愛知工大・中村優斗投手はヤクルトから1位で単独入札され、全選手の中で最も早く交渉球団が確定。周囲で見守っていたチームメートからは大歓声が沸き起こった。

 「ドラフト1位っていうのを目標に大学4年間やってきたので、(チームメートの)歓声を聞いたと同時に、自分の頑張ってきたかいというか、達成感っていうのは少しありました」

 元々はプロ野球選手ではなく、公務員志望だった。高校野球では無名校の諫早農(長崎)に進学。しかし、そんな無名右腕の投球が1991年にロッテで首位打者を獲得した愛知工大・平井光親監督の目に留まった。何度も長崎まで足を運んでくれて「大学でプロを目指そう」と口説かれた。そして夢は公務員からプロ野球選手へ切り替わった。

 「高校の時は現実的な夢ということで公務員を志望してたんですけど、平井監督から誘っていただいて、野球をやろうっていう気持ちになったので、今はもう平井監督に感謝しかないです」

 高校時代にはやっていなかったウエートトレーニングに取り組むことで球速がぐんぐん上昇。入学時の最速145キロが、1年秋には150キロに到達した。3年春から3季連続でリーグ戦の最多奪三振をマークするまでに成長。今年3月には欧州代表との強化試合で侍ジャパンのトップチームに招集され、1回無失点で継投完全試合の一員となった。リーグ戦最終戦となった10月21日の東海学園大戦では、自己最速を1キロ更新し160キロの大台に到達するなど、成長力は底知れない。

 「このチームメイトと4年間やって、ドラフトで選ばれてみんな喜んでくれた。自分自身、頑張って良かったなと思います。プロに入ることが目標じゃなくて、プロで活躍することが目標なので、そこだけはぶらさずに、頑張っていきたい」

 愛知工大での4年間、大学野球の聖地・神宮球場でプレーすることはかなわなかった。来年からはその神宮が本拠地となる。

 「神宮球場で戦うことを目標に大学4年間やってきて、一度もできなかったんですけど、みんなの思いも背負って、自分が神宮球場で結果を残したいなと思います」

 侍ジャパンでともにプレーした関大・金丸夢斗の存在も意識している。

 「金丸が大学生のピッチャーの中で一番いいっていう認識はしてる。いつかプロの世界で金丸を追い越したいというか、金丸より活躍したいって思います」

 目標を誓い、真っすぐ前を見すえる視線は力強かった。