お互いの頭をなであう、本田と香川  (撮影:二宮渉/フォート・キシモト)

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【森雅史の視点 / チームの仕上げに向かう最初の試合で、ザックジャパンはこれまでと同じ弱点をさらけ出した。だがそれは幸いではないか】

悪夢が蘇ろうとしている。

8月14日、ウルグアイをホームに迎えた日本代表は2-4の完敗を喫した。ワールドカップ本大会に向けた「新しいステージのスタート」と位置づけられた試合で、日本は厳しい現実を突きつけられることになった。

失点はどれも呆気なかった。27分、自分たちのスローインからボールを奪われると一気にルイス・スアレスに抜け出される。吉田麻也今野泰幸がマークに行くが、2人の間にパスを通され、ディエゴ・フォルランがあっさりと決めた。

その2分後、フォルランがFKを直接沈めて0-2。さらにウルグアイが攻め立てたが、日本は何とか踏みとどまった。ところが52分、吉田がクリアしたボールがそのままスアレスにわたり、トドメとなる3点目を叩き込まれる。

54分、香川真司がこぼれ球を押し込んで一矢を報いるものの、日本がウルグアイの守備ラインを破ったのと同じ形――守備ラインの裏へのロビング――からすぐに返されて1-4。72分に本田圭佑がFKを決めたが、結局はそのまま試合を終えることになった。

1失点目は、それまでのプレーで縦に抜け出すスピードと、深い切り返しという2つの武器を見せて吉田と今野を引きつけたスアレスのほうが一枚上手だったと言えるだろう。2失点目はコースを最後まで読ませなかったフォルランを褒めるべきだ。

だが、ザッケローニ・ジャパンの最大の弱点である後半立ち上がりの失点については改善が進んでいない。監督の初戦となった2010年10月8日のアルゼンチン戦から今年のコンフェデレーションズカップまでで、日本代表は総失点の約三分の一が後半スタートから60分までなのだ。この日も同じ時間帯に2失点。これまでと同じ欠点を露呈してしまったと言えるだろう。

また、2点は奪ったが攻撃の課題も明らかになった。たとえば、豊田陽平を起用したものの、豊田が得意とするアーリークロスは1本も上がらない。中央突破ばかりが続いたのは、戦術的幅の狭さのせいだ。

ザッケローニ監督はメンバー発表記者会見で、今後のポイントは3つ。
「チームのバランスをいかに高めるか」
「チームの引き出しをいかに増やすか」
「チームとしてのプレーのバリエーションをいかに増やすか」

今後強化したい3つのポイントは3つ。
「個の成長を促す」
「技術面の連係を高める」
「プレーの精度を高める」
と述べたが、この試合ではどれも見ることができなかった。

ザッケローニ監督は日本代表を率いてここまで素晴らしい戦績を残してきた。狙いも起用も明確で、ほとんど負けていないということから、ワールドカップ前の岡田武史監督とは違い、厳しい批判が続いたことはない。

だが、そのような状況で日本は一度悪夢を見ている。2006年、それまでほぼ批判されることのなかったジーコ監督だったが、いざワールドカップが始まると1分2敗とあっさり敗退してしまったのだ。

幸い、「新しいステージ」はまだ始まったばかり。自分たちの実力をはっきり認識し、進歩するための苦い薬になった試合だと位置づければ、改善できる時間は十分になる。そうでなければ、来年再び悪夢がやってきそうだ。