ドイツ卓球協会と同国のアンチ・ドーピング協会はこのほど、ドーピングの疑いで8月末にオフチャロフ選手(22歳)に科した「2年間、出場禁止」の処分を解除すると発表した。食事に由来する誤摂取と判断したため。中国国内で食べた豚肉に薬物が残留していたとされる。オフチャロフ選手は、「もう中国で、肉を食べる勇気はない」と述べた。チャイナネットが報じた。

 オフチャロフ選手は2010年現在、世界ランキング12位で、ドイツ男子卓球界の「期待の星」だ。公開試合出場のため8月末に訪れた蘇州市内のホテルで食べた料理に、問題成分が含まれてたとされる。

 オフチャロフ選手によると、「僕は肉が好きです。美味しく料理していたから、毎日、たくさん食べました」という。試合直後の尿検査で、興奮剤・筋肉強化剤成分のクレンブテロールが検出され、2年間出場停止の臨時処分になった。

 当初から、「ドーピングをしたとは思えない」との見方が強かった。オフチャロフ選手は再検査を申請。ドイツのアンチ・ドーピング協会はケルン体育大学の協力を得て、同選手および、蘇州で行動をともにした監督やトレーナーらのサンプルを検査した。尿についてはいずれも陰性だったが、頭髪からクレンブテロールの関連成分が検出された。ドーピング目的ならば選手本人以外が問題ある薬物を摂取するはずがないため、ドイツ卓球協会と同国アンチ・ドーピングは「食事由来の誤摂取」と認め、出場禁止処分を解除した。

 オリンピックには、「前大会終了後に、半年以上の出場禁止処分を受けた者には、次の大会の出場を認めない」との規則がある。オフチャロフ選手は誤摂取を認められなければ、ロンドン五輪の出場資格を失うところだった。国際卓球連盟は、ドイツ卓球協会の決定を尊重し、オフチャロフ選手の国際試合復帰のための手続きを急ぐという。

 中国では、豚の飼料にクレンブテロールを入れる場合がある。禁止されてはいるが、豚が興奮して歩きまわるために赤身部分が多くなり、高値で出荷できるからだ。浙江省では2008年11月、大量にクレンブテロールを含む豚肉が社員食堂の昼食に使われ、70人に手足のしびれ、動悸(どうき)、嘔吐(おうと)などの中毒症状が発生する事件があった。

 これまでにも米国やスペインの選手などで、故意のドーピング行為でない可能性があるが、疑いをはらせなかったケースがある。ドイツでは食品の安全基準が厳格であるため、体内に残留する外部由来の合成化学物質が少なく、監督らの毛髪に微量に存在するクレンブテロールの検出が比較的容易だったため、オフチャロフ選手は「九死に一生を得た」との見方がある。(編集担当:如月隼人)



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