ジュエリーのコーディネート、いろんなジュエリーを「万遍なく」つけていませんか?(写真:iordani/PIXTA)

体型も体調も変化する中年期、新しい服を買って髪やメイクをアップデートすることも大事だけど、一番は自分と向き合って優しく触ること。

「おしゃれは時にゆっくりペースでいい」と話す気鋭のファッションエディター大草直子さんの『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』より、大人のTIPSを紹介します。

「万遍なく」つけている人が多い

目の前の人を見たときに、最初に視線をおかずにはいられない。何度も見てしまう。そんなパーツを、私はアイキャッチと呼んでいます。

注目を強くグリップし、離さない。あとでその人を思い出すときも、うっすらとしたイメージではなく、はっきりと輪郭が見える。意外とそれは、1カ所に集められたジュエリーのコーディネートだったりします。

ただし、まだまだ小さなジュエリーを「万遍なく」つけている人がほとんど。耳たぶにぴたりとつく小さな石のピアスに、45cmのささやかなネックレス。華奢な時計に、リングはせいぜい2つ。

そして、この組み合わせは、どんなスケジュールでも変わらず、まるで、毎日惰性でつける口紅のように、自分自身も何の関心も示さなくなっているのではないでしょうか? 

自分が飽きている、ということは、他人へのメッセージ性は皆無、ということ。

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もちろん「目立たず溶け込むべき」タイミングもありますが、服を着てメイクを施したあとのジュエリーコーディネートが、おしゃれに人格を注入するものだとすると、予算やアイテムを1カ所に集中させてみては?

耳元、胸元、そして手元に、手持ちのジュエリーを集めるのです。

例えば、シャンデリアのように揺れるピアスと、片耳にイヤーカフを。ブレスレットは、潔くつけない。光を放つピアスやイヤリングは、人の視線を横顔に集め、顔色を驚くほど華やかに見せてくれるので、立食のパーティや、結婚式に招待されたときなど大きな効果を発揮します。

胸元の重ね付けは、背の高い人や肩幅の広い人はぜひ、とにかくたくさんのネックレスを重ねて視線を留めます。

1つ大きなものを――でも良いのですが、それよりも、長さ、素材、デザイン違いのものをじゃらじゃらと。

1つ1つだと小さな、発言力がないネックレスが集まることによって、まるで、その人の人生をレイヤードしているような立体感が生まれます。着席のディナーなどに試してみてください。


1つ1つだと小さな、発言力がないネックレス。集まることによって、立体感が生まれる(イラスト:原 倫子)

服や体型に左右されない手元のオシャレ

そして、難しく思われがちだけど、実はものすごく簡単なのが手元。服に左右されず、体型も問わない。私は手元に、とにかくお金をかけます。バングル、ブレスレットは最低3つ。リングも、最近では大ぶりなものを4〜5つくらい。


実はものすごく簡単なのが手元。バングル、ブレスレットは最低3つ。リングも、大ぶりなものを4〜5つ(イラスト:原 倫子)

ミラノのマダムたちは、もちろんリーチ(腕)が長い、ということもありますが、 シルバー、ゴールド、プラチナなど、とにかく重ねて重ねて重ねまくる。シンプルなシャツも、「その人らしくて格好いい」と、私たちの記憶に残るのは、この思い切りがあるから。

昔旅先で買ったミサンガのようなブレスレット、初ボーナスで買ったブランドもののブレスレット、おもちゃみたいな時計、さまざまな石のリングたち。

自信を持ってぜひ重ねてください。

同じリングを同じ指にしていませんか? 

朝リングを着けるとき、どの指にしようか―― と一瞬でも考えたことがありますか?

毎日、同じリングを同じ指にしていませんか? はめる指で、そのリングの意味が変わってくるので、仕事のプレゼン、大好きな人とのデート、久しぶりの友人との食事。シーンによって、リングの種類だけでなく、着ける指を決めるのがオススメです。

なかでもなじみの薄いピンキーリング。小指に着けるリングですが、左手には、チャンスや運の入り口という意味があります。「チャンスをつかむ」「恋を引き寄せる」「願いを叶える」と、とてもパワフルな指。

風水では、気の流れは左手から入り、右手から出る、とも。右手は「自己表現力をアップする」「魅力を引き出す」など、こちらもさまざまな意味がある!

ほかの指もそれぞれ意味を持っています。

親指はサムリングと呼ばれ、古代ローマでは、願い事を叶えるために親指にリングをはめた、ともいわれています。

そうそう、左手は目標を実現させたいとき、右手はリーダーシップを発揮したいときに、とも。

人差し指に着けるリングは、その名の通り「人を導く」インデックスリング。魅力や人気運を上げ、気持ちを前向きにしたいなら左手の人差し指、仕事運を高めたいなら右手、です。

直感やインスピレーションを司る中指に着けるリングは「ミドルリング」。左手の中指は、人間関係を円滑にしたいときに、そして右手は直感力を高め、邪気を払いたいときに。

薬指は「アニバーサリーリング」。婚約指輪や結婚指輪を左手の薬指にするのは、心臓から血管がつながっている特別な指だから、といわれています。左手の薬指は、愛や絆を深めたいとき、右手は心を落ち着かせたいときに。

こんなふうに、左右、そして指1本1本に意味があるのです。

ジュエリー自体が自分の身を守る、家族の権威を示す――など、古からさまざまな意味を持っていることを考えると、知っておくだけでも良いかな、と思います。

そして朝、クリアな気持ちで、直感を冴え渡らせ、その日のリングと着ける指を「決断」する。

惰性ではない、そのことこそが、大きな意味を持つのです。

ゴールドにもさまざまな種類がある

ゴールドにはホワイト、イエロー、グリーン、ピンクなどさまざまな種類があります。なかでも、イエロー、ピンク、グリーン―― ゴールドを総称してイエローと呼ぶことにしましょう。

イエローは、身に着けると濃厚な表情で体温がグッと上がる印象。

対して、体温が低いのが、ホワイトゴールドやシルバー、プラチナなど。

ほかにもガラスやメッキなどもあるので、色が黄色系、白系で見分けると良いと思います。

イエローで揃えると、平均体温はアップし、艶っぽさやゴージャス感が増し、ホワイトで揃えると、逆に体温は下がり、クールな見かけに。

夏はイエローだけだと少し重く暑苦しい、冬のホワイトオンリーは、もしかしたら見た目にも寒すぎるかも? だとすると、平熱にするために、どんどん混ぜれば良い。

ヨーロッパを旅すると気づきますが、マダムたちのジュエリーコーディネートは本当に素敵。ミラネーゼはこっくりとゴールド多め。パリジェンヌは軽やかにシルバーメイン。それぞれの女性像が表れているようで、見ていてワクワクします。


靴やバッグの金具とジュエリーも、特に同じ色で揃える必要はありません。自由に混ぜて、テイストや温度をミックスしていけが良いのです。

例えばですが、パールのネックレスにゴールドのコインネックレス、耳元はゴールドとシルバーが両方使われたイヤカフを。

バングル、ブレスレットは、「とにかく持っているだけ全部」。ネイティブアメリカンが作るような彫りが施されたシルバーバングル、ダイヤモンドのテニスブレスレット、半貴石の数珠のようなブレスレット、そして、革ベルトのクラシックな時計。

リングも、ボリューミーなシルバーを人差し指に、ゴールド、シルバーの2連を小指。オニキスをセットしたゴールドのリングは薬指に―― 正解はないので、思いのままに。

(大草 直子 : ファッションエディター・スタイリスト)