2026年4月1日に打ち上げに成功したNASAのアルテミスIIミッションは半世紀ぶりに人類を地球周回軌道から脱し、月フライバイを行う計画です。アルテミスIIのミッションの中には、「月を周回するオリオン宇宙船から撮影した月の映像を高解像度4K映像で送信する」という任務も含まれます。

Exploration and Space Communications: LEMNOS - NASA

https://www.nasa.gov/goddard/esc/o2o/

Artemis II will use laser beams to live-stream 4K moon footage at 260 Mbps - one giant step beyond the S-band radio comms of the Apollo era | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/networking/artemis-ii-will-use-laser-beams-to-live-stream-4k-moon-footage-one-giant-step-beyond-the-s-band-radio-comms-of-the-apollo-era

この映像送信任務はオリオン・アルテミスII光通信システム(O2O)と呼ばれるミッションです。地球上で離れた場所だと、基本的に電波を用いてデータの送受信を行いますが、O2Oは電波ではなく赤外線を使用してデータの送受信を行います。

記事作成時点でアルテミスIIミッションに参加する4人の宇宙飛行士がオリオン宇宙線の中からライブ配信を行っており、最大4K画質で見ることが可能です。

NASA's Artemis II Live Mission Coverage (Official Broadcast) - YouTube

NASAのミッションが高度化するにつれ、宇宙空間から地球に送信できるデータ量も急速に増加しています。このニーズに対応するため、NASAはより広帯域の無線周波数スペクトルを使用するようになりました。しかし、無線周波数(RF)通信で高いデータレート達成するにはアンテナのサイズを大きくしたり無線送信機の出力を増大させたりする必要があり、サイズや出力の増大には限界があります。そのため、NASAはRF通信の限界、すなわち帯域幅、スペクトル、周波数パケットの全体的なサイズ、および使用電力といった課題に対処するために、光通信の開発を進めています。

NASAは「ミッション機器が進化し、膨大な科学データや探査データを収集するようになるにつれ、宇宙船は地球への情報伝送手段を強化する必要に迫られるでしょう。従来、NASAのミッションでは、宇宙との間でデータを送受信するためにRF通信が用いられてきました。レーザー通信は電波の代わりに赤外線を使用し、1回の通信でより多くのデータを伝送できます」と説明しています。

オリオン宇宙線に搭載されるO2Oモジュールは以下のムービーで見ることができます。このO2Oモジュールは260Mbpsのデータレートを実現でき、月の映像を4K高画質で送信するだけでなく、飛行計画や写真データなどの送受信にも使われるとのこと。

O2O Optical Module - YouTube

赤外線を用いたレーザー通信システムは同等の無線通信システムに比べて体積・重量・消費電力が少ないのがメリット。それに対して、雲や乱気流といった問題でレーザー通信が妨害される可能性があります。

O2Oモジュールとレーザー通信を行う地上局はアメリカのニューメキシコ州ラスクルーセスとカリフォルニア州テーブルマウンテン、ハワイ州のハレアカラに設置されています。NASAによるとこれらの地上局の場所は標高が高く、高速かつ信頼性の高いレーザー通信に不可欠な晴天に恵まれていることから選ばれたそうです。

なお、オリオン宇宙線が月を周回する時、月の裏側に回ってしまうとレーザー通信と深度衛星通信(DSN)の両方が遮断されるそうで、NASAによればこの両方の通信が遮断される「暗黒の時間」はおよそ41分にわたるそうです。