2026年2月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。ライフ部門の第1位は――。

▼第1位 朝も夜もビールを60年以上365日飲み続けている…89歳医師が「我慢する人ほど老ける」と断言する理由
▼第2位 これを捨てないと孤独な老後が待ち受ける…まじめに働いた人ほど取りつかれている"幸福度を下げる思考"
▼第3位 「定年後はゴルフに温泉三昧」ではヨボヨボ一直線…60歳過ぎてもピンピンでいられる人の「余生の過ごし方」

健康に長生きするにはどうすればいいのか。帯津良一医師は「好きなものを食べ、毎日をときめいて生きることが大切だ。『身体に良いこと』より『心に良いこと』を優先することで、自然治癒力が高まり健康につながる」という。精神科医の和田秀樹さんの著書『80歳の壁を超えた人たち』(幻冬舎新書)から、帯津さんの“老けない習慣”を紹介する――。
撮影=杉田裕一
(左)和田秀樹さん(右)帯津良一さん - 撮影=杉田裕一

■「毎日が最後の晩酌だと思って飲んでいます」

【和田秀樹】(以下、和田)帯津先生はいつお会いしても笑顔ですし、今日もお顔は艶々です。

【帯津良一】(以下、帯津)実はさっき診察を終えた後、缶ビールをね。和田先生なら怒らないだろうと(笑)。

【和田】(笑)。お酒は今も毎日?

【帯津】はい。365日。60年以上続けています。私は今日が最後の日だと思って生きているんでね。毎日が最後の晩酌だと思って飲んでいます。

【和田】元気の秘訣ですね。お仕事は今もふたつの病院で?

【帯津】はい。この池袋のクリニックで週2回。本拠地の川越の病院で週3回。

【和田】平日5日、全部?

【帯津】はい。土日は自由。そこで講演に行ったりしてます。

【和田】年をとっても働いたほうが確実に若返ります。とはいえ、すごい!

【帯津】働くのは大好きでね。何もない日が嫌いなんです。だから正月休みは一番嫌い。12月30日から1月3日まで5日間も休んでいられないから、元日には私が病棟回診をします。全部回るんですよ(笑)。

【和田】帯津先生がすごいと思うのは、軸足が医療ではなく、生き方とか人間そのものを見ているところです。

【帯津】以前、和田先生に「朝に生ビールを飲む」と話したら褒められたでしょ。嬉しかったですね。生身の人間として見てくれている。

■我慢をせず、機嫌よく生きる

【和田】僕は精神科だからとくにそうなのかもしれませんが、気分をすごく大事にしていまして。機嫌よく生きてるほうが免疫力も上がりますからね。でも日本って、そういうことに何かとうるさいじゃないですか。

【帯津】そう。朝からお酒を飲むのは「けしからん」とかね(笑)。

【和田】だけどヨーロッパなんかでは、昼からビールやワインを飲んでいる。人生を楽しんでいるんですよ。僕はそれが大事だと思います。

【帯津】私は生ビールが好きで、ホテルに泊まると必ず朝食の時飲むんです。だけど近頃は「朝は出しません」と言われて、がっかりすることが増えました(笑)。

【和田】それで一日を気分よくスタートできるなら、とてもいいような気がしますけどね。今の医学や科学では「身体にいいもの」とか「悪いもの」という考え方をしがちです。でも実際は「身体に悪いはずだけど美味しい」ものも多い。それはね、身体が喜ぶものなんです。それを「身体に悪いものだ」と決めつけて本当にいいのかなと、僕は思いますけどね。

【帯津】貝原益軒(えきけん)の『養生訓』に「好きなものは薬にあつべし」とある。「好きなものは薬だ」と。私はこれを最初から信じてるので好きなものしか食べない。

【和田】いいですね。日本人は「贅沢は敵だ」とか「我慢が大事だ」みたいなことを言って、しかめ面をして生きてます。

【帯津】本当は好きなことをして自分が美味しいと思うものを食べて、ときめいて生きるのが一番なんですよ。

【和田】帯津先生は「こうやって生きたらいいよ」という手本のような方です。

【帯津】嬉しいですね。これも貝原益軒の論ですけど「人生の幸せは後半にあり」っていうのを、きちっと守ってきたらね。84〜85歳の頃から気持ちが幸せになってきましてね。

【和田】素晴らしいですね。

■アンチ・エイジングはいらない

【帯津】私はね、いつでも死後の世界に呼ばれたら行こうと思い始めたんですよ。そしたらフットワークもよくなって、日々の生活が少し充実してきた感じがします。

【和田】生き方が軽やかで素敵です。例えば同じく東大の医学部を卒業しても、教授になるために競争とか蹴落としに明け暮れる人がいます。

【帯津】多いですよね。私はそういうのは興味がなかったけど。

【和田】僕もです。仮に東大教授になれても65歳とか70歳で引退するわけです。だったら出世にこだわって歪(いびつ)な人間関係の下でストレスを抱えて生きるより、帯津先生みたいに毎日をときめいて生きる。そのほうが年をとってからもハッピーだと思うんです。

【帯津】世間ではよく「アンチ・エイジング」なんて言うでしょ。だけど年齢には抗えない。老化と死っていうのは神の摂理みたいなものですからね。

【和田】必ずやってくる。

【帯津】はい。だから私は「ナイス・エイジング」を目指そうと言っています。老化と死があることを認めてしまうんです。受け入れたうえで、老化に楽しく抵抗しながら、自分なりの養生を果たしていく。そして最後は「生と死の統合」を目指す。死後の世界に期待するわけですよ。

【和田】生と死の統合?

【帯津】はい。人生の幸せな後半生ではナイス・エイジングを毎日心がけ、ときめきをキャッチして生命を躍動させる。エンジンをブブーンとふかせば、この年齢でも健やかで活気に満ちた毎日を過ごすことができます。

【和田】なるほど。晩年にエンジンをふかすわけですね。

【帯津】そう! そして、あわよくばその勢いのままあの世に乗りこんでいく(笑)。人生の終わりにエネルギーを減らすのではなく、逆に増幅していく。そんなふうに私は考えているんですよ。これが生と死の統合です。

■病気を治すのは医師ではない

【和田】先ほどクリニックに美人の女性が2人訪ねてきました。

【帯津】患者さんです。もう一人は彼女のお友達かな。

【和田】先生と笑顔で手を振り合っているので、親しい友人みたいに見えました。

【帯津】私はね、患者さんと心を通わせることが一番大事だと思っていましてね。だから白衣も着ません。診察の妨げになると思ってるんですよ。医者の権威をまとうより、普段着にサンダル履きのほうが親しみやすい。

【和田】素晴らしいですね。

【帯津】医者と患者は同じ病に向き合う仲間という意識でね。そのほうが自然治癒力も上がると私は思っているんですよ。

【和田】私も精神科医なので、それはよくわかります。

【帯津】そう言えば、和田先生、選挙に出たそうですね。

【和田】いえ、選挙に出たわけではないんですけど。「幸齢党」という政党を作りましてね。選挙に出るつもりだったんですけど、立候補者の人数が足りなかったので、今回は東京でひとり応援させていただくのに留まりました。まあでも、1回目は惨敗でした。高齢者の幸せを目指すので「幸齢党」と名付けました。

【帯津】そうでしたか。高齢者の幸せを目指すってのはいいですね。医者の私が言うのも変ですが、病院へ行ったからといって病気が治るわけではないですからね。病気を治すのはやはり、もともと人間が持っている自然治癒力です。そして自然治癒力を高める最大の原動力はときめきです。ときめいている患者さんは、ほぼ例外なく症状がよくなっていきますからね。

写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen

【和田】まったく同感です。それなのに現実は免許の返納を促したり、働く意欲と能力のあるお年寄りを悪い労働環境で雇ったりする。高齢者の割合が増えているんだから本当は現役世代との「共生社会」を目指すべきなのに、逆を行ってるんです。

■身体に良いことより心に良いこと

【帯津】お年寄りはこれまで、人のため、家族のため、社会のために生きてきたんだから今後は自分のために時間を使う。もっと楽しんで、自分を慈しんでほしいですね。

和田秀樹『80歳の壁を超えた人たち』(幻冬舎新書)

【和田】僕の知人が82歳で肺ガンが見つかり医師から「もう手遅れだ」と言われたそうです。その人すごいヘビースモーカーなんですよ。余命宣告で相当ショックなのに、愉しみのタバコまで取り上げられて、すっかり意気消沈しちゃいましてね。

【帯津】そうですよね。

【和田】だけどある日、開き直って吸い出したんです。「俺はタバコのせいでガンになったのかもしれないけど、タバコのせいで進行するとは限らない」って。

【帯津】いいですね。

【和田】そしたら元気になって。結局タバコを吸い続け92歳で亡くなったんですけど。

【帯津】ほおー、大往生ですね。

【和田】ガンじゃなく、くも膜下出血で亡くなったんです。でも死因はなんであれ、人間はいつか必ず死にますからね。好きなタバコを吸って長生きしたんだから、満足だと思いますよ。

【帯津】ベッドの上で天井を見つめながら人生の幕を閉じるのではなく、元気なまま、ある日突然、コロリと逝ったんですからね。いいじゃないですか。

【和田】同感です。やっぱり、美味しいものを食べたり、楽しいことをしながら生きたいと、僕は思いますけどね。

【帯津】ガンの患者さんで「あそこの病院に行けば酒が飲めそうだ」ってうちの病院に移ってくる人がいるんですよ。

【和田】いいですね。

■葬式の「飲みかけの焼酎」が教えてくれた

【帯津】ある作家の方でね、食道ガンがかなり進行して、他の病院から移ってきた方がいました。「先生お願いします」って言われて、この人飲みたいんだなとピンときた。で、焼酎を1本持っていったんですよ。そしたら嬉しそうに布団の中に隠してね(笑)。

【和田】いいですね(笑)。

【帯津】何日かしたら「先生もう飲んじゃったよ」って言うので、今度は「百年の孤独」という焼酎を持っていったの。喜びましたよ。だけど全部飲み終わらないうちに亡くなったんですね。そしたらなんと葬儀の時、お焼香台にその飲みかけの「百年の孤独」が立っていたそうです。

【和田】いい話ですね。この病気になったら終わりじゃなく、この病気でも残りの人生を楽しもうという生き方ですよね。人間ってやっぱり希望や喜びがあると、生きる気力みたいなのが出てきますからね。

【帯津】はい。私も前に和田先生から「糖が高いほうがいい」とか「コレステロールが高いほうが長生きする」って教わったでしょ。ああいう話は本当に嬉しいよね。心が明るくなって元気が出てきましたからね。

写真=iStock.com/Feverpitched
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Feverpitched

(初公開日:2026年2月23日)

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)