セペダなどなんとも言いがたく微妙な選手たちが集まっている。しかし、巨人に関していえば数年前に入団したロペスやマシソンのような"当たり"といえる外国人の方が珍しい。どんなにシーズン前にどんなに期待されていても成績を残せず、祖国へ帰っていく"ダメ"な外国人選手が大半だ。

これは巨人に限った話ではないが、メジャーリーグで好成績を残して鳴り物入りで入団した選手でも、日本では散々なケースが多々ある。なんでこんなことが起きてしまうのだろうか。
そんな野球ファンの疑問を、長年に渡ってヤクルトの国際スカウトを務めた中島氏が「プロ野球 最強の助っ人論」(著:中島 国章/講談社現代新書)で答えている。野球ファンの間では、ヤクルトにはペタジー二やラミレスなど優秀な外国人選手が多いことがよく知られている。中島氏はそんな選手たち獲得の立役者だ。

【名のあるメジャーリーガーでも日本で通用しない理由】


まず中島氏は「選手の名前だけで判断して獲得することは怖い。あくまでアメリカでの成績は目安程度」と語っている。過去の巨人を振り返ってみると、メジャーのオールスターに出場し、1シーズンに40本以上のHRを打った経験もあるジョンソン(75〜76)やバーフィールド(1993)を獲得したがやはり失敗に終わった。
このようにメジャーで名のある選手が活躍できないのは、米での成績におごって日本を舐めていたり、高いプライドが邪魔したりするかららしい。確かに先述のジョンソンは練習を強要されてコーチとトラブルになったことがある。
このような失敗を防ぐためにも、評判だけで選手を獲得する「見ず買い」をせずに実際にプレーしている姿を見る必要があるのだ。

【ではどんな外国人選手が日本で通用するの?】


では、実際にはどんな選手が日本野球で活躍できるのだろうか。勿論、打者と投手でそれぞれ技術的にチェックすべき点がある(例えば打者はステップ幅が小さいかどうか、広角に打てるどうか。投手は日本人にない角度や球種を持っているか、決め球があるかなど)。しかし、これらは同じ外国人選手といえども選手のスタイルによってかなり基準が異なる。そこで、ここでは投手と野手共通で挙げられる「成功する要因」を巨人の外国人選手の事例とともに紹介していこう。

■性格が良い
野球の技術はもちろんのこと、性格の良さも重要な指標となる。性格が良くないとトラブルを起こして周りにも悪影響を与えることがあるからだ。2011年に巨人が獲得したライアル(2011)はその典型例。同僚のラミレスから何度も親身なアドバイスを受けても聞き入れず凡打の山を築き、仕舞いにはそのラミレスとも犬猿の仲になってしまった。対してラミレス(08〜11)は「ゲッツ」などのパフォーマンスからも分かる通り、かなりフレンドリーで良い性格の持ち主の性格であり、成績面でも文句の付けようがない。性格が良ければより早くチームに馴染むことができ、チームにも本人にも良い影響を与えるのだ。

■ハングリーである
どんなにアメリカで成績を残していても、日本で努力を怠るのは問題外。本当に活躍する選手は貪欲に日本でも努力を惜しまない。この点において、なまじアメリカで実績があるよりも、マイナー経験が長い外国人選手の方が日本で成功することがある。マイナー経験の長い選手はいつしかメジャーの地に立ちたいというハングリー精神の塊であり、そこでの経験が日本でのひたむきな努力に繋がっていくからだ。
確かに、巨人歴代最高の外国人投手とも呼ばれるガルベス(96〜00)はアメリカでのほとんどの期間をマイナーで過ごしていたし、そもそも巨人にはテスト生として入団した。しかし、そんなハングリー精神に満ち足りたガルベスは最多勝を獲得するなど大活躍した。またこのガルベスは、審判に対して剛速球を投げつけるなど試合中の態度がかなり悪かったことで有名だが、試合を離れると紳士的であり、若手に対して丁寧に自身の技術を教えたりする一面を持っている。

■複数年に渡って成績が安定
1年だけ爆発的に活躍した選手は当てにならず、2〜3年ほどの期間で安定的に成績を残すことができている選手ではないと活躍できる見込みが少ない。巨人も例によってこの点を軽視して痛い目にあっている。巨人は1996年にマント(1996)を獲得。彼は前年、オリオールズで4打席連続HR(メジャーで史上4人目の快挙)など活躍した。しかし、巨人でのプレーは散々でありこの年の5月には早くも解雇となった。この選手に関してはナベツネこと渡邉恒雄オーナーが「クスリとマントは逆から読んだらいけない」という名言(迷言?)を残したことでも知られている。

■私生活で問題が無い
グラウンド上以外の部分でもチェックする必要がある。それは私生活に問題が無いかどうかだ。私生活に問題があると、いつかグラウンド上でのプレーにも悪影響を及ぼすことは自明だからである。
例えば1995年に巨人はヤクルトで活躍していたハウエル(1995)を獲得した。ヤクルト時代は活躍していたのだが、巨人に移籍する前年くらいから離婚問題が生じている状態だった。そして結局、このハウエルは巨人に移籍したこの年に離婚訴訟が本格化し、シーズン途中で自由契約となってしまった。
また、ルイス・ゴンザレス(07〜08)はドーピング違反により、08年に巨人を自由契約となっている。薬物問題にうるさくなっている最近では、このような薬物使用経験があるか否かについても細かくチェックする必要があるのだ。

以上が成功する外国人を見極めるための要素である。巨人はネームバリューを重視したりと、プレー面や内面などの部分をしっかりと調査しないために活躍できない外国人を獲ってしまうことが分かる。みなさんも新しい外国人選手が来たときの参考材料にしてみてはいかかだろうか。ただ、巨人に関していうとやはり毎年"ダメ"な外国人選手を獲得してもらい、他チームのファンを楽しませて欲しいという気がしないでもない。
(さのゆう)