「誰がお金を出してまで氷を買うのか?」と苦戦したが、いまや家庭の必需品…人気商品「ロックアイス」の「過去10年の販売袋数」が衝撃の数字だった!

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コンビニやスーパーで買える「ロックアイス」。一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。そして今は氷は買うものとされて、美味しいお酒やジュースのために活用されるようになりました。「ロックアイス」を手掛けるのは、KOKUBOグループです。その歴史は長く2023年に50年を迎えています。なぜそれほどのロングセラーになったのか、2024年9月17日に行われた「2024年ネタマッチ合同ヒット商品発表会」で担当者に話を聞くことができました。

氷が買える安心感

一昔前は、「氷は家で作るもの」というイメージが強く、「氷を買う」ことを考える人は少なかったかもしれません。現在アラフィフの筆者も、子どもの頃に親が氷を買っていた記憶はありません。氷は自宅の冷凍庫で製氷皿で作るものだったので、まさか氷を買う時代が来るとはという気持ちもありました。

でも、氷がコンビニやスーパーで売っていると安心感はあります。筆者の子どもが中学生・高校生の頃、部活をしていたこともあり毎日の水筒は欠かせないものでした。夏は氷を入れますが、氷の出来上がりが子どもたちが家を出る時間に間に合わないこともしばしば。また氷を作るのをうっかり忘れてしまった時の、あのなんとも言えない絶望感……。氷は数分でできるものではなく、数時間かかるもの。これは一般家庭において大きな問題でしょう。そのような時こそ、ロックアイスの出番でした。夜になってスーパーがしまってもコンビニで買える。これはとても大きなメリットで、安心感につながっていました。

ロックアイスは家で作る氷とは違う

KOKUBOグループが手がける「ロックアイス」は1973年に販売開始になっています。2023年に誕生50周年を迎えたロングセラー商品。なぜ「ロックアイス」という名前にしたのかというと、大きな氷の塊が岩のような見た目をしているから。氷の岩という意味合いで名付けられています。

ロックアイスの特徴は、なんと言っても透明度。普段何気なく使っていると気づかないかもしれませんが、氷が無色透明なのです。これは純度が高いからこそできる技。自宅で氷を作ると内側に白いものが混じってしまいます。これは空気やミネラルなどの水分子以外の成分が多いからです。このような成分が多いと内側が白くなるだけではなく、氷が溶けたときに飲み物の味に影響を与えてしまう恐れがあります。

一方「ロックアイス」は無色透明。水分子以外の成分が少ないことが理由です。ということは、一般的な氷よりも飲み物の味わいに影響を与えにくくなるのです。「ロックアイス」は水分子の純度が高く無味無臭。だからお酒やジュースに入れても味わいそのままで美味しいドリンクができます。

「エアレーション」に秘密あり

純度が高い氷を作るには、水分子以外をできるだけ取り除く必要があります。そこでKOKUBOグループが取り入れているのが「エアレーション」という製造方法。

エアレーションの仕組みを簡単に説明しましょう。アイス缶の中心にある管から空気を出し続けます。そうすることで水がかき混ぜられて、空気や水中のいろいろな成分を抱き込むことなく氷ができていきます。氷は外側から厚くなり、水中にあるさまざまな成分は凍らないまま中心に集まってきます。最後に、中心に残った水を捨てることで、純度の高い氷ができあがります。アイス缶でできた氷は、中央がポッカリとあいている形になっていて、それを細かくして、ロックアイスと販売していきます。

ロックアイス、過去10年でどのくらい売れた?

ロックアイスは1973年に販売開始になっていますが、実はそれ以前から「かりわり氷」として販売されていました。もともとKOKUBOグループの前身は、石油プラントでしたが1947年に製氷業へと業種を変えています。でも当時は高度経済成長の真っ只中。自宅にも電気冷蔵庫が普及してきたので、氷は全く売れません。また袋に入れて販売しようとしても、肝心の袋が破れてしまうなど、苦戦の時期が続いていました。氷を販売するお店からも、誰がお金を出してまで氷を買うのか?

と言われてしまうくらいでしたから、当時は非常に難しい局面だったことでしょう。でもそんなKOKUBOグループにも転機がやってきます。1974年から、コンビニでの取り扱いが始まったのです。コンビニで気軽に氷が買えるようになったり生活環境の変化などがあったりして、「ロックアイス」の認知度が上がり市場も拡大していきました。

そして過去10年で見ると、8540万袋の販売実績をもつ商品になったのです。

コンビニがきっかけに。「ロックアイスグラス」も人気商品に

KOKUBOグループでは、「ロックアイス」だけではなく「ロックアイスグラス」も販売しています。これはカップに入った氷で、KOKUBOでは2002年から商品開発を進めていました。でも、カップに入った状態の氷の需要は少なく、終売の危機にさらされることになります。そのような時に救ったのが、「ロックアイス」バカ売れのきっかけを作ったコンビニでした。

2013年からコンビニコーヒー用のグラス氷が大ヒットして、グラス商品の認知度も上がっていきました。そして現在ではSNSを中心に自宅で簡単にできる「カスタムドリンク」として話題になることも。

写真はオレンジジュースと飲むヨーグルトをベースにしたドリンク、グミと冷凍ベリー、サイダーを組みわせたドリンクです。バニラアイス、果物などを入れるとさらに美味しくなります。他にも炭酸飲料など、色のついたドリンクを使うことでSNSバエが狙えそう。

飲むだけではない使い方の提案

飲み物に使う氷という立ち位置だった「ロックアイス」ですが、新しい提案も始まっています。それが「スポーツアイシング」です。怪我の応急処置に必要なアイシングと、コンディショニングや暑さ対策に必要なクーリングの2つがあり、どちらにも「ロックアイス」が使えます。

例えば屋外でスポーツをしていて怪我をしてしまった場合、コンビニにいって「ロックアイス」を買ってくれば、すぐにアイシングができます。またスポーツ観戦をしているときでも、熱中症対策としてコンビニやスーパーで「ロックアイス」を買えばOK。もちろん「ロックアイスグラス」で冷たいドリンクを作ったりもできます。

「飲み物の相棒として使うロックアイス」から、暑さ対策やアイシングといった別の使い道を提案することで、「ロックアイス」はさらに認知度をあげ、企業としての成長も期待ができるのではないかと感じます。

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