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トム・クルーズ主演の傑作スカイ・アクション『トップガン』(1986)36年ぶりの続編として登場し、全世界約15億ドルの超ヒットを記録し、洋画離れが叫ばれる日本でも137.1億円の興行収入を叩き出した『トップガン マーヴェリック』(2022)には、知れば知るほど面白い裏話がいくつもある。

この記事では、地上波初放送となる『トップガン マーヴェリック』よくばりセットとして、映画がマッハ10で面白くなるトリビアを全40ネタまとめた。

コロナ禍で公開延期を繰り返すも、トム・クルーズがストリーミング配信を絶対拒否

『トップガン マーヴェリック』は撮影後にコロナ禍を迎えたため、公開にあたっては幾度も調整が加えられた。公開予定日は、2019年7月12日→2020年6月26日→24日→12月23日→2021年7月2日→11月19日→2022年5月27日と変更を繰り返した。

当時はコロナ禍で劇場公開が難しい代わりにストリーミング配信を活用する方法が主流となりつつあったが、「僕は大スクリーンのために映画を作ります」とこだわるトム・クルーズはこれを絶対拒否。劇場公開の方針を貫いた。結果として劇場で大ヒットを記録し、映画はほとんど瀕死状態だったハリウッドの救世主となった。

スティーブン・スピルバーグはトム・クルーズに会うと彼を抱きしめ、「君がハリウッドを救った。劇場配給を救ったんだ。本気だよ。『トップガン マーヴェリック』が映画業界を丸ごと救った」と伝えている。

空撮、「太陽の位置や山のどの部分にいる時にどのセリフを言うかまで覚えた」 (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

周知のように『トップガン マーヴェリック』では、戦闘機のコックピットにカメラを積載し、キャストたちは実際に高速飛行する機体の中でG(重力負荷)に耐えながら演技を行なっている。キャストたちは猛スピードで飛行しながら、「太陽の位置やルート、山のどの部分にいる時に、どのセリフをいつ言うのかまで」記憶して撮影に挑むという凄技をこなした。

ハングマン役グレン・パウエル、アイスマン役ヴァル・キルマーにいじられる (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

本作におけるハングマンは、前作のアイスマン的な立ち位置となったと言えるだろう。ハングマン役のグレン・パウエルが撮影滞在先のホテルをチェックアウトしようとエレベーターで荷物を運んでいたところ、なんとアイスマン役キルマーと偶然一緒になった。その時パウエルは、筋トレ用のウエイトとプロテイン、そしてテキーラを運んでおり、キルマー先輩は「『トップガン』そのものだな!僕の『トップガン』でもそうだった」と面白がってイジり、写真を撮ったということだ。

ハングマン役グレン・パウエル、トム・クルーズにドッキリかまされる

ハングマン役のグレン・パウエルはトム・クルーズにヘリコプターで送り届けられる際にドッキリをかまされている。本作の追加撮影が行われていたある日、トムはパウエルを乗せて、イギリスのパインウッド・スタジオからロンドンまでヘリを操縦していた。するとトムは突然「ヤバいヤバい!」と焦りながら、上空でヘリを落下させ始めたという。「俺は、ロンドンのど真ん中でトムと煙に巻かれて死ぬ無名の男になるのか?」と、パウエルは本気で焦ったということだ。

トム・クルーズ再演の鍵となったのはグースの息子、ルースター (C) 2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

製作陣がトム・クルーズ再演へ向けた話し合いの上で欠かせないキャラクターだったと振り返るのが、マーヴェリックの親友にして戦闘機上の相棒でもあった亡きグースの息子ルースター。演じるのは『セッション』マイルズ・テラーである。

ルースターは1作目でも、マーヴェリックやグースらが『火の玉ロック』を伴奏しながら歌うシーンでも登場している。「観客の皆さんが、僕が演じているのがあの小さな少年だということに気づいたら、感動してしまうでしょう」とテラー。ジョセフ・コシンスキー監督は、ルースターとマーヴェリックの物語こそが「感情的に引き込むことができて、トムがまたキャラクターを演じることにワクワクしてくれるようなると思ったストーリーラインでした」と話している。

ハングマン役グレン・パウエルはルースター役に落選してヘコんでいたがトム・クルーズに激アツアドバイスをもらって出演

ルースターのライバルであるハングマン役でブレイクしたグレン・パウエルだが、当初はルースター役を希望してオーディションを受けていた。出演する気満々でノリノリだったパウエルだが、電話で落選を知らされると、ショックを受けながらも「寝室に貼ってあったトム・クルーズのポスターを全部剥がす」とXにイジけて投稿。それから悲しくなってきて、一人バルコニーに座っていたという。

その1時間後に、狙っていたルースター役がマイルズ・テラーに決定したというニュースが出始め、ますます悲しくなってしまったパウエル。しかし、その後にトム・クルーズから直々に電話があり、別のアイデアを発案されてハングマン役にたどり着いた。

ハングマンには憎まれ役のような部分もあるキャラクターで、当初パウエルはあまり納得していなかった。「ドラコ・マルフォイにはなりたくない」と躊躇していたパウエルに対し、トム・クルーズから「この映画の出演者は全員が自分の能力を疑っている。その中で、君だけが自分を疑っていないんだ。だから、君が一つでも言い訳をしたら、この映画は成立しなくなる。思いっきり、クソ野郎になれ!」とアツすぎるアドバイスをもらい、心動かされて出演を決意したという。

他にもパウエルには、デンゼル・ワシントンも助言を行なってる。『グレート・ディベーター 栄光の教室』(2007)でパウエルと共演したワシントンは、早い段階から『トップガン マーヴェリック』が大成功することを確信しており、出演に迷うパウエルに対して「本当にやったほうがいいと思うぞ」と推していたのだそう。

バーの選曲はエドガー・ライトが行った (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

パイロットたちが行きつけにするバーのシーンでは、実は『ベイビー・ドライバー』(2017)『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)で知られる音楽通のエドガー・ライト監督が選曲を行なっている。製作陣から曲のアイデアを求められると、大急ぎでプレイリストを作って送ったのだそうだ。彼のアイデアによって、本編ではフォグハットの『スロー・ライド』が起用されている。

撮影素材は800時間分、編集者も夢でうなされる

本編で使用されている映像は、厳しい編集過程で厳選された究極のカットばかり。なんと撮影では全800時間分の映像素材を撮り溜めていたという。編集者にとっては膨大量であり、数ヶ月は眠れない状況が続いた。ようやく眠れたと思ったら、「ハングマンとフェニックスとルースターとマーヴェリックのアップが夢に出てくる」日々だったという。

トム・クルーズ来日、自腹で横浜に打ち上げ花火 ©︎THE RIVER

トム・クルーズは本作のプロモーションのため、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーとともに2022年5月に来日。横浜港大さん橋・国際客船ターミナルで実施されたジャパンプレミアでは、陽が暮れるまで徹底的にファンサービスを周りまくる“神対応”ぶりを見せた後、サプライズで打ち上げ花火をプレゼント。トムが自腹で寄贈したものだという。

そのまま横浜から都内のTOHO シネマズ日比谷に移動したトムはプレミア試写会の舞台挨拶に登場。その後は会場を去る段取りだったが、本人の希望によって劇場に残って観客と一緒に鑑賞する流れに。この日訪れていた日本のファンは、トム・クルーズ本人と一緒に『トップガン マーヴェリック』をプレミア鑑賞するという一生ものの思い出を手にすることとなった。

ビーチアメフトシーン、撮影直前までパンプアップ

『トップガン』でのビーチバレーにオマージュを捧げ、本作ではパイロットたちがビーチで汗を輝かせながらアメフトするシーンが登場。若手キャストたちが鍛えた肉体を見せつけるシーンとなったが、このために彼らはカレンダーに丸を付けて備え、前日の夜遅くまでジムで鍛えまくり、カメラが回る直前まで筋肉をパンプアップさせて撮影に挑んでいたという(上の動画でも確認できる)。「あのシーンを撮るまでのプレッシャーは、ほかのどの映画よりも大きかったです」とはハングマン役グレン・パウエルの談。ちなみに撮影時、誰よりも張り切っていたのはトム・クルーズだったという。

なおこのシーンでは、1作目のビーチバレーシーンで聞こえる「ウォーウ!」という雄叫び音声がサンプリングされているという細かい小ネタもある。

マーヴェリックのジャケットと腕時計は1作目と同じもの (C) 2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

トム・クルーズが演じたマーヴェリックが本作で着用しているジャケットと腕時計は、1作目と全く同じものであり、レプリカではない。腕時計はプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーがずっと保管していたのだという。ちなみに、事前プロモ素材ではジャケット背面パッチから日本と台湾の国旗が消えていたが、これは本国宣伝側がなんらかの政治的事情に配慮して差し替えたものと推測される(本編では元に戻っている)。

1作目の恋人シャーロットが登場しない理由

本作でマーヴェリックは、養成学校の近くでバーを営むペニー・ベンジャミン(ジェニファー・コネリー)と恋愛関係にあった。1作目では養成学校の教官シャーロット(ケリー・マクギリス)と恋に落ちていたが、彼女はこの続編に全く登場しない。

物語上の都合として、コシンスキー監督は次のように説明している。「私たちが時間を費やしたのは、(シャーロットとの関係を語るような)そういう物語ではありません。全てのストーリーラインを過去に向けることは望んでいませんでした。新しいキャラクターを登場させることも重要だったんです」。

シャーロット役のケリー・マクギリスにもオファーはなかった模様。「私は年を取って、太りもしました。年齢相応の見た目です」とコメントしている。

グースの妻メグ・ライアンが登場しない理由

シャーロットと同様に、1作目で親友グースの妻キャロルを演じたメグ・ライアンも本作には登場しない。彼女にもオファーは行われておらず、その理由についてブラッカイマーは「ストーリーが変わったため、彼女のキャラクターの出番がなかったからです」「私は、若いパイロットたちに焦点を当てていましたから」と説明している。

ヘルメットにコールサインを描くのは『トップガン』由来 (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

『トップガン』ではパイロットたちがヘルメットにコールサインを描いているが、これは元々米海軍にあった風習ではなく、『トップガン』ブームによって逆輸入されたもの。ちなみに1作目でコールサインをヘルメットにペイントしたのは、トニー・スコット監督の発案だったそう。

1作目を再現したオープニングシーンのこだわり

おなじみのテーマ曲「デンジャー・ゾーン」と共に、技術クルーが戦闘機に乗り込んだパイロットたちを空へと送り出す離陸の風景が映し出される冒頭シーンは1作目へのアツいオマージュ。コシンスキー監督はこのオープニングについて、「僕にとって『スター・ウォーズ』並みに象徴的な存在なんです。だからこそ、映画を1作目と同じように始めたいと思ったのです」とこだわりを語っている。

ちなみに1作目ではパイロットたちが「men」とのみ記されていたのに対し、本作では「men and women」とアップデートされている。「気づいてもらえたらなと思います。今では、女性もトップガンとして空を飛ぶんですから」。

オープニングシーンには別案があった

このオープニンには全く異なるアイデアも存在した。「マーヴェリックが海に向かって立っていて、そこで彼がこう言うんです。“守ってくれ、グース(Talk to me, Goose)”って。ある意味、第三幕の始まりを先にやってしまっていましたね」と、編集者エディ・ハミルトン。「守ってくれ、グース」とは、1作目で亡きグースのドッグタグを握りしながらつぶやいたマーヴェリックのセリフへのオマージュだ。

主題歌「デンジャー・ゾーン」ケニー・ロギンスの感想

『トップガン』主題歌「デンジャー・ゾーン」を歌ったケニー・ロギンスは『トップガン マーヴェリック』で引き続き楽曲が起用されたことについて、事前にトム・クルーズと交わした会話を明かしている。「『トップガン』の新作を作るそうだが、『Danger Zone』は使うのかい?」と尋ねるとトムは「『デンジャー・ゾーン』無くして『トップガン』は作れませんよ」と答えたそうだ。

ロギンスは本編を鑑賞した感想について、次のように述べている。「今作の方が良いと思います。1作目もかなり好きなのですが、今作は『インディ・ジョーンズ』や『スター・ウォーズ』を思い出させるようなエネルギーがありましたね。脚本がよく練られている。新キャラクターたちの設定や、崖っぷち感がよく合っていたと思います」。

グース役アンソニー・エドワーズの感想

1作目でマーヴェリックの親友として登場し、悲劇の死を遂げたグース役アンソニー・エドワーズは、トム・クルーズに招待を受けて本作の上映会に参加。映画の感想について、次のように述べている。「それぞれがオリジナル版への思いを持っていますが、この続編では、その1作目を初めて観たときの感覚になりました。トムには、“ミッション達成”と伝えましたよ。彼らはまさにやり遂げたんです。本当に大変な仕事だったはずですから。あの雰囲気やトーン、みんなが求めていたものが詰まっていました」。

ルースター役マイルズ・テラー、撮影で「死ぬかと思った」 (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

ルースター役のマイルズ・テラーには、撮影時に「間違いなく死ぬかと思った瞬間」があったという。戦闘機が地面に向かって垂直に降下していくシーンだ。「地面に着く直前に機体を引き上げるというものなんですが、これがパイロットにとっては本当に大変なことで。これまでずっと訓練してきたことではあるんですけど、そんな経験を実際に体験したのはこれが初めてだったので、完全に演技どころではありませんでした。地面を見たとき、これは自分にとっていい結果にはならないと思いましたよ」。

敵国がどこか明言されない理由

『トップガン』でも『トップガン マーヴェリック』でも、米海軍が戦う相手は単純に「敵国」とのみ呼ばれ、その国がどこであるかや、敵国パイロットの顔がわかることはない。「この映画は、競争(コンペティション)映画です。構成としては、どちらかというとスポーツ映画に近いですね。友情や奉仕についての物語なので、地政学のお話ではないんです」とコシンスキー監督。「世界情勢は毎年変化します。この映画は2018年に撮影していたのですが、今の世界情勢を予測することなんて出来ませんでした」「僕はこの映画を、10年後や20年後に観ても変わらずに楽しめる作品にしたかったんです。“2020年代初頭に作られた作品だな”とは感じて欲しくない」と、時事性のある地政学の導入を避けることで、普遍的な物語にする狙いがあったと語っている。

サイクロン役ジョン・ハムが撮影中も優しかった (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

養成学校で若手パイロットたちの指導にあたったサイクロン海軍中将を演じたジョン・ハムは、撮影中もリアルに若者たちの指針となった。クランクイン時には若手キャストたちを夕食に誘い、さらに自身の控室を「アドバイスやスポーツゲームをするために」開放していたのだという。ハングマン役のグレン・パウエルは、ハムについて「素晴らしいチームメイト」と感謝を伝えている。

トム・クルーズが撮影中もカッコよかった

スーパースター、トム・クルーズは自ら危険なスタントをこなす超人ぶりで知られているが、本作撮影も同様だ。ある日トムは「今日は3回飛ぼうかな」と言って、映画のクライマックスである大爆破シーンの撮影をこなす(一度の飛行でも相当な体力を要する)。精神的にも肉体的にも過酷な撮影を終え、地上に戻ってきたトムは椅子に倒れ込んだ。「トム、どうだった?」と尋ねられると、黒いレイバンのサングラスをかけたまま一言、「楽勝でした」と答えたという。

トム・クルーズ、トラブルで死にかけたのに笑顔 ©︎THE RIVER

戦闘機での飛行シーン撮影中、トム・クルーズは機械トラブルに見舞われて緊急着陸することがあった。危険な状況だったにも関わらずトムはニコニコ笑顔で飛行機から出てきたといい、「あの人、死にかけたのに、笑ってるぞ……」とハングマン役グレン・パウエルは驚いている。

ヨットのシーン、速さを求めて荒波へ

劇中でマーヴェリックとペニーがヨットに乗るシーンでは最初サンディエゴの海で撮影していたが、「これじゃつまらない。速さが足りないし、カッコ良さが足りない」とトムが言うためにサンフランシスコまで移動し、強風吹き荒れる荒波の上で撮影を決行。このシーンでトムは「美しく穏やかな天候」よりも「力強くアドレナリン湧き出る体験」を求めたということだ。

もう二度と出来ないシーンがある

劇中で描かれる不可能ミッションを突破するため、マーヴェリックが自ら危険な低空飛行を行うシーンでは、時速600マイルで50フィート以下を飛行するため海軍から特別な許可を取得していたという。そのため、「もう二度と出来ない」とコシンスキーは語っている。

戦闘機F-18の撮影使用料は1時間100万円超 (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

撮影で使用された戦闘機F/A-18 スーパーホーネットの機体使用料は、1時間あたり11,374ドルだったという。製作には米国防総省の協力を得たわけだが、国防総省グレン・ロバーツによれば、長年勤める中で『トップガン マーヴェリック』の仕事ほど盛り上がっていたことはなかったという。

マジの極秘施設を撮影に使ったため他国の人工衛星が動く

冒頭に登場するダークスター格納庫は、チャイナレイク海軍航空兵器基地内に存在するマジの極秘格納庫。本来は絶対にロケ撮影できない場所だが、コシンスキー監督が「あーすごいなー、あそこで撮影ができたら最高なのになー、残念だなー」とアピっていたら、なんと撮影許可が降りてしまう。

実際に極秘格納庫に撮影用ダークスター機体を収めて出庫させる様子を撮影していると、あれは一体何だということで、どこかの国の人工衛星が写真撮影のため動き始めてしまったという。「いやーすごいですよね、ズームアップしてコックピットのトム・クルーズが写っていたら、めっちゃカッコいいですよね」と、監督はどこかお気楽である。

マジの軍事機密を撮ってしまい米海軍にデータ消される (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

米海軍全面協力で行われた撮影では、一般市民が絶対に入れない場所に立ち入ることもあった。ある時には軍にカメラを没収され、データを消されることもあったという。「何枚か写真を撮っていたんですが、多分撮っちゃいけないものを撮っちゃった。カメラはすぐ返却されたんですが、写真は全部消されていました」とコシンスキー監督は語っている。

マジのトップガン・パイロットも飛行シーンを絶賛

1994年に実際のトップガンを卒業し、現在はアメリカ太平洋艦隊を率いるサミュエル・パパロ司令官は本作を鑑賞し、飛行シーンについて「完全に通用する」「1作目での飛行シーンはスゴイと思ったのですが、『トップガン マーヴェリック』ではさらにリアルでした」と絶賛。同じくトップガン卒業生のパトリック・タッカー海軍少佐も、「飛行はかなり正確です」と映画を讃えた。

マーヴェリックは冒頭で死んでいる説を監督が否定

マーヴェリックは実は冒頭のダークスター・マッハ10飛行シーンで死亡しており、映画の残りは全て死んだマーヴェリックが見た夢なのではないか……。都市伝説的に語られるこの説について、コシンスキー監督はキッパリ否定。当初の脚本では、マーヴェリックが地球にフリーフォールで降下してくる描写があったといい、「そのことが説を否定している」と断言。もっとも、「複数の解釈があるのがいいですね」と、説が語られていること自体は喜ばしく思っているようだ。

「ネタバレしたら撃つ」と同僚に銃を向ける事案が発生

オーストラリアのシドニーに勤務するドミニク・ゲイナー警官は、楽しみにしていた『トップガン マーヴェリック』について、「昨晩観たからネタバレしてやろうか」と後輩にからかわれた。ネタバレするなら「撃つぞ」と冗談で銃を向けたところ、ショックを与えてしまい後輩は鬱病に。ゲイナー警官は2年間の社会内処遇と100時間の社会奉仕活動が課された。

エンディングにはフェニックスもいた

エンディングシーンでは、ガレージで一人過ごしていたマーヴェリックのもとに、ルースター、ペニー、ペニーの娘アメリアが現れるという展開になる。ここには女性パイロットのフェニックスも居合わせており、撮影も行われていたという。フェニックスは飛行機のプラモデルを眺めながら、アメリアに語りかけているという登場だったそうだ。また、マーヴェリックの同僚ホンドー(バシール・サラディン)の登場案もあったという。

F1世界王者ルイス・ハミルトンが出演を辞退して後悔

天才F1レーサーのルイス・ハミルトンはトム・クルーズと交友があり、パイロット役で出演オファーを受けていた。しかし当時はF1タイトルを争うレース真っ只中にいたため、スケジュール都合で辞退。本編を鑑賞すると、「あれは僕だったかもしれない!」と悔しい思いをしたという。ハミルトンはもともと1作目の大ファンで、裏蓋に『トップガン』のロゴが入った私物の腕時計をトムに見せて「もし続編をやるなら用務員役でもいいから出演させてほしい」と懇願していたのだとか。

メンバーは今でもグルチャで仲良し (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights

『トップガン マーヴェリック』の若手キャストたちは厳しい撮影を共にした絆で今も結ばれている。メンバーはグループチャットで繋がっており、くだらないやり取りも行なっているようだ。多忙なトム・クルーズには気を使って、グルチャに招待していないという。

ボブ役がまたボブ役を演じる (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

トップガン・パイロットのボブ役を演じたルイス・プルマンは、マーベル映画『サンダーボルツ*』でもまたボブという役名を演じる。プルマンは『トップガン マーヴェリック』出演後、ボブという名の人たちに「ボブ・レガシーを強化してくれてありがとな」と感謝されるようになったそう。『サンダーボルツ*』のボブは『トップガン マーヴェリック』のボブとは全く異なるキャラクターだといい、「ボブのデュオ、ボブの二乗」とよくわからないことを言っている。

キツすぎる空撮に全員ゲロを吐いたが一人だけ耐えたキャストがいる (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

撮影では、メインキャストたちが過酷な訓練に耐え、実際に戦闘機・F-18に乗り込み、IMAXカメラをコックピットに6台搭載して撮影を行うという前代未聞の試みがなされた。身体に激しい負担がかかるため、若手パイロット役たちは全員嘔吐を経験したというが、唯一“フェニックス”役のモニカ・バルバロだけは吐かなかったという。「モニカだけは例外で、彼女だけがほかの俳優よりも、Gを上手く対処することが出来たんです」とブラッカイマー。

G(重力負荷)を受けると汗がジュワジュワ溢れ出す

筆者は米サンディエゴにて、『トップガン マーヴェリック』キャストが行なっていたものと同じ飛行訓練に参加した。約20分の飛行で最大6Gまでを受けたが、あまりの過酷さに着陸後にダウン。1G=自分の体重と等しい負荷となるため、6Gは体重の6倍の負荷を全身に受けるということ。水を含んだスポンジを握った時にように、全身から汗がジュワっと吹き出し、非常に不快感があった。加えて、車酔いや船酔いとは比較にならない乗り物酔いの感覚に襲われ、嘔吐寸前、視界もブラックアウト状態となった。マーヴェリックは劇中で10Gに耐えていたが、これは常人では到底考えられないことである。

リドリー・スコットが監督オファーを断っていた

1作目を監督したトニー・スコットの兄であるリドリー・スコットには監督のオファーが届いていたが、これを断っている。「弟を追いかけることはしたくない」というのがその理由だ。なおリドリーは『トップガン マーヴェリック』について好意的な感想を述べることもあれば、「弟の作品がオリジナルだから」と複雑な想いを語ることもある。

アイスマン役ヴァル・キルマー再会シーンでは笑いと涙

マーヴェリックにとって、前作『トップガン』時代からのライバルであり良き理解者であるアイスマン。演じるヴァル・キルマーの再演については、トム・クルーズが絶対的にこだわったポイントだったという。「とにかくトムは、“もし僕たちが『トップガン』をもう一度作るなら、そこにはヴァルがいないとダメだ”っていう感じで、断固として希望していました」と、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは語っている。

キルマーは2015年に喉頭がんと診断され、手術のために声を失っている。本作では最先端AI技術により声をデジタル再生した。この感動の再会シーンの撮影はトムとキルマーにとって楽しいものになり、「爆笑しすぎて何度もテイクをダメにしてしまったんです。本当に楽しくて特別でした」と振り返っている。一方のトムは、感動の再会に思わず泣いてしまったことを認めている。

ジョセフ・コシンスキー監督は「僕にとって忘れられない思い出のひとつとなりました」と述懐。「この日の撮影はとにかく感動的だったんです。夏の大作映画で、これほどまでにエモーショナルなシーンを撮ることは、そうそうあることではありませんよ」。

なおキルマーは本作の公開後、劇中での再会シーンと共に「36年……、今でも僕は君のウィングマンだ」とSNSに投稿している。

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『トップガン マーヴェリック』続編が製作される (C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

さらなる続編への期待は映画公開前から語られていたが、2024年1月にはパラマウント・ピクチャーズによる製作意向が明らかに。マーヴェリック役のトム・クルーズ、ルースター役マイルズ・テラーとハングマン役のグレン・パウエルの続投が見込まれている。ただし企画はまだごく初期段階になり、いつ始動できるかは不明。クルーズは待機作をいくつか抱えており、実現はまだ少し先になると思われる。「また36年かかるかもしれない」とコシンスキー監督。