井端監督(C)日刊ゲンダイ

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【侍ジャパンWBC惨敗の内幕】#総集編

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 侍ジャパンが描いたWBC連覇の夢は、あっけなく準々決勝で潰えた。大谷翔平(ドジャース)ら史上最多のメジャーリーガーを擁しながら、なぜ負けたのか。全4回にわたって報じてきた「侍J惨敗の内幕」を総括する。

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 ベネズエラ戦の直接的な敗因はリリーフ陣の崩壊だった。しかし、それは起こるべくして起きた惨事だ。今大会に招集された投手14人のうち、リリーフ専門家はわずか3人。この極端に偏った構成が、短期決戦における最大の敗因となった。

 首脳陣は、本来先発の投手を「第2先発」「第3先発」として起用することで穴を埋めようと試みたが、この急場しのぎの策は機能しなかった。先発投手にとって、不慣れな救援登板、特に緊迫した場面でのイニングまたぎは困難を極める。経験の乏しい投手がプレッシャーのかかる場面で失投し、逆転負けに繋がった。

 投手陣の歪みは、大会が始まる前から深刻化していた。宮崎合宿直前に平良海馬(西武)、石井大智(阪神)、さらに松井裕樹(パドレス)といった主力救援投手が相次いで辞退。しかし、その代替として招集されたのは隅田知一郎(西武)や金丸夢斗(中日)といった先発型の投手であり、編成の偏りは是正されるどころか、むしろ悪化した。

 そもそも井端監督はその高圧的な態度で自ら招集の芽を潰していたという話も噴出している。最大の誤算は、昨季の最優秀救援投手の杉山一樹(ソフトバンク)の招集失敗だろう。

「井端監督は宮崎合宿中に松井の代役として打診したとされていますが、杉山は辞退した。昨年11月の韓国戦出場がWBCメンバー入りへの『踏み絵』のような形にされ、不信感を抱いたといいます。阪神の才木浩人ら他の投手も、韓国戦を辞退したことでWBCメンバーから外れたともっぱらですが、井端監督サイドのこうした高圧的な態度に不信感を抱き、代表入りを断った選手は結構いると聞いています」(パ編成担当)

 メジャー組には、例えばダルビッシュ(パドレス)には就任直後から声をかけ、菊池雄星(エンゼルス)には自ら岩手に足を運んで参加を要請。「宮崎から来てほしい」「投手陣をまとめてほしい」と猛烈なラブコールを送っていた態度とは雲泥の差だ。それがチーム内に微妙な温度差を生んだ可能性は否定できない。

 アンバランスな編成で開幕を迎えた結果、現場のオペレーションも混乱を極めた。偏った起用法にも批判の声が噴出している。侍ジャパン経験のある元選手が言う。

「ベネズエラ戦では継投を巡って、ベンチとブルペンの間で意思疎通が図れず、報道陣にも伝わるくらいてんやわんやの大騒ぎに。選手たちはその様子を白い目で見ていたそうです。そもそも、例えば松本(裕樹=ソフトバンク)などは宮崎合宿時は大絶賛していたのに、登板したのは1次ラウンドの韓国戦の1試合だけ。1イニングで1失点したことで見切りをつけた。一方、好投を続けていた種市(篤暉=ロッテ)は本来、先発投手であるにもかかわらず、1次ラウンドの韓国、豪州戦ではリリーフとして連投させた。ベネズエラ戦でもイニングまたぎも強いるなど酷使。こうした場当たり的な井端監督の投手起用によって、ただでさえコマ不足のブルペンはいよいよ機能不全に陥ったといえます」

 “偏重起用”は野手も同様。セパ首位打者の小園海斗(広島)や牧原大成(ソフトバンク)らは塩漬け。結果的に決勝Rでは13人が出場機会がないまま「4泊6日のマイアミ旅行」に終始した。

 そんな侍ジャパンに対し、ベネズエラのロペス監督も「データ分析に基づいているとは思えなかった」とバッサリやっている。

 ベンチが思考停止状態に陥っていた可能性は高いが、選手を生かすどころか殺す井端監督の選手起用によって、侍ジャパンのチーム力、結束力に亀裂が生じたのは言うまでもない。 

「負けるべくして負けた」と言えるが、敗戦をダメ押ししたのは「野球そのものの差」も関係している。ピッチクロック、ピッチコム、飛びやすいボール--。MLB仕様への適応に苦しみ、侍ジャパンの選手たちは戸惑いを見せた。中村悠平(ヤクルト)はこう振り返る。

「メジャーとNPBの差をすごく感じた。日本もピッチクロックとかピッチコムとかを導入して、より向こうに近づきながら、日本の選手のスキルを上げていった方がいいんじゃないかなと」

 さらに、複数の選手からはNPB統一球より飛びやすいといわれるMLB公式球への変更を求める声が上がっている。日本逆襲のカギとして前出の中村は「打ち勝たないと難しい」と言った。日本のいわゆる「飛ばないボール」による投高打低の構図も、ボールの変更によって変化し、結果的に投打のレベルアップにつながる可能性はある。

 メジャーリーガーを擁する強国と伍するには、日本ガラパゴス野球からの脱却が急務といえそうだ。

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 WBCで株を大きく下げたのは井端監督だけではない。投手コーチ陣にしても、「データを扱えない」などといったスペックの問題や、「ブルペンスルー事件」などが露見していたのだ。いったいどいうことか。

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