「ワシントン・カーネギー平和財団」YouTubeチャンネルより

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 米ウェンディ・シャーマン国務部政務次官が、中韓の歴史問題への態度に対して自制を求めるという内容の演説を行った。去る2月27日、ワシントン・カーネギー平和財団で2次世界大戦終戦70周年をむかえる東北アジアをテーマとした演説において言及したもの。かなり異例の内容であると言える。

 シャーマン次官は、まず第二次世界大戦中に海兵隊員だった父親がソロモン諸島・ガダルカナル島の激戦で負傷したことを取り上げ、「誰もそのときのトラウマを過小評価してはならない」と述べた。

 さらに、シャーマン次官は「こうした体験が、二度と戦争を繰り返してはいけないという願いを作り上げた」とし、父の体験もまたそのなかの一つであると強調した。

「外交問題を国内政治に利用している」と批判

 その演説のなかで、シャーマン次官は中国が尖閣列島領有権を声高に主張していることや、韓国が従軍慰安婦問題を取り上げているいわゆる「歴史教科書問題」、日本海を「東海」と言い換えさせようとする動きなどについて、「気持ちは分からないでもないが、もどかしい」と不満を表明した。

 さらに、「民族主義的な反日感情を政治に利用する挑発行為は国民の歓心を買うことはできても、和解や進展ではなく混乱を招くだけだ」として、韓国と中国の指導者が歴史問題を国内政治に利用していることに対し厳しく批判したのだ。

 韓国の日刊紙『ハンギョレ新聞』によると、同じ演説でシャーマン次官は、歴史問題について日本に反省と謝罪を促す発言はしなかったという。

 今回のシャーマン次官の発言とアメリカ政府の微妙な態度の変化には、歴史問題による日韓、日中の対立によって、中国政府に対する日米韓3国間の安全保障協力が弱められているとアメリカ側が感じ、危機感を募らせているということが背景にあるようだ。

次官の発言にネットユーザーが強く反発も…

 この、韓国の反日的態度を牽制する発言がよほど気に入らなかったのか、ネットへの韓国の一般市民の書き込みには強い反発が見られた。

「日韓、日中関係は微妙な問題なので慎重な態度を取っただけではないかと思う。日本は何度も謝ったと主張するが、真心が感じられない。ナチスと決別したドイツを見習うべきだ」

「歴史をまともに知らないアメリカ人が日本人の味方をしている」
「技術開発や特許で日本に打ち勝てば、日本の側から自然に頭を下げてくるだろう」

 さらに、3月4日には実際に韓国内の保守系団体がアメリカ大使館近くで抗議集会を開き、「歴史問題で日本に免罪符を与えたアメリカもまた反省せよ」と気勢を上げていた。

 その一方で、朴槿恵大統領の日本への強硬な態度は日本人観光客の減少、キムチ輸出高の減少という形で韓国経済に暗い影を落としている。ネットではなく、リアル社会の市民たちからは「もう反日感情を政治利用するのは止めてほしい」という意見も出ている。シャーマン次官の発言は、韓国内のそうした“声なき声”の代弁になっている側面もある。

(取材・文/山田俊英)