ライブドア・ニュースの取材に応じるライブドアの平松社長(撮影:吉川忠行)

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「昨日午後7時ごろより、東京地検特捜部及び証券取引等監視委員会の捜査・押収を受けました。当社は上記捜査に全面的に協力いたしております」

 2006年1月17日早朝。東京地検特捜部による強制捜査が入ってから12時間後、「時代の寵児」として祭り上げられていたライブドアの堀江貴文社長(=当時)は押しかけた取材陣を前に、目を真っ赤に張らせた顔でこう言葉少なに弁明した。

 一週間後、堀江氏が“塀の中”の人となると、その後の舵取りをあえて引き受けたのはライブドアの最年長役員だった平松庚三氏(60)。かつて所属したソニーの創業者・盛田昭夫から「経営者はネアカであれ」と叩き込まれた平松社長が率いる「新生ライブドア」は、事件発覚後の8週間で7度の記者会見、6回の謝罪を経て、社会的信頼と事業の再生に向けて船出を遂げた。

 ライブドアと平松社長にとって疾風怒濤(しっぷうどとう)のような1年がまもなく終えようとしている。師走の空にうっすらと映える富士山を望む六本木ヒルズ・森タワー38階で、平松社長の「改革元年」を締めくくるインタビューを始めた。

 ◆ ◆ ◆

── 約1年間の改革で、前体制と変わった点を一言で言うと。

 一番変わったのはコーポレートガバナンス(企業統治)とコンプライアンス(法令遵守)。外部の力を借りたが、日本企業の中で相当高度なところまで持ってこられたと自負している。大切なのはそれを継続していくこと。

 経営に対する社員の参画意識もモチベーションも高まった。テクノロジーカンパニーで、インターネットの新潮流「ウェブ2.0」においてダントツのトップランナーであることも、社長に就任して初めて分かった。“ほんもののライブドア”をこれから世の中の人たちに伝えていきたい。

── 社長就任1年を振り返ると。

 わずか“60歳の小僧”だけれど、最も困難であり、最も充実し、最もエキサイティングで、自分自身が最も育った1年だった。

 これまで外資系企業の社長をしてきたが、コンプライアンスやコーポレートガバナンスとは本で得た知識に過ぎなかったが、事件後に色々考えさせられて、勉強しては教えられ、今まで持っていた知識がいかに薄っぺらいものだったかを実感した。

 「ウェブ2.0」や「CGM」「RSSリーダー」の意味や仕組みを社員にかなりしつこく聞いて教えてもらった。わずか3カ月ではあったが、初めて上場企業の社長になり、証券取引法を初めて学んだ。

ブランドは一晩で崩れる

── 「ライブドア」というブランドについてどう現状認識しているか。

 超一流企業と同じぐらいの認知度はあるが、イメージはかなり毀損(きそん)されている。ブランドを築くにはコツコツとした努力が必要だが、崩れるときには一晩で崩れるということを、まさに身をもって体験した。奇をてらった手法ではなく、みんなでコツコツと信頼されるようなブランドとして回復させたい。

 ポータルサイトのブランドとしての「ライブドア」は残すべきだが、(来春に分社化するメディア事業の)新社名については社員の思い入れを大切にしながら考えて、春先には決めたい。

── 事業の切り売りはまだあるのか。

 一段落はついたと思っている。目的は売却ではなく、会社の価値を上げることであることを外さない範囲で、これからも場合によっては考えていきたい。

── インパクトが強かった前体制と比べ、事業・社長ともに顔が見えにくいとの声も聞こえてくるが。

 ユーザー数は事件前の月間1400万人から同1700万人へ20%程度増えているし、顧客離れは全く感じない。

 トップのメディア露出は適度には必要だが、過多は良くない。必要なとき、ところに出て、必要な対話はしている。エンターテインメントは私の仕事ではない。広報とは経営上、大変重要なところ。今後もユーザーが知りたい情報をタイムリーに供給していきたい。

── 筆頭株主の堀江貴文氏には事業計画などの説明などIRはどのように行っているのか。

 事件以来、お目に掛かっていない。ただし、筆頭株主の弁護士を通じて、弊社の担当者から方針を伝え、「会社の提案を全面的に賛成する」という話は頂いている。

黒字化なくして再生なし

── 「2007年問題」と表現されるような同年代が大量退職する時代が到来する。団塊ライフのあり方とは。

 自分の好きな言葉のひとつは「50、60はハナタレ小僧」。小僧と思えるか、そうじゃないかは自分の問題。野球でもサッカーでも後半戦の方がずっと面白いように、人生も同じではないだろうか。後半戦のゲームプランをしっかり立てて、目標に向かって充実したエキサイティングな人生を送っていきたい。

── 07年はどのような1年にしたいか。

 06年はいろいろと戸惑うことも多かったが、07年は是非、売り上げや営業利益など数字の面でも建て直していきたい。顧客は増えているが、弊社の主力収入源の広告は70%まで回復してきた程度だ。来年春以降には事件前以上の利益を出せるようにしたい。

── 現在いる13万人の株主に向けて年末に一言伝えたいことは。

 大変なご迷惑とご心配をお掛けしました。業績の黒字化なくして再生はない。全社一丸となって企業価値を高め、ライブドアを必ず復活させるとお約束します。

(連載おわり)【了】

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第3回 さわかみ投信・澤上篤人社長 “宴のあと”の投資ファンド原論(12月29日)
第4回 三井法律事務所・熊谷真喜弁護士 「会社の品格」 存在感増す指南役(12月30日)

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