テレビでさんまの番組が流れていれば、ついつい引き込まれて見てしまうが、「さんまの番組を見よう」と思ってみることはない。いつでもさんまのテレビは見ることが出来るし、見逃したとしても、同じような番組をまたやっている。

恐らく、比較をすれば、さんまはこの30年で、突っ込みも、受けも、笑いもさらに巧妙に、面白くなっているに違いない。しかし、一般の視聴者に、それを感じさせることさえない。

芸人としての精進も、努力も見せることなく、いつも楽しく、元気いっぱいにふるまっている。

たけしやタモリが、文化人に評価され、だんだんとアートや文化の色を濃くしていったのとは対照的に、さんまは、いつまでもバラエティの住人だった。

「あほなことを言うて」テレビの中でずっと暮らしているという印象だった。

率直に言って、私には明石家さんまは、「謎」だった。なぜ、いつも、そんなに明るく、屈託がないのだろう。何が楽しいのだろう。なぜ変わらないのだろう。

紳助に対する男前の言葉や、最近の言動を見ていて思うのは、この人は「俺はそれだけの男やねん」ということだ。
戦略も、裏表もない、シンプルな人生を生きている(師匠の笑福亭松之助にも通じるところがあると思う)。潔いともいえるし、己を知り尽くしているともいえよう。

それは、簡単なようで、なかなかできるものではない。見方によっては、さんまは、抜き身一本を下げて、街道を渡り歩いているようにさえ見える。

彼はきっと、自分が歳を取ったと思ったら、そして、人々を楽しませることが出来ない、と思ったら、その瞬間に一線を退くに違いない。

広尾 晃

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