18日、新宿の明治安田生命ホールで、「ボクたちの交換日記」の脚本・監督を務めた内村光良と長澤まさみによるトークイベントが行われた。
「ボクたちの交換日記」3月23日全国ロードショー
配給:ショーゲート (C)2013「ボクたちの交換日記」製作委員会

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「フラッシュ半端ないっすねぇ。おっかしいなぁ、伊藤淳史と小出恵介と一緒に(舞台挨拶)やったときはこんなに集まってなかったんだけど……」

18日、新宿の明治安田生命ホールで映画「ボクたちの交換日記」の試写会とトークイベントが行われた。
登壇したのは脚本・監督を務めたウッチャンこと内村光良と、この日のフラッシュを独占していた長澤まさみだ。
監督・内村が冒頭の愚痴をこぼすと、ようやくフラッシュが向けられた。
「お、フラッシュ、ありがとうございます……でも、どうせ“抜き”で使うんでしょ!」

多くのお笑い芸人が「涙した」と語ったベストセラー小説「芸人交換日記 〜イエローハーツの物語〜」(鈴木おさむ著/太田出版刊)。最近では、鈴木おさむの妻・森三中の大島とキングコング西野の舌戦の元になっていることでも話題を集めている。
芸人を一番間近で見てきた放送作家・鈴木おさむだからこそ書けた「お笑い芸人たちの青春」の光と影を、お笑いの世界に身をおき自らも経験してきた内村光良が脚本・監督を務め、温かくもリアルに描いたのが映画「ボクたちの交換日記」になる。
原作では漫才コンビ「イエローハーツ」だった設定が、映画ではお笑いコンビ「房総スイマーズ」となり、「漫才」も「コント」に置き換えられたところに、ウッチャンナンチャン・内村光良のこだわりがうかがえる。劇中で演じられるコントの台本も、すべてコント職人・ウッチャンの書き下ろしだという。

架空の売れないお笑いコンビ「房総スイマーズ」の甲本と田中を演じたのが、ダブル主演となる小出恵介(甲本)と伊藤淳史(田中)。
長澤まさみはその小出恵介の妻役として、昼は薬剤師、夜はキャバクラで働く女性・久美を演じた。
長澤の起用は、内村たっての希望だったという。

内村:ダメもとでオファーを出したんですが、OKもらったって聞いたときは、ホントにガッツポーズしましたから。で、急いで台詞をすごく増やしましたから!

2人のトークイベントはここから、内村と長澤の「いかに自分は内村に(長澤に)恋いこがれていたか」という「好き」のぶつけ合いになっていく。

長澤:子どもの頃から大好きだったんですよ。現場では、監督だから言っちゃダメかなぁと思いつつ、昔はテレビを見ながら「ウッチャン…」とハートマークで(笑)。

内村:いや、私のほうがまさみちゃんのファンですよ。ドラマ「セーラー服と機関銃」は毎週見てましたし、意外なところでは映画「なごり雪」。わたくし、プチ・ストーカーだと思います。だから、(出演の)OKもらったとき、本当に嬉しかったです。

長澤:私も、お話をいただいたときはホント、光栄だな。って思いました。

内村:編集のときも「まさみちゃんのアップだけ長い」ってクレームもらいました。「お前、他のシーン、ガツガツ切ってるじゃねーか」と。でも、まさみちゃんのシーンだけはどうしても長くなってしまうんですよねぇ。こりゃ、申し訳ない!

長澤:監督はホントにやさしくって、でも、きっちり説明をしてお芝居をつけてくれるので、迷いなく演じられるというか…本当に、やさしくて、温かくて、素敵な監督でした。

内村:今日は……いい酒が呑めそうです。すごく酔っぱらうんじゃないかと。

片思いと片思いの激しいぶつけ合い。
本編でもこの「片思い」は重要なキーワードになってくる。

コンビ結成から12年。30歳目前になるが一向に売れる気配はなしの「房総スイマーズ」甲本(小出恵介)と田中(伊藤淳史)。
「俺らはこのままじゃダメだ!」
状況を打破するために、甲本から一方的に始めたのが、相方・田中との「交換日記」。当初は、甲本の思いばかりが先走りし、田中はこの「交換日記」を疎ましく思っていたのだが、回数を重ねる毎にお互いの距離が縮まり、本音をぶつけ合うことでコンビの完成度も高まっていく。
ところが、お笑いコンテストの結果を境に関係性は逆となり、甲本が「交換日記」を拒否。田中から甲本への、悲しい片思いが描かれていく。

夢を追いかけることの非情さ、才能がないことを認める勇気など、青春時代を過ごした人間であれば誰もが身に覚えのある切ない感覚。
そして映画では、その夢を支える家族の物語も展開されていく。

長澤:久美という女性は、女の私から見ても本当に「こんな女性、いる?」というほどのできた人間。必死に芸人の夫を支えるんですよ。“女性らしい女性”というか、女性として誇りに思えるというか……難しいんだけど、演じてみたいなぁと思いました。

内村曰く、全芸人が伴侶として憧れる女性像を具現化したのが、長澤まさみが演じた久美という存在だという。

内村:久美が(夫に)「お疲れさまでした」って言う場面があるんですけど、あれはねぇ、ほとんどの男性が「自分の嫁さんにああ言って欲しい」って言ってましたね。自分でもあれは、理想を書いてるんだと思います。理想の奥さん……あんまり「理想」「理想」言うと、うちの奥さんに怒られっちゃう(笑)。

ウッチャンが、自身の家族について語ることって結構珍しい。

内村:どの夢だってそうですけど、一番大切なのは、それを支えてくれる家族だと思いますね。やっぱり私も、結婚して変わりましたし、娘ができて変わりましたね。この子のために働こう!と。食わせなきゃいけないと。でも、自分もまだ夢に向かっている途中段階なので、それを支えてくれるのが家族ですよね。玄関でいつも、娘がハイタッチしてくれるんですけどね、それが、支えになっていたりとか……ここ、使わないでください。恥ずかしいんで、って舞台上で言っちゃいましたけど(笑)。でも、そういうので勇気づけられていると思いますね。


誰かのために夢は諦められるのか。
夢を諦めていい理由とは何か。
夢を追いかける人間をどうやって支え、見守ればいいのか。

映画「ボクたちの交換日記」は、3月23日(土)から全国ロードショーとなる。
配給:ショーゲート (C)2013「ボクたちの交換日記」製作委員会
(オグマナオト)